舌切り雀はたとえ羽ばたけなくとも
2話
牢屋も完備の素敵な村ハウス
ある日のこと。
おねーさん、遊びましょ!
あら~~可愛らしい鞠ね。
いいわよぉ~楽しく遊びましょうね!
村の少女に請われ、鞠遊びをするようです。
よかったよかった。子供は好きなのだな。
さて、今のうちに畑仕事でもしておこうか。
男は安心して、仕事に向かいます。
しかし、数刻後につんざくような悲鳴が聞こえるではありませんか!
どうしたどうした!
びえええええええ びえええええええ
雀さん、これはいったい!
そっぽを向いて口笛を吹く嫁!
こんな小さな子供を泣かせて。恥ずかしくないのですか!
あわあわ。あたし知らな~~い。
妖怪のせいだもん!
またしても、しら切り! それで世の中乗り切れると思っているのでしょうか!
またある日のこと。
ガヤガヤ
ガヤガヤ
村の面々が倉庫に集まり、騒いでおりました。
どうやら、倉庫に貯めていた備蓄が減っているようなのです。
一体どうして……これから冬だと言うのに……
誰かが盗んだに違いねえんだ! 太え野郎だ!
この悪戯……もしかして。
犯人は……縛り首じゃな。
男は嫁のいたずら癖に思い当たるも、思わず口を引っ込めました。
そう、村の貴重な資産に手を付けたのです。今までのかわいいいたずらとは、わけが違います。
雀さん……
未だ男は迷っていたのです。あの嫁といえど、そのような大それた悪事を働くでしょうか?
男は嫁を信じていました。信じていたかったのです。
うちの嫁が怪しい。とらえて吐かせよ。
しかし母親は容赦がありません!
あら!?
村の地下牢に閉じ込められる女。
縛り首は勘弁してやるが、しばらくそこにおるんじゃな。
いい嫁だと思ったのに……お前なんか冬の寒さに凍えてしまえばいいんだ!
足音を荒く響かせて去っていく村の者たちと、取り残された女。流石にこれで反省をするでしょうか。
何かしら? 何の音?
鎌を振り下ろす音です……!
義母は反省で済ませようなどと生易しいことを考えていません。問題の根本解決を図ろうとしています!
ここは逃げ場のない牢屋。
あら!? さすがにヤバいかも!?
おたすけぇ!!
天罰じゃ。閻魔様に送り届けてやろうぞ。
一巻の終わり!
!?
!?
その時です。けたたましい破砕音と、地響き。ただ事ではありません。
何事じゃ!? 村の入口の方からじゃったようじゃが。
あら、ちょっと、これ、ヤバかも。ヤバ。
ブツブツと、どこか心あらず。
――しばしの逡巡。そして小さくうなずいて。
お義母さま。ちょっとズルしちゃうけど、許してね。
するっ
!!!?
信じられません。女は。なんと、柵をすり抜けたのです……!
幽霊のように、何の障害も感じさせず、すり抜けた――
続く