夕食の時間、ろうそくの薄明りの中、
団員全員が集まっていた。

しかし団長の姿はなかった。

ジョセフが首をかしげながら尋ねた

団長はどこに?

マリーナ

さあ、公演が中止になったから
青ざめてVIP客のところに行ったのでは?

VIP客?

マリーナ

ええ、私達より大切みたいね

そう言いながら料理を運んでくる
鉄仮面の猫カオリを睨んでいた。

マリーナ

ところで、犯猫はわかったのかしら?猫殺犯と一緒にいると思うとゾッとするわ

ロイズ

犯猫が分かったらここにはいないだろう

マリーナ

確かボウガンを使ったとか?

フェリックス

確かに犯猫はボウガンをトリックに使用しました。

マリーナはロイズを見つめた。
ロイズは困惑した表情で言った。

ロイズ

だからボクじゃないってば!

フェリックス

皆さんにお伺いしたいのですが
例えば、犯猫はボウガンでロープを狙ったとします
反対側の壁にはナイフの傷がありました

フェリックス

そして劇場は円形で、その周囲は約100メートルです。
あの小さいボウガンでそんなに
遠くまで届くのでしょうか?

団員たちは静まり返り、
フェリックスの言葉に耳を傾けた。

フェリックス

もしボウガンがどこかに隠されて発射したとしたら、その距離はさらに伸びます。

撃つとしたら、2階の端まで行って撃つ方法が考えられますが、

そんな目立つ場所に設置したらすぐに見つかってしまいます。

マリーナ

つまり、何が言いたいの?

ロイズ

犯行に使ったのはボウガンではないということだろ

フェリックス

はい、それを明日証明したいので、みなさんにご協力をお願いします。

マリーナ

そうゆうことなら協力するわ

ロイズ

それでボクの
無実が証明できるなら

エマ

もちろんです

ゲン

ああ、かまわないさ。

カオリはただ静かに頷くだけだった。

...

フェリックス

では、明日の朝に。

フェリックスが言い、夕食は静かに終わった。

その夜、外ではワトリーとポテト、
ゲンは庭で楽しそうに花火をしていた。

ゲンが手持ち花火を持ちながら、
ワトリーに教える。

ゲン

これは手持ちの花火だ。こうして!

彼は手で円を描きながら走り回った。

ワトリーは目を輝かせて叫んだ。

わーい、きれいなのだ!

わぁ!!
ボクも手持ち花火やりたい




ポテトは花火を持ってはしゃいでいたが、
突然何かにぶつかった。



彼が振り返ると、闇の中に浮かぶ
鉄仮面の猫が立っていた。カオリだ。

わぁ!びっくりした!

ゲン

カオリも花火やるか?

...

一緒にやるのだ。

こうして四匹は庭で花火を楽しみ始めた。
カオリは初めての花火に少し緊張していたが、

次第に楽しそうに走っていた。
花火の光が彼らの顔を鮮やかに照らし、

夜に咲く火花と共に友情が深まっていった。

一方、ジョセフはロイズにメス猫の口説き方を
伝授してもらっていた。

ロイズ

まず、相手の話をよく聞くことだ。それが一番大事だよ

ロイズ

相手の趣味、嗜好に共感すること、趣味の話だと盛り上がるからね。あくまでも相手側だよ、自分の話はしなくていい。

なるほど、話を聞いて趣味、嗜好を聞き出すんだな

ロイズ

そしてさりげない優しさが大切だ

さりげない優しさ...
フッ...俺の得意な分野だ

その夜、各自がそれぞれの思いを胸に、
翌日の計画に備えていた。

明日が新たな展開を迎えることを、
誰もが感じていた。

その夜、ワトリーは夜中にふと目が覚めた。
隣のベッドを見ると、

フェリックスがいない。
劇場を見張りに行ったのだろうと思いながら、

ワトリーも外に出ることにした。

リビングに差し掛かると、ろうそくの
明かりがついているのが見え

中を覗くと、カオリが絵本を見ていた。
ワトリーはそっと近づいて声をかける。

こんな遅くに本を読んでいるのか?

...

カオリは無言で本の絵を指さした。
ワトリーがその指を追って見てみると、

これはねずみなのだ

カオリはさらに別の絵を指さす。

これはチーズなのだ

ワトリーが教えると、カオリは静かに頷いた。

エマからカオリがあまり言葉を
話せないと聞いていたワトリーは、

優しくその絵本を読み始めた。
カオリは隣で真剣に話を聞いていた。

カオリ、話せなくてもジェスチャーでコミュニケーションがとれるのだ。

例えば、うれしい時は、両手を大きく上げるのだ

ワトリーが示すと、カオリは両手を上げた。

ありがとうの時は、胸に手をあてて軽くおじぎするのだ

カオリが真似をすると、

ワトリーは微笑んだ

大丈夫のときは、親指を上げて、グッド!

カオリが親指を上げて見せると、
ワトリーは嬉しそうに言った。

そうそう、上手なのだ、これからもっといっぱい教えるのだ。カオリとボクは友達なのだ。

カオリは胸に手をあてて軽くおじぎをした

...

他の絵本も読んであげるのだ

夜が更けていく中、二匹は新たな
友情を育んでいった。
ろうそくの明かりに照らされたリビングで、

絵本を読むワトリーとそれを真剣に聞くカオリ。彼らの間に流れる静かな時間は、
確かな絆を築いていった。

つづく

11話 ボウガンの謎と新たな友情

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