以前から華胡が体調を
崩しているのは知っていたが、
今までそれをただの風邪だと思っていた。
だけど、本当は風邪
なんかじゃなかった。
華胡はそれを隠していたんだ。
華胡の体調は悪化して、
今では姿が半透明になってしまい、
消えかかっている状態だ。
それは、島の神木が
枯れかかっているせいだと
華胡から聞かされた。
華胡を助けるために
神木を復活させようと思った俺と珠來は、
復活の儀式を行うことにした。
以前から華胡が体調を
崩しているのは知っていたが、
今までそれをただの風邪だと思っていた。
だけど、本当は風邪
なんかじゃなかった。
華胡はそれを隠していたんだ。
華胡の体調は悪化して、
今では姿が半透明になってしまい、
消えかかっている状態だ。
それは、島の神木が
枯れかかっているせいだと
華胡から聞かされた。
華胡を助けるために
神木を復活させようと思った俺と珠來は、
復活の儀式を行うことにした。
大体の行程は、
陽太が島を出る前にやった
みたいだから……
あとは、これね
珠來は、伝記書の一文を指差した。
契りの言葉、か……。
俺と珠來で分けて
読めばいいのか?
契りっていうくらいだから、
きっとそうね
もう一度、伝記書に書かれている
契りの言葉を見た。
『神木が御前、
対の雄蕊(おしべ)雌蕊(めしべ)が絡み
花開くため』
『雄蕊は力強き優しい精を舞わせる』
『雌蕊は深い心で其を包み込む』
最初の文はふたりで
一緒に読むとして……
雄蕊と雌蕊ってことは、
雄蕊の部分を
俺が読めばいいんだな
じゃあ、雌蕊の部分は私ね
よし!
んじゃ、一発で決めるぞ!
ちょっと待ってよ、
練習はしないの?
こういうのは
思い切りが大事なんだよ。
失敗を怖がってるようじゃ、
珠來もまだまだだな!
私は、アンタが失敗するんじゃ
ないかと思って
不安なんだけど……
うっ。
んじゃ、念のため
練習しておくか?
うん……その方が安心かも
じゃあ、最初の文は
ふたりで合わせるぞ
タイミングを合わせるために顔を見合わせると、
深く息を吸い込む。
神木が御前、
対の雄蕊(おしべ)
雌蕊(めしべ)が
絡み……
…………
って、ちょっと!
ここ、二人で言うんでしょ?
わ、悪い。
タイミングがつかめなくて
じゃあ、こうしましょう
珠來が俺の手を握った。
なっ……
なんで手を握るんだ?
何よ。
イヤなの?
イヤじゃないけど、
ちょっとビックリしたんだよ
こうして手を握って、
話し始めるタイミングで
ぎゅっと強く握るの
そうすれば、
鈍いアンタでも
わかりやすいでしょ?
鈍くて悪かったな
(でも、珠來に手を
握ってもらえて
ちょっと嬉しかったり)
(……はっ。
いかんいかん!
マジメにやらねば!)
今度は本番。
いいわね?
ああ!
二人でもう一度息を吸い込むと、
珠來が手をギュッと握った。
そして互いの瞳を見つめ合って、
ゆっくりと口を開いた。
神木が御前、
対の雄蕊雌蕊が絡み
花開くため
雄蕊は力強き
優しい精を舞わせる
雌蕊は深い心で
其を包み込む
無事、契りの言葉を言い終えると
二人で同時に息を吐いた。
ちゃんと
うまく言えたじゃない
さすが俺だな
フフッ。
なに調子に乗ってんのよ
珠來の笑い声につられてこちらも笑っていたが、
実はさっきから胸が高鳴っていた。
(珠來の顔を見ると、
いつもよりずっとドキドキする。
まさか、これが契りの効果?)
気になって珠來を見ると、
ほんのりと頬が染まっているのに気づいた。
…………
(まさか珠來も
俺を意識してるのか?
さすが子孫繁栄の儀式だな)
(……って、
感心してる場合じゃないか)
そ、それじゃあ
華胡の様子を見に行こうか
う、うん……
(なんだ?
珠來の落ち着きが
無いような……)
どうした?
トイレか?
ばかっ、違うわよ!
手……いい加減、
離してもいいんじゃない?
あっ……
珠來の手を握ったままだったことに気づいて、
慌てて離れる。
アンタって……
ほっといたら、
いつまでも握ってるんだから!
なんだよ。
握ってきたのは珠來の方だろ
それは、契りの言葉の
タイミングを計るためじゃない
珠來、お前なあ……
照れ隠しにしたって、
もうちょっと可愛く怒れよ
何よ……。
もういいっ!
