ソウスケ

……今から俺が言うことは、ただの仮説……

ソウスケ

いや、この状況に混乱して出てきた妄言と思って聞き流してくれ

セナ

は、はあ……?

ソウスケ

最初、俺はこの場所に集められた者は全員"死んでいる"と思っていた

セナ

…………

セナ

えぇ!?ど、どうしてそんなことを……いや、え、どういうことですか!?

ソウスケ

落ち着いてくれ。まずは、俺の妄言を聞いてほしい

ソウスケ

自分でもよく分からなくなったんだ。誰かに話して整理したかった……その相手がセナなだけなんだ

ソウスケ

真剣に聞かなくて良い、話だけさせてくれ

セナ

う……分かりました

ソウスケ

ありがとう

ソウスケ

続けるぞ、俺がそう思った理由は……

レイ

空腹とか眠気とか、人間であれば誰でも感じるもの……それらが、一切感じられないんですよ~

ソウスケ

"生きている"人間が持っている三大欲求のようなものが、俺にはないからだ

セナ

三大欲求……食欲、性欲、睡眠欲のことですね

ソウスケ

だから、俺は食事を必要としないし、睡眠もいらない

ソウスケ

生きていれば、それらは"生きる上で必要な行為"であるのに……な

ソウスケ

俺だけじゃない、レイも俺と同じだった。
だから、全員がそうだと思っていた……思い込んでいた

ソウスケ

だが、今日のこのピクニック中に違和感があったんだ

カズマ

あ……その、すみません。さっきクッキーをいただいたばかりなのに

レイ

ふふ。それじゃあ目的地に着きましたし~、お昼ご飯を食べましょうか~

ユヅキ

賛成、オレもちょうどお腹が空いてきた

セナ

実は、私も……

セナ

いっぱい作ってきたので、皆さん遠慮なくお食べくださいね

ソウスケ

カズマ、ユヅキ、セナは空腹を訴えていた

ソウスケ

カズマは腹が鳴った……身体が活動している証拠だ。俺は一度も、腹が鳴ったことがない

ソウスケ

セナは空腹を訴えた上に、弁当を用意していた。つまり、「他者が自身と同じように空腹を感じる存在」と認識している

ソウスケ

ユヅキは……まぁ正直、分からない。空腹を言葉で訴えるだけなら、俺もレイも可能だからな

セナ

……ソウスケさんもレイさんも、お弁当を食べていました。食事という行為自体も可能、ということでしょうか

セナ

それじゃあ、食事の時に言っていた「美味しい」は……周りに合わせた言葉、思ってもいない言葉だったんですね

ソウスケ

シュウヤ、アサヒも不明だが……少なくとも、"生存者"と"死亡者"がこの場に同時に存在していることは確かだろう

ソウスケ

……セナ、情報共有をしよう

セナ

え?

ソウスケ

俺は今、記憶の欠片を三つ手に入れている。それら全ての情報を、お前に教える

セナ

……「だから、お前も俺に記憶の欠片の情報を教えろ」、ということですか?

ソウスケ

ああ。記憶の欠片がこの謎……この場所を脱出するための、唯一の手がかりと思っている

ソウスケ

だが、俺一人の記憶の欠片では、考えるにも限度がある。だから……

ソウスケ

セナ。俺の協力者になってくれないか?

セナ

…………一つ、質問させてください

セナ

先ほど湖に飛び込んだのは、"死んでいるから溺死しない"と思ったからですか?

ソウスケ

ああ、そうだ

セナ

……このままソウスケさんを一人にすれば、同じようなことを繰り返すかもしれません

セナ

いえ、もしかしたらそれ以上のことを……

セナ

……。分かりました、ソウスケさん

pagetop