ジョセフの声は震えていた。瞳には、
恐怖が宿っている。暗がりの中で、
ヴィクターという名の影に対する恐れが、
彼の言葉に色を添えていた。

ジョセフ

ま、待て、ヴィクターに俺を売るつもりか?

フェリックスは冷静さを保ちながら、ジョセフを見つめ返した。彼の声は落ち着いていて、
それでいて鋭い刃のようにジョセフの心を切り裂くものだった

フェリックス

さあ、その品物がヴィクターの物でないことを祈るのですね。

ジョセフ

わかった、お前にいい情報をやる。だから見逃してくれ

フェリックス

情報?

ジョセフ

ああ、確かお前はミミちゃんとかいう猫を探していたな。その情報だよ

ジョセフは必死になっていたが、
フェリックスは動じなかった。

フェリックス

では認めるんですね。泥棒から
横取りした品物だという事を。

ジョセフは一瞬、戸惑いを見せたが、
やがて小さく頷いた。

ジョセフ

認めるから見逃してくれ...

しかし、フェリックスは頑として
首を横に振った。

フェリックス

いいえ、私はこのような取引には応じません。

ジョセフ

いいのか
俺の情報が欲しくないのか?

ジョセフは焦りを隠せない。

フェリックス

あなたの情報など、
必要ありません。

ジョセフ

なんだと!

フェリックス

今必要なのはこの宝石が管理局から盗まれたという事実

フェリックス

あなたは泥棒からこの宝石類を横取りして売っていた。

フェリックス

その得たお金に心奪われ、泥棒と結託して盗みを働かせていたのでは?

フェリックス

でも今その泥棒は牢屋にいる。
なぜか?

フェリックス

何かしらの事情で盗みができなくなった泥棒は口封じのために牢屋に入れられているようですね

ジョセフ

な、な、にぃ...

フェリックス

どうやら図星のようだ

ジョセフ

なんでそんなこと知っている?

フェリックス

その泥棒に話を聞けばわかります。泥棒の話が出た時にすでに
ワトリーが警察署に向かって今頃話を聞いているでしょう

フェリックス

裏切られた泥棒は全部話してくれるはずです。

ジョセフは愕然としてソファに座り込んだ。
あの横柄なジョセフが、
ヴィクターに怖がっているとは

ジョセフ

...そんな

フェリックス

ルビー行きましょう

ルビー

ええ

二匹は個室を後にした。ジョセフの後悔の声が
背後で響く中、フェリックスは次なる真実へと
足を進めていった。

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