陽太とは話したくない!
珠來は怒った様子で立ち上がり、
外へ出て行ってしまった。
おい、待てよ!
(どうしてこんな時まで
ケンカしちまうんだろう……)
おーい、珠來ー!
一人でどこ行く気だよ?
ついて来ないでよ!
その意地っぱりなところ、
いい加減直せよな!
ほっといてよ!
アンタに関係ないでしょ?
(ああ、ダメだ。
話せば話すほど
こじれてしまう)
はあ……やめた
え?
これじゃあいつまでたっても、
同じ関係のままだと思ってさ
同じ関係って……?
こんなんじゃいつまでも
友達のままだろ?!
友達じゃなきゃ、
なんだっていうのよ
俺は珠來を一人の女の子として
見てるっていうのに、
珠來は相変わらず……
(あっ。
俺、勢いで何言ってんだ!?)
ちょっと、
それどういうこと?
そんなの初めて聞いたわよ!
な、なんで怒ってんだよ
怒ってるわけじゃなくて、
その……
大きな声を出していたかと思えば、
今度は下を向いて顔を赤くしている。
(まさか、
珠來も俺のことを……?)
なあ、珠來……。
お前って、
俺のこと好きなのか?
は……はあ!?
バッカじゃない!
アンタなんか好きじゃないわよ!
どうしてだよ。
俺は珠來のこと、好きだぞ
えっ……
湯気が出そうなくらいに、
珠來の顔が真っ赤になった。
からかわないでよ!
バカッ!
変態!
こんな状況でからかうかよ。
もう一回言うけど、
俺は珠來が好きだ
急にそんなこと言われても、
どうすればいいか
わかんないじゃない
珠來が俺のこと
何とも思ってないなら、
スッパリあきらめる!
だから……
珠來の気持ちを聞かせてくれ
もうっ。
こんなの脅迫と一緒じゃない
珠來がこちらに一歩、
また一歩と、
ゆっくり歩み寄ってきた。
アンタって、本当に……
本当に、バカなんだから
珠來が背中に手を回してきたかと思うと……
ゆっくりと、唇を重ねられた。
珠來……?
……っんん!?
珠來の髪から漂ういい匂い……
そして、唇にあたる柔らかい感触。
(俺、今……珠來に
キスされてるのか!?)
珠來のキスは、想像していたよりも
なんだかくすぐったくて……
そして、すごく気持ちが良かった。
(珠來と、
もっと深くキスをしたい……)
いつの間にか、俺からも珠來の背中に
手を回して抱きしめていた。
そうしていると、珠來がゆっくりと唇を離した。
これが、私の気持ちよ
え? どういうことだ??
全部言わないとわかんないの?
私も、陽太が好きだ
って言ってるの
そう言ってから珠來は、
またキスをしてきた。
(そうか、
俺たち両思いだったのか……)
嬉しくて騒ぎたい気持ちをおさえて、
珠來を抱きしめている手に力を込める。
(珠來の身体、
思ったよりも細くて
柔らかいな)
珠來が絡めてきている腕が、
少し湿った柔らかい唇が……
すべてが、愛しくて仕方が無かった。
…………
唇を離すと、珠來は照れくさそうに
視線を逸らしていた。
珠來……
な、何よ
お前のこと、
これからずっと
守っていくからな
恥ずかしいことばっかり
言わないでよ。
そういうキャラじゃないくせに!
じゃあ、お前は俺を
どんなキャラだと
思ってるんだよ?
恋心に鈍感な、ただの変態よ
なんだそりゃ……
まあ、アンタみたいな変態は
私しか手に負えないでしょうね!
これからもずっと、
一緒にいてあげてもいいわよ?
一緒にいてあげるのは
俺の方だろ?
何よ、えらそうに
珠來が手を伸ばしてきたかと思うと、
頬の両側を引っ張られた。
イテテ……
って、こんなことしてたら
いつの間にか
日が暮れちゃったわね
神木を見に行くのは
明日にした方が良さそうだな
明日って……
じゃあ、今日は帰らないの?
だって、今の時間じゃ船は
全部出ちまっただろ?
こっちには俺の実家もあるから、
泊まって行けるぞ
私が……陽太と一緒に
泊まるっていうこと?
ま、まあそうなるけど。
じいちゃんもいるから、
心配すんなって!
心配ってなによ!
アンタんちに泊まっても
全然平気なんだから!
(その割には、
顔が真っ赤になってるんだが……)
とりあえず、
俺の家へ行くぞ!
うんっ