中島 陽太(なかじま はるた)

おーい、じいちゃん

中島 陽太(なかじま はるた)

んんっ?
じいちゃん寝てるのかな?

来栖 珠來(くるす みらい)

もう一回鳴らしてみる?

中島 陽太(なかじま はるた)

そうだな

中島 陽太(なかじま はるた)

じいちゃん!
じいちゃーん!!



玄関のドアを叩いてると、
隣の家からおばちゃんが出てきた。

おや、騒がしいと思ったら
陽太ちゃんじゃないか。
ひさしぶりだねぇ

中島 陽太(なかじま はるた)

あっ、おばちゃんひさしぶり

来栖 珠來(くるす みらい)

おひさしぶりです

おや?
あんたは……
まさか珠來ちゃんかい?

来栖 珠來(くるす みらい)

はい、そうです!

あらあらまあまあ。
こんなにおっきくなって。
美人さんになったこと

来栖 珠來(くるす みらい)

えへへ。
美人なんて、
そんなぁ

中島 陽太(なかじま はるた)

そんなことは
どうでもいいんだけどさ

来栖 珠來(くるす みらい)

どうでもいいって何よ

中島 陽太(なかじま はるた)

じいちゃんってどっか
出かけてんのか?

おや、聞いてなかったのかい?
中島のじいさまなら、
北海道旅行へいったよ

中島 陽太(なかじま はるた)

ほ、北海道?
東京の孫に顔も見せず、
なぜ北の地へ……

来栖 珠來(くるす みらい)

っていうかアンタ、
ここに来る前におじいちゃんに
連絡してなかったの?

中島 陽太(なかじま はるた)

まあな!
急に決まったことだから
連絡なんて頭になかったぜ!

来栖 珠來(くるす みらい)

なにをハキハキ答えてんのよ

あっ、鍋を火にかけた
ままだった!
あたしゃこれで失礼するよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、じゃあな

来栖 珠來(くるす みらい)

さようなら……

来栖 珠來(くるす みらい)

っていうか、
これからどうするの?
このままじゃ野宿よ

中島 陽太(なかじま はるた)

焦るなって。
念のため、鍵を持って
来てるんだよ

来栖 珠來(くるす みらい)

えっ……。
今は陽太のおじいちゃんが
留守なのよね?

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、だからふたりだけで
泊まっ……

中島 陽太(なかじま はるた)

(しまった!
これじゃ、あからさまに
誘ってるみたいじゃないか!)

中島 陽太(なかじま はるた)

な、なあ。どうする珠來?
なんなら俺は近所に泊まりに
行ってもいいし……

来栖 珠來(くるす みらい)

……いいわよ

中島 陽太(なかじま はるた)

へっ?

来栖 珠來(くるす みらい)

だから、
陽太と一緒に泊まっても
いいって言ってるの

中島 陽太(なかじま はるた)

そ、そうか。
じゃ、じゃあ入ろっか

中島 陽太(なかじま はるた)

ふー……。
まんぷく、まんぷく!

来栖 珠來(くるす みらい)

隣りのおばちゃんが
夕飯を分けてくれて
助かったわね

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ!
持つべきものは
ご近所さんだな~

来栖 珠來(くるす みらい)

まさか私まで
陽太の家に泊まるなんて
言えなかったけどね……

中島 陽太(なかじま はるた)

そ、そうだなっ。
おばちゃんにバレたら、
島中に広がっちまうよな!

来栖 珠來(くるす みらい)

うん……

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、そろそろ
風呂が沸いたんじゃないか?
先に入ってくれよ

来栖 珠來(くるす みらい)

ありがと。
じゃあお先に
お風呂をいただくわね

中島 陽太(なかじま はるた)

お、おう


珠來が入浴してる間、
俺は落ち着かない気持ちで布団を敷いていた。

中島 陽太(なかじま はるた)

(しっかし……。
ふたりきりで泊まるってことが
どういう意味なのか、
わかってんのかアイツ?)

