夕暮れ時、街の片隅で、小さな火事が発生した現場にワトリーは足を運んでいた。すでに炎は収束し、その場を取り囲むように警察の黄色いテープが張り巡らされている。その一角で、
警察官のジョセフが何やらメモを取りながら現場を調べていた。

ワトリー

こんにちは、ジョセフ

なんだ、ワトリーか。何か用か?

ワトリー

火事について調べにきたのだ。

ラッキー

ジョセフは仕事をなるべくしたくないため、
ワトリーに調査を託すことにした。

そうか、お前がどうしてもと言うなら仕方ない、じゃあよろしく頼む

去ろうとするジョセフに声をかける

ワトリー

待つのだ、情報を教えるのだ

ん?
ああそうか

ここ最近で火事騒ぎがあったのは2件だ。

1件目は駐車場、
2件目は住宅街のゴミ置き場
放火とみていいだろう

ワトリー

同じ猫の犯行なのだ。

間違いないな、
土地勘もあるやつだな。

火事の現場に立ったワトリーの鼻を突くのは、
燃えるものの残骸から立ち上る煙と
何かを示唆するような特異な香りだった

ワトリー

クンクン、何の匂いなのだ

ああ、
ガソリンかな?それともオイルとか何か

ワトリーは、さらに鼻を鳴らしながら、
何かを感じ取ろうとしていた

ワトリー

もう一つなにか変な匂いがするのだ

変なにおい?そういえば、ここら辺の住人も火事が起こる前に変なにおいがしたと言ってたな

二匹は、見通しが悪い一軒家のゴミ置き場を注意深く調べた。火事騒ぎが起きる前に変な匂いがしたという住人の証言。
しかし、ワトリーは首を横に振った。

ワトリー

でもこの匂いがきつくてわからないのだ

ワトリー

なんで放火なんてするのだ?

さあ、よく聞く話じゃ、ストレス発散に火をつけて、その火を見ると興奮するとかなんとか。オレにはわからないね。

ワトリーとジョセフが焼け跡を慎重に調査していると、背後から突然の叫び声が響いた。声の主は一匹の老メス猫で、不安と確信が混ざり合った
表情をしていた。

これは呪いだ!

びっくりしたのだ

顔こわ

あーおばさん、調査の邪魔しないでくれよ。

ワトリー

呪いって何のことなのだ?

この土地を売ったら私達も出ていかなきゃけない!

そうしたらあの屋敷も壊される!

あの屋敷は呪われている。手を出してはいけないんだ!

ワトリー

屋敷の幽霊と関係があるのか?

なに!
おまえ、幽霊を見たのか?

ワトリー

はっきり見たのだ

やはりそうか。この辺りの土地を売ろうとしている猫たちが呪われているようだな。

そう言うと、彼女は急いでその場を去った。

ワトリー

そういえば不動産屋さんも、あの屋敷は売りに出されているって言っていたのだ

ああ、この辺り一帯は開発話が
出ていたんだ。でも、住民の反対があって、今は一時休止状態になっているはずだ

ワトリー

火事のあった近くの家に聞き込みするのだ

ん?

オレは忙しいから...

ワトリーは直ぐ近くの家へ走りだす

ワトリー

こんにちは、警察のジョセフと
探偵のワトリーなのだ

聞いてない

はい、何の用ですか?

ワトリー

火事について調べてるのだ

はい、それなら…。ごみ置き場で起きた火事でしたから、私たちもほっとしています。もし発見が遅れていたら、私たちの家まで火が及んでいたかもしれませんから

ここの家の土地を売るという話を聞いたが

家も古くなったし、売ってもいいかなって思っているのよ

だけど他の住人が反対運動始めたからもう諦めていたの

ワトリー

火事は呪いだと言っていたけど

バカバカしい。誰かの嫌がらせに決まっているわ。それより犯人を早く捕まえてちょうだい!

お、おう

次に、ワトリーたちはもう一軒、駐車場を管理している家を訪れた。しかし、その家の回答も前の家と変わらず、ここの駐車場は開発会社が使用するために借していた場所だったという。
おばさんが言った通り、2件の住民は
開発計画に関しては肯定的であったが
呪いの話は信じていない様子だった。

ワトリー

またこの近くで火事があるかもしれないから見回りするのだ。

おお、頑張れよ。何か怪しい者が現れたらすぐに知らせろ

ジョセフが去ろうとしたその時、
ワトリーが声をかけた

ワトリー

ジョセフ、
ちょっと付き合うのだ。

ワトリーはジョセフを屋敷に
連れていくことにした。

つづく

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