よく見ると、華胡の身体がだんだん
透けて行っていることに気づいた。
ん~、朝かあ……
今日も特に予定がないし、
どうするかな。
春休みって、暇だなあ
はあ、はあ……
どうした、華胡?
はあ、はあ……。
な、なんでもな……い……
こんなに息遣いが荒くて、
なんでもない
ってこと無いだろ!?
よく見ると、華胡の身体がだんだん
透けて行っていることに気づいた。
お前の身体、
透明になってるじゃん!
どうしちゃったんだよ!?
はあっ……そう騒ぐな……
これは、仕方の無いこと
なのだから……
仕方が無いこと?
華胡、お前……
どうしてこうなったのか
知ってるんだな?
おぬしが知る必要は無い……
はあ、はあ……
馬鹿!
俺に隠しことなんか
するなよ!!
華胡はこちらを一度見た後に、うつむいた。
わらわの……
生命力が、低下している……
この前まで風邪だって
言ってたじゃないか!
それが、どうして……
これは……
おそらく神木に、
何らかの力が働いている……
神木……?
ここしばらく、
どうしてぱんつに宿ることが
できたのかを考えていた……
パンツって、
俺がいつも履いてる
モテパンツのことか?
そうじゃ……。
これを作っている者が、
樹液を採っているとしか
思えない……
これを作っている者って、
珠來の父さんの会社……
つまり、KURUSUか!?
そうなのかもしれぬな……。
島の神木が枯れてしまうと……
わらわは消えてしまう……
だったら、
今すぐKURUSUに行って
樹の採取をやめさせてくる!
やめろ……。
おぬしが止めたところで、
大手企業のKURUSUが
耳を貸すわけがない……
それに、今更
樹液を採るのをやめても……
もう、意味は無い……
意味は無い?
どうして!?
樹液はすでに
残り少なくなって
おるからじゃ……
じゃあ、このまま黙って
見てろっていうのかよ!?
華胡を助ける方法は無いのか?
確か、遺伝子のことを
DNAと言ったな……
DNAがどうかしたのか?
島のDNAを継ぐ男女が……
んっ、はあ……
島のDNAを継ぐ男女が、
どうすればいいんだ?
頑張って話してくれ……華胡!
島で恋愛を成就させれば……
神木に、力を……もたらす……
島のDNAを継ぐ男女……?
そうか、俺と珠來だ!
華胡は力なくうなづいた。
待ってろ、
今すぐ珠來に伝えるから!
しかし……
何度掛けても、珠來は電話に出なかった。
くそっ、どうしてこんな時に!
すると、珠來からLINEが入った。
『さっきから何?
今、電話で話せないんだけど』
(もどかしいな……)
『用事が終わったら
すぐに電話をくれ。
大事な話がある』
『ごめん、今日は無理。
明日なら時間作れるけど』
明日だなんて……
陽太……焦らなくてもいい。
すぐに消えてしまうことは
ないからな……
華胡……
『わかった。
明日、飛鳥山公園で
待ち合わせをしよう』
『うん、了解』
翌日、珠來に華胡に関することを
すべて話した。
ウソ……神木の精霊がパンツを
媒介して出てくるなんて……。
からかってるの?
からかってない。
今までだって、
何度も力を借りてきたんだ
華胡っていうのよね、
その精霊……
あ、ああ?
そうだけど、なんで名前を
知ってるんだ?
あれ……?
本当だわ、
どうして知ってるんだろ?
うーん……。
俺が無意識に華胡って
言っちまったことあったかもなあ
きっとそうね。
私が神木の精霊の名前なんか
知ってるわけないもん
精霊っていうより、
神様の方が近いらしい。
俺の恋愛成就のために現れたんだ
じゃあ……今までアンタが
急にモテたりしたのも、
神様の力だっていうの?
そうだ。
信じられないかも
しれないけど……
ううん、信じる。
今日の陽太、
ふざけてる感じじゃないもの
ありがとう……
それよりも、その神様が
消え掛かってるのよね。
どうして?
島にあった子孫繁栄の神木が、
枯れそうになってるのが原因だ
って……華胡が言ってた
神木が、枯れそう?
……まさか!
急に珠來が涙ぐみはじめた。
どうした、珠來?
前に、お父さんが言ってたの。
神木の樹液をモテパンツの
成分にしているって……
私のお父さんのせいで、
華胡さんが消えてしまうなんて……
ごめんなさい、ごめんなさい……
大丈夫だ。
珠來は泣かなくてもいい
珠來を優しく抱きしめた。
小さい頃……よく二人で、
神木のそばで遊んだよな。
覚えてるか?
うん、覚えてる……。
鬼ごっことかしたわよね
もしかするとあの頃から、
華胡に見守られてたのかも
しれないな
ねえ……昔、陽太が神木の前で
言ってくれたことも、
覚えてる?
えっ……
珠來ちゃん!
なあに?
陽太くん
大きくなったら……
僕と結婚しよう!
(そうか、俺……
あの頃から、珠來を……)
思い出してくれた?
な、何をだよ?
陽太が私に
プロポーズしてくれたことよ
アンタは忘れたかも
しれないけど、
ずっと覚えてたんだから
覚えてるわけないだろ、
そんなの!
ふうーん、そうなんだ……
珠來は寂しそうに下を向いてしまった。
(なんでそんなに
可哀想な感じになるんだよ~)
ウソだよ、覚えてる!
えっ?
正直に言うと……
忘れてたんだけど。
珠來に言われて思い出したんだ
フフッ、そう
(チクショー、
あんまり可愛い顔で笑うなよ。
キスしたくなるだろ)
あ、それよりも……
華胡さんを助けるには、
どうすればいいの?
私に話したっていうことは、
私が関係あるのよね?
えーと、それは……
(華胡に言われたんだよなぁ。
恋愛が成就すれば神木が復活する
ってことは……黙っておけって)
(それを話して結ばれても、
効力は発揮しないって
言ってたな……)
(それに……俺だって、
そんな告白の仕方はしたくない)
どうしたの?
悪い……。
どうすればいいのか、
俺にもわからないんだ
そう……。
お父さんに頼んでも、
きっと樹液を採るのを
やめて貰えないだろうし……
だよな。
モテパンツはKURUSUの
看板商品だからな
うん……
(弱ったな……。
『珠來と島に行って恋愛成就する』
それを説明しちゃ台無しだし)
ねえ。
私にできることって、
何か無いかな?
そうだな……。
珠來も、島に……
島に?
島に行って神木を調べれば、
ヒントが有るかもしれないって
華胡が言ってたんだ
二人で島に行くの?
そうだ。
今から行かないか?
今日は予定がないから、
大丈夫だけど……。
でも、一度家に帰って
準備をしてからでもいい?
ああ、わかった。
俺も家に戻る
じゃあ、すぐに用意するから。
またあとでね!
(ふう……。
珠來がOKを出してくれて
良かった)
(しかし、こんな形で
島に戻るとは思わなかったな。
とりあえず家に帰るか)
はあっ……はあっ……
(華胡、やっぱり苦しそうだな)
どう……じゃった?
珠來との話は……
これから二人で、
島へ行くことになったよ
そうか……がんばれ、よ……
もうわかった、
喋らなくていいから
(華胡の為に……
そして、俺と珠來の為にも……
島に向かうぞ!)