警察事件から数ヶ月後、ピッピは突然言いました。

担当

みぃちゃん

みぃ

なんでしょうか

担当

みぃちゃん今借金いくらくらいある?

みぃ

…税金払ってないのと専門学校行った時のローン分で大体200万円くらい

担当

そっか

みぃ

毎月ちびちび払ってるよ?

担当

店の売掛って

みぃ

大体60残ってるけど、今度の給料日に払えるよ

担当

そっか

真剣な顔のピッピはあまり見ないのでなんだろうと思いました。

担当

みぃちゃんは、よくホストの僕が好きっていうじゃないですか

みぃ

はい

担当

ホストやめて陸じゃなくなっても好きでいてくれたりするの?

みぃ

…善処する

担当

そっか

みぃ

ホストやめるの?

担当

1年前くらいからやめていっていってあって

みぃ

うん

担当

俺もいい歳だし、ちょうど30だし、やめようかなってずっと思ってるんだよね

みぃ

でもやめたらあなた、お酒代とかタバコ代とかどうするの?

担当

それは、普通に働きながらかな

みぃ

そっかぁ…

神妙に語り、星野に借金の有無を聞いてきた時点で、ああ、こいつはホストをやめても寄生するつもりではあるんだろうなと、バグった価値観の中で考えていました。
ホストでなくなったらぴに、いったいどれほぼの価値があるのだろうか。
ぴもその点を心配していました。
星野も基本的には”ホストであるぴ”という人間に価値を見出していたので、正直この場で、

みぃ

どんなぴでも大丈夫だよ

とは言えませんでしたし、何よりも、ぴはなんだかんだ言って実家に帰るのだと思っていました。
最終的に姫って捨てられるのが筋よね。と思っていました。

みぃ

ま、どっちにしてもぴが決めたことならいいよ

担当

ホストじゃなくなってもいいの?

みぃ

それはだって私が決められることじゃないし、じゃあ、私がキャバやめてソープとか行くって言ったら止めるの?

担当

いや、それは、俺が決めることじゃないし、みぃちゃんがやるって決めたら応援するし

みぃ

それと一緒だよ

担当

そっかぁ

そんな会話をして少し経った日のことでした。

ヘルプ

みぃちゃん、おはようー!

みぃ

おはおは

ヘルプ

え、ねぇ、ほんとにあいつ辞めんの?

みぃ

あ、もう話したんだ

ヘルプ

だいぶ前から話は出てたみたいでさ

みぃ

ふーん

ヘルプ

そしたらみぃちゃんと会えなくなるねぇ

みぃ

それはそう

ヘルプ

あいつ以外指名しないでしょ、君は

みぃ

そうだねぇ

ヘルプ

みぃちゃん頑張り屋さんだから指名変えてほしかったわぁ

みぃ

それはないねぇ

ヘルプ

みぃちゃん大好きやもんな

みぃ

ん?

ヘルプ

あいつのこと

みぃ

それはそう

こんな会話を全てのヘルプからされました。
要約すると、ぴがやめたら俺に指名変えてねっていう営業です。
ああ、ほんとにうやめてしまうんだね。
そんな寂しい気持ちが沸々と湧いてきました。
私にはわかりませんが、ホストがお店をやめて実社会へ戻っていくことってどれだけ怖いだろうかと思っていました。
ずっと上下関係は厳しく実力のみに黙らせてきた社会から、普通の枠組みへと戻っていくのです。
みんながソワソワ退店の話をするのは、ホストは女の子と違ってダブルワークの人がするないからなのかななんて思っていました。

担当

何話してたの?

みぃ

んーん

担当

なになに?

みぃ

みぃずっと考えてたんだけど

担当

うん?何を?

みぃ

人生の目標

担当

おお、壮大なこと考えてたんだ

みぃ

陸とずっと一緒にいたいなぁって

その時、ぴがなんとも嬉しそうに笑っていたことを今でも印象的に覚えています。

11話 担当、辞めることを決める

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