そのころフェリックスは劇場の2階席にいた。
2階にはトイレ、音響の部屋、

そしていくつかの照明器具が配置されている。
ふと壁を確認すると、

不自然な傷跡を発見した。まるで何か鋭利なもの
で刺したような痕跡だ。

「この傷は一体何だろう?」
フェリックスは首をかしげた。





その後、リハーサル中にロイズが使用した
トイレを調査することにした。

特に変わった様子はないが、
一番奥の清掃用具入れを開けると、







そこには布に隠されたボウガンが置いてあった。




フェリックス

これでロープを狙って切り落としたのか?

ちょうどその時、トイレにゲンが入ってきた

ゲン

何かあったのか?

フェリックス

はい、ここにボウガンが隠されていました

ゲン

何?ボウガンだと?

フェリックス

サーカスで使用する物ですか?

ゲン

そうだ、このボウガンはロイズが使用するものだ。まさか本当にロイズが...

フェリックス

しかし、セリアさんが転落した時は、ロイズは1階にいました。
どのように狙ったのでしょうか?

ゲン

それは...わからない。

フェリックス

このボウガンはロイズ以外は使えないんでしょうか?

ゲン

いや...
他の団員も使えるはずだ。

フェリックスはボウガンを手に取り、
細かい部分まで注意深く見つめた。

その時、あることに気づいた。

ボウガンには微細な傷と、
ベタベタした液体がついていた

それが何かを示しているように見えた。

フェリックスは再び傷のあった壁の前に立つ。
その傷の形状と位置から

何か重要な手がかりが隠されているに
違いないと感じていた。

フェリックス

この傷…

ゲン

その傷はなんだ?

彼は傷の対角線を目で追い、
その延長線上に目線を移す。
あそこから、ロープを狙うことが
できるかもしれない

フェリックス

ボウガンであそこからロープを狙ったのか?

フェリックスは鋭い目つきで
さらに壁の傷を観察していた。

その傷は一見ボウガンの矢でで
きたものに見えたが、何かがおかしい。

フェリックス

これはボウガンの矢でできたものではなく、ナイフでできた傷ですね。

ゲン

どういうことだ?

フェリックス

おそらく、誰かがボウガンを改造してナイフを撃てるようにしたのかもしれません

ゲン

それでロープを切ったんだな。

フェリックス

状況から
判断するとそうなります。

ゲン

しかし、みんなにはアリバイがあるぞ

フェリックスは一瞬の沈黙の後、
鋭い眼差しで言葉を続けた。

フェリックス

いいえ、アリバイのない猫がいます。この劇場内にいて、誰にも見られていない猫が

フェリックス

それは...

フェリックス

それは、あなたと、エマさんです

ゲン

ま、まさか俺が疑われているのか?

フェリックス

これはただの可能性です。まだ確証はありません

フェリックスはボウガンを指差し、

フェリックス

この矢を引っ張るところ、何かべたべたした液体のようなものがついています

ゲン

それは何だ?

フェリックス

まだわかりませんが、これが引き金の役割をして、
時間差でナイフが撃てる仕組みになっていたかもしれません

ゲン

ということは…

フェリックス

犯人は罠を仕掛け、あたかも自分にはアリバイがあるように装うことができたのです。

ゲン

つまり、まだここにいた全員が疑わしいということか...

フェリックス

はい

ゲン

なんだよ、俺を疑ってるなんて、脅かすなよ!

フェリックス

すみません

真実はまだ霧の中に隠れていたが、
フェリックスはその霧を晴らすための
新たな手がかりを掴んだのだった。

その時、ジョセフが2階に上がってきた
ジョセフは、少し緊張した様子で
フェリックスの元に近づいた。

フェリックスは彼に向かって
ボウガンを差し出し、

フェリックス

これでロープを狙ったと思われますが、このボウガンを鑑識に出してもらえませんか?

あ、あぁ...

ジョセフの反応に何かを感じ取った
フェリックスは、
疑いの目で彼を見つめた。

フェリックス

何か団長に言われましたね?

何を言っているんだ、何も取引などしていないぞ!

フェリックス

何と取引したのですか?

な、何もないって!!

ジョセフはしぶしぶボウガンを手に取った。
その様子は明らかに怪しげで、
フェリックスの疑念をさらに深めるものだった。

フェリックス

私はもう少し調べたいのでこれで失礼します。

と言い、その場を後にした。

しかし、去り際に振り返り

フェリックス

これは猫殺事件です。
猫の命が奪われているということを忘れないでください

ジョセフはその言葉に動揺しながら言った

わ、わかってる!!

その声には確信が欠けていた。

つづく

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