天井の暗がりから、フェリックスは音もなく降り立った。目的地は、煙草の煙が壁を黄ばませた
喫煙所だ。薄暗い光の下で、
置いてあるライターと床に散らばった
たばこの吸い殻をひとつ拾い上げた。
天井の暗がりから、フェリックスは音もなく降り立った。目的地は、煙草の煙が壁を黄ばませた
喫煙所だ。薄暗い光の下で、
置いてあるライターと床に散らばった
たばこの吸い殻をひとつ拾い上げた。
次に研究所の奥に隠れる小さな休憩所。そこで
フェリックスは、ガスの元栓をそっと抜き取ると
シューという音をたてガスが
出てくるのがわかった
フェリックスが休憩所から廊下へ出ると、
監視カメラにその姿が映る
いたぞ!事務室に走っていった
人間の声が響く。彼らは、
フェリックスの跡を追い始めた。
フェリックスは探し出される前に、近くの部屋へと身を隠した。しかし、そこも安全ではない。人間たちの足音が迫る中、フェリックスは息を切らしながら机の上に飛び乗った
その部屋には、古い写真が何枚も飾られていた。その中の一枚に、子猫を抱える人間がいた。
あれは...
優しそうな女性の手に包まれていたアレクと、
幸せそうな美しい女性。
女性の横には表彰が映されていた
「動物の保護活動への顕著な貢献により、
数多くの生命が救済されました。
この貴重な功績に対し、深く感謝の意を表し、
ここに表彰いたします。」
しかしフェリックスには人間の
文字は読めなかった
おいこっちにいたぞ!
もう逃げられないぞ
フェリックスを取り囲む人間達は
持ってきた網で捕まえようとする
「ガスが漏れています」
「ガスが漏れています」
警報音と共にガス漏れを伝える自動音声が響く
なんだ?!ガス漏れ?
人間の一瞬の隙をついて、
フェリックスは疾風のように逃げ出した。
あ!!また逃げた
「ガスが漏れています」
「ガスが漏れています」
くそっ...こんな時に!
元栓を確認しろ
警報音が響く中、息を切らして休憩所へと走ってくる研究員。目的地の前、休憩所の入り口には、フェリックスが佇んでいた
あの猫だ!!
研究員は興奮を隠せずにフェリックスに
向かおうとした
待て!何かくわえてるぞ
その信じられない光景に
全員が息を呑んだ。
おい...嘘だろ...
止めろ危ない!!!
その警告も虚しく、フェリックスは何事にも動じることなく、火のついたタバコを休憩所の方へ投げ捨てた。
爆発が起きた。強い衝撃にフェリックスと
人間は吹き飛ばされてしまった
フェリックスは体を打ち付けるものの、なんとか配電盤まで行き、そのカバーを開ける。実験室から持ってきたアルコールを配電盤にぶちまけ、
ライターで火をつけた。
すると火事騒ぎで混乱が広がり、
一切の照明が消えた
その混乱はアイリがいる部屋にも届いた。
照明が消えると
これが合図ね
アイリは猫たちの檻の鍵を全て開けた。そして、鉄格子の窓から猫たちを脱出させる。フェリックスは知っていた。猫が人間より優れている能力は、暗闇でもその道が見えることだった。
薄暗い月明かりの下、逃げる猫たちの姿がほのかに見える。彼らは自由を目指してそれぞれの道を懸命に駆け抜ける。フェリックスの作戦は成功した。猫たちはこの研究所の束縛から逃れ、
新たな始まりへと踏み出していた。
つづく