実験室と化したその部屋に、アイリとフェリックスは天井裏の影から静かに降り立った。
冷え切った空気が肉球を突き刺す。
床に散らばる薄暗い光の中で、
ガラスケースに閉じ込められた猫たちが
目に映った。彼らはぐったりと力なく横たわり、フェリックスの胸はそれを
見るたびに心が痛んでいた

フェリックスは消毒に使う
アルコールを見つけ手にいれた

ケースの一つ一つを確認しながら、
ミミちゃんを探し続ける。

そして、一番奥のケースに
その小さな姿を見つけた

フェリックス

ミミちゃん、大丈夫ですか?

返事はない

アイリ

ガラスケースの上の蓋が開けられるわ。

力を合わせて蓋を持ち上げるが、
その重さに二匹は必死だった。しかし、
その蓋は予想を裏切り、床に落ちてしまった

フェリックス

しまった! 人間に気づかれてしまう。

フェリックスは慌ててミミちゃんを抱きかかえ、
再び天井裏へと逃げ込んだ。

廊下で足音が聞こえた。
ドアが開く音と共に人間の声が室内に響き渡る。

何の音だ?

おい!見ろ蓋が開いているぞ

そんなバカな、中から重い蓋を開けたっていうのか?

探せ、実験中の猫は貴重品だ。

天井裏に隠れたアイリとフェリックスは、息を潜めながら下の人間たちの様子を伺った。彼らの緊迫した声が、天井裏の闇にこもる。ミミちゃんはまだ意識がない。フェリックスにとって、
これはただの脱出ではなく、
仲間を救うための戦いだった。

フェリックス

アイリさん、ミミちゃんをもとのいた部屋まで運びましょう。他の猫たちに紛れておけば、しばらくは見つからないでしょう。

アイリ

わかった

アイリ

その後どうするの?

フェリックス

私に考えがあります。もし何らかの合図があれば、直ちに逃げてください。他の猫たちの檻の鍵も開けておいてください。

アイリ

わかった

二匹はミミちゃんを連れて静かに部屋に戻った。そこでミミちゃんを他の猫たちの中に隠し、
フェリックスは部屋を後にした。

アイリ

気をつけて

フェリックス

はい。ミミちゃんを頼みます

建物内では人間がミミちゃんを探し回っている。彼らの足音と声が響いていた。フェリックスは
もう一度天井裏へと身を隠した。排気ダクトを
通り、ある場所を目指していた。

つづく

68話 ミミちゃんを探して

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