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來の布団は寝室に
敷くとして……)

中島 陽太(なかじま はるた)

(さすがに一緒の部屋で
寝るのはまずいよな。
俺の布団は居間に敷くか)

来栖 珠來(くるす みらい)

ねえ、陽太。
ドライヤー有る?

中島 陽太(なかじま はるた)

うわっ!
は、早かったな!

来栖 珠來(くるす みらい)

早いかしら?
入ってから一時間くらい
経ったと思うけど

中島 陽太(なかじま はるた)

そうか……。
考えごとをしている内に
そんなに経っていたのか

来栖 珠來(くるす みらい)

考えごと???

中島 陽太(なかじま はるた)

気にすんな。
ドライヤーはそこの棚に有るから
勝手に使ってくれよ

来栖 珠來(くるす みらい)

ありがと。
それで、えっと……
今夜はここで寝るの?

中島 陽太(なかじま はるた)

お前はな。
俺は別の部屋で寝るから
安心しろ!

来栖 珠來(くるす みらい)

はあ、アンタって……

中島 陽太(なかじま はるた)

ん?

来栖 珠來(くるす みらい)

なんでもないわ。
早くお風呂入りなさいよ

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、うん?



風呂から上がったら、
居間に珠來の姿は無かった。

中島 陽太(なかじま はるた)

(もう寝たのか……。
なんかちょっとガッカリ……)

中島 陽太(なかじま はるた)

(いやいや、
何をガッカリしてんだ俺は。
ここで変な気を起こして
珠來に嫌われたら、
恋愛成就どころじゃないだろ!)

中島 陽太(なかじま はるた)

(いさぎよく
寝るぞおおお!!)

居間の布団に入り込み、電気を消す。

中島 陽太(なかじま はるた)

…………

中島 陽太(なかじま はるた)

(ね、眠れねぇ。
隣りの部屋で寝てる
珠來が気になりすぎる!)

中島 陽太(なかじま はるた)

(ええいっ!
邪念よ、去れえええい!!)

中島 陽太(なかじま はるた)

!?



布団に何者かが入ってきたので、
慌てて電気を点ける。

中島 陽太(なかじま はるた)

ぎゃあっ!
オバケ!?

来栖 珠來(くるす みらい)

誰がオバケよ。
失礼ね……

中島 陽太(なかじま はるた)

み、珠來!?
なんでこっちの布団に?

来栖 珠來(くるす みらい)

えっと、その……。
よく眠れなくて……。
こっちで寝ても、いい?

中島 陽太(なかじま はるた)

お前が隣りにいたら、
俺が寝れなくなるだろうが!

来栖 珠來(くるす みらい)

何よっ。
じゃっ、じゃあ寝なきゃ
いいじゃない!

中島 陽太(なかじま はるた)

なんでそんなひどいことを
おっしゃる?
睡眠不足で死ねと?

来栖 珠來(くるす みらい)

もうっ、本当にバカね!
最後まで言わせる気?

中島 陽太(なかじま はるた)

はい?

来栖 珠來(くるす みらい)

陽太にだったら、
何されてもいいって
言ってるのよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

み、珠來いぃ?


頭がクラクラとして、
鼻血をふきそうになってしまった。

来栖 珠來(くるす みらい)

だって私たち、
もう付き合ってるんでしょ?
だから……

中島 陽太(なかじま はるた)

へっ?
お前と俺、付き合ってんの?

来栖 珠來(くるす みらい)

はあっ???

来栖 珠來(くるす みらい)

アンタって最低っっ!!
私を好きって言ったのは、
からかっただけなのね!?

中島 陽太(なかじま はるた)

ちょっ!
ストップストップ!
からかってなんかない!

来栖 珠來(くるす みらい)

じゃあ、どういうつもりなのよ

中島 陽太(なかじま はるた)

そ、そりゃあ……。
珠來が彼女になってくれたら
いいなとは思うけど

中島 陽太(なかじま はるた)

一時の感情で
お前に無理させて
嫌われるのが怖くて……

来栖 珠來(くるす みらい)

確かに、アンタと付き合えば
無理の連続でしょうね。
いつでもバカだし

中島 陽太(なかじま はるた)

そこは否定して!

