誰にも助けらることもなく愛する彼氏兼担当の退店の日がしっかり決まり、退店まであとわずかと言う日に事件は起こりました。

担当

またしても

みぃ

だから掛けはよくないよって言ったのに

担当

みぃちゃーん

みぃ

ムーリー!!

みぃ

みぃだってラス日行きたいもん!

担当

でもぉ

みぃ

ラストは一緒にお席にいるの!

担当

また辞めれなくなるぅ

みぃ

…うわああああんん!

またもや、例の掛飛姫が20万円の掛け漏れをしたのです。
20万なので一日最低価格のシャンパン入れちゃったかな?て言う金額ですね。
ホストに関しては、キャバクラさんと違って、会社名義で飲めるわけでもなければ、領収書が落ちるわけでもない厳しいシステムです。
掛けにしたくなる気持ちもわかります。
でも。。。

みぃ

払えないなら飲むなよ…

と当たり前の気持ちが沸々を沸きつつも、星野は泣く泣くラストの日は自分のお店に出勤していました。

てんちょ

あれ?みぃちゃん今日締め日だよ?

みぃ

知ってるよ

てんちょ

日払い出そうか?

みぃ

日払いで今から行ったとして火力が足りないですもん

てんちょ

火力…

みぃ

はぁ

てんちょ

みぃちゃん今日接客に身が入ってないねぇ

みぃ

だって流石に気になるくないですか?

てんちょ

でもこっちきてえらいねぇ

みぃ

姫が一人飛んだらしいです

てんちょ

おっと、入金日いつだっけ?

みぃ

4日です

てんちょ

4日までにあといくら?

みぃ

自分の含めて30万です

てんちょ

大変だねぇ前借りする?

みぃ

前借りすると私がお店飛ぶ時に追われるんで嫌です

てんちょ

飛ぶ前提で話すの強すぎ

みぃ

歌舞伎に片足入れてるとそうなるんです

そんな話を店長としていました。
星野はその日、無事3日の日までになんとかなる稼ぎを作りました。

ラストの日。
行きたかった。
とっても行きたかった。
でも、いけなかったののだから、担当のケアをしてあげたい。
そう思って、帰りにポカリスエット2リットル、ポン酢、お味噌汁、小さいインスタントラーメンを買って帰りました。
時間的には2時くらい。
きっとお店から

担当、あ、ちがーう♡か・れ・ぴ・きゃっ!
が帰ってくるのはずぅ!
うふふー!

なんて思っていたら、早11時。

みぃ

あれ?

GPSもインスタのストーリーも4時の行きつけのバーで止まっています。
そして、同業のホストさんたちのインスタのストーリーもその日の4時前後で止まっています。
一人のストーリーに合唱曲を熱唱している担当が写っていたのできっとここで潰れたのでしょう。
きっと有終の美を飾ったのでしょう。

しかしです。
ここまで本当に長かった。
期間にして大体1年半。
こいつ最後の最後まで連絡が途絶えている。
この人、ほんとに連絡するとかそんななんか当たり前の機能が欠如してて、酒で吐き戻したのかな?
そんな気持ちが頭をあげていた時でした。

みぃ

あ、そういえば、今日漫画の更新日だ

当時星野はオムニバス形式のレンカノやらパパ活やらホストやら配信者やらの恋愛模様を描いた漫画をハマって読んでいました。
担当に一人の時に読むことを禁止されているメンタルヘラヘラ製造機です。
なんでそんなメンタルヘラることしたのか、正直自分でもわかりません。
更新日だったから何の気なしに読みました。
そして。
ヘラりました。

みぃ

…そもそもあいつ、帰ってくるのか?

そんな疑心暗鬼にかかってしまったのです。

少し前にも書きましたが、このエッセイを書いている今現在ですらも、私は”彼の人生をお金で買った”とどこかでに認識しています。

違うとは思っていても、スタートがお客様とホスト。
どう足掻いても一生そう思っていくと思います。
そんな気持ちが、このヘラったメンタルに突き刺さりました。
危ない均衡を保っていたパワーバランスがここで確実に狂ました。

”捨てられる”
”一人ぼっちになる”
”いなくなっちゃう”

そんな気持ちがこの頃から徐々に膨れ上がっていました。
絶対にそんなことは嫌だ。
一緒にいたいもん。
それが執着なのか、愛情なのか今だにわかりません。
彼と出会って、初めて真っ黒い感情に晒されました

担当

タクシーで帰っていい?

突然携帯がなって、出ると担当でした。

みぃ

いいよ

担当

今日、すっごい嬉しいことあってねー、お家帰ったらお花飾ってー

みぃ

うん

担当

あれー?元気ない?寂しかった?

みぃ

ううん。お仕事、お疲れ様でした

担当

ありがとう

みぃ

ポカリと買ってるから帰っておいで

担当

うん。みぃの家帰るから待っとけーい

そういって彼は当たり前のように帰ってきました。
星野の家に帰ってくるのが当たり前のように帰ってきました。
それが星野にとって本当に嬉しいことだったのです。
こうして、退店日を迎えたのですが、心の中で吹き出した黒い気持ちはこの後も尾を引いていくのでした。

さて、一体何がそんなに嬉しかったのというと、同業者が5卓もきてくださったみたいで、彼のこの数年間の努力が実を結んでいたのだなと、そして、サプライズでお店から花束をもらった(なかなか聞いたことない)でした。
家に花瓶なんておしゃれなものはなかったので、歴代のイベントオリシャンを5本くらい使ってさして飾りました。
オリシャンに写真が載ってるせいで、何かの儀式みたいになったのはここだけの話です。

14話 担当、やっとホストを辞める

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