来栖 珠來(くるす みらい)

でも、今さら嫌いになんて
なれないのよ。
だから私の彼氏になりなさい!

中島 陽太(なかじま はるた)

は、はいっ!



胸に飛び込んできた珠來を、
ぎゅっと抱きしめる。


こちらを見つめていた珠來は、
その潤んだ瞳をゆっくりと閉じた。


俺は珠來にキスをしたまま、服に手をかけた。

来栖 珠來(くるす みらい)

ちょ、ちょっと。
電気点けたままで
する気?

中島 陽太(なかじま はるた)

よく見えるかと思って

来栖 珠來(くるす みらい)

バカッッッ!!!
電気くらい消しなさいよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、うん。
ごめん

部屋の灯りを消すと、珠來と同じ布団に入る。


暗闇の中で珠來の手をそっと握ると、
緊張しているのか少し震えていた。

来栖 珠來(くるす みらい)

ねえ……契りの言葉、
まだ覚えてる?

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、覚えてるけど……

来栖 珠來(くるす みらい)

あの言葉をいったから、
告白する勇気が出たの

来栖 珠來(くるす みらい)

だから、お願い……。
もう一度、
一緒に言ってくれる?

中島 陽太(なかじま はるた)

わかった……

神木が御前、
対の雄蕊雌蕊が絡み
花開くため

中島 陽太(なかじま はるた)

雄蕊は力強き
優しい精を舞わせる

来栖 珠來(くるす みらい)

雌蕊は深い心で
其を包み込む




二人で言い終えると、
何度も繰り返しキスをした……。

来栖 珠來(くるす みらい)

もう……
朝になっちゃったわね

中島 陽太(なかじま はるた)

本当だ。
窓から日が差してるな

中島 陽太(なかじま はるた)

(あれから夢中になってる内に、
夜が明けたのか……)

中島 陽太(なかじま はるた)

なあ、珠來。
……イヤじゃなかったか?

来栖 珠來(くるす みらい)

今更そんなこと聞くの?
聞くならもっと早い内に
聞きなさいよ

中島 陽太(なかじま はるた)

そりゃそうだけど……

来栖 珠來(くるす みらい)

全然イヤじゃなかったわよ。
っていうより、嬉しかった!

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ?

来栖 珠來(くるす みらい)

恥ずかしくて言えなかったけど、
本当はずっと、陽太と……
こうしたいって思ってたの

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來……

中島 陽太(なかじま はるた)

(どうしてそれを早く
言ってくれなかったんだ!)

中島 陽太(なかじま はるた)

(……なんて言ったら、
ムードがぶち壊しになる。
さすがの俺も空気を読むぜ)


日の光に照らされた珠來が綺麗で、
そのままずっと眺めていたいと思った。

来栖 珠來(くるす みらい)

な、何見てるのよ。
恥ずかしいじゃない

中島 陽太(なかじま はるた)

あの、もう一回……

来栖 珠來(くるす みらい)

ダメよ。
そろそろ、華胡さんの様子を
見に行かないといけないじゃない

中島 陽太(なかじま はるた)

キスだけならいいだろ?

来栖 珠來(くるす みらい)

……いいけど


恥ずかしそうにしている珠來に顔を近づけ、
そっとキスをする。


キスなんてもう何度もしたのに、
それでも珠來は初めてみたいに
恥ずかしそうに目をつぶった。

中島 陽太(なかじま はるた)

なあ、やっぱりもう一回……

来栖 珠來(くるす みらい)

も、もうダメ!
また日が暮れちゃうじゃない。
さっ、早く行くわよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

わかったよ……

中島 陽太(なかじま はるた)

(確かに華胡が心配ではあるし、
あんまりしつこくして
珠來に嫌われても困るしな)

中島 陽太(なかじま はるた)

(早く服を着て、
神木の所へ行くとするか)

pagetop