中島 陽太(なかじま はるた)

ん~、朝かあ……

中島 陽太(なかじま はるた)

今日も特に予定がないし、
どうするかな。
春休みって、暇だなあ

華胡(かこ)

はあ、はあ……

中島 陽太(なかじま はるた)

どうした、華胡?

華胡(かこ)

はあ、はあ……。
な、なんでもな……い……

中島 陽太(なかじま はるた)

こんなに息遣いが荒くて、
なんでもない
ってこと無いだろ!?



よく見ると、華胡の身体がだんだん
透けて行っていることに気づいた。

中島 陽太(なかじま はるた)

お前の身体、
透明になってるじゃん!
どうしちゃったんだよ!?

華胡(かこ)

はあっ……そう騒ぐな……
これは、仕方の無いこと
なのだから……

中島 陽太(なかじま はるた)

仕方が無いこと?
華胡、お前……
どうしてこうなったのか
知ってるんだな?

華胡(かこ)

おぬしが知る必要は無い……
はあ、はあ……

中島 陽太(なかじま はるた)

馬鹿!
俺に隠しことなんか
するなよ!!



華胡はこちらを一度見た後に、うつむいた。

華胡(かこ)

わらわの……
生命力が、低下している……

中島 陽太(なかじま はるた)

この前まで風邪だって
言ってたじゃないか!
それが、どうして……

華胡(かこ)

これは……
おそらく神木に、
何らかの力が働いている……

中島 陽太(なかじま はるた)

神木……?

華胡(かこ)

ここしばらく、
どうしてぱんつに宿ることが
できたのかを考えていた……

中島 陽太(なかじま はるた)

パンツって、
俺がいつも履いてる
モテパンツのことか?

華胡(かこ)

そうじゃ……。
これを作っている者が、
樹液を採っているとしか
思えない……

中島 陽太(なかじま はるた)

これを作っている者って、
珠來の父さんの会社……
つまり、KURUSUか!?

華胡(かこ)

そうなのかもしれぬな……。
島の神木が枯れてしまうと……
わらわは消えてしまう……

中島 陽太(なかじま はるた)

だったら、
今すぐKURUSUに行って
樹の採取をやめさせてくる!

華胡(かこ)

やめろ……。
おぬしが止めたところで、
大手企業のKURUSUが
耳を貸すわけがない……

華胡(かこ)

それに、今更
樹液を採るのをやめても……
もう、意味は無い……

中島 陽太(なかじま はるた)

意味は無い?
どうして!?

華胡(かこ)

樹液はすでに
残り少なくなって
おるからじゃ……

中島 陽太(なかじま はるた)

じゃあ、このまま黙って
見てろっていうのかよ!?
華胡を助ける方法は無いのか?

華胡(かこ)

確か、遺伝子のことを
DNAと言ったな……

中島 陽太(なかじま はるた)

DNAがどうかしたのか?

華胡(かこ)

島のDNAを継ぐ男女が……
んっ、はあ……

中島 陽太(なかじま はるた)

島のDNAを継ぐ男女が、
どうすればいいんだ?
頑張って話してくれ……華胡!

華胡(かこ)

島で恋愛を成就させれば……
神木に、力を……もたらす……

中島 陽太(なかじま はるた)

島のDNAを継ぐ男女……?
そうか、俺と珠來だ!



華胡は力なくうなづいた。

中島 陽太(なかじま はるた)

待ってろ、
今すぐ珠來に伝えるから!



しかし……



何度掛けても、珠來は電話に出なかった。

中島 陽太(なかじま はるた)

くそっ、どうしてこんな時に!



すると、珠來からLINEが入った。

『さっきから何?
今、電話で話せないんだけど』

中島 陽太(なかじま はるた)

(もどかしいな……)

『用事が終わったら
すぐに電話をくれ。
大事な話がある』

『ごめん、今日は無理。
明日なら時間作れるけど』

中島 陽太(なかじま はるた)

明日だなんて……

華胡(かこ)

陽太……焦らなくてもいい。
すぐに消えてしまうことは
ないからな……

中島 陽太(なかじま はるた)

華胡……

『わかった。
明日、飛鳥山公園で
待ち合わせをしよう』

『うん、了解』



翌日、珠來に華胡に関することを
すべて話した。

来栖 珠來(くるす みらい)

ウソ……神木の精霊がパンツを
媒介して出てくるなんて……。
からかってるの?

中島 陽太(なかじま はるた)

からかってない。
今までだって、
何度も力を借りてきたんだ

来栖 珠來(くるす みらい)

華胡っていうのよね、
その精霊……

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、ああ?
そうだけど、なんで名前を
知ってるんだ?

来栖 珠來(くるす みらい)

あれ……?
本当だわ、
どうして知ってるんだろ?

中島 陽太(なかじま はるた)

うーん……。
俺が無意識に華胡って
言っちまったことあったかもなあ

来栖 珠來(くるす みらい)

きっとそうね。
私が神木の精霊の名前なんか
知ってるわけないもん

中島 陽太(なかじま はるた)

精霊っていうより、
神様の方が近いらしい。
俺の恋愛成就のために現れたんだ

来栖 珠來(くるす みらい)

じゃあ……今までアンタが
急にモテたりしたのも、
神様の力だっていうの?

中島 陽太(なかじま はるた)

そうだ。
信じられないかも
しれないけど……

来栖 珠來(くるす みらい)

ううん、信じる。
今日の陽太、
ふざけてる感じじゃないもの

中島 陽太(なかじま はるた)

ありがとう……

来栖 珠來(くるす みらい)

それよりも、その神様が
消え掛かってるのよね。
どうして?

中島 陽太(なかじま はるた)

島にあった子孫繁栄の神木が、
枯れそうになってるのが原因だ
って……華胡が言ってた

来栖 珠來(くるす みらい)

神木が、枯れそう?
……まさか!



急に珠來が涙ぐみはじめた。

中島 陽太(なかじま はるた)

どうした、珠來?

来栖 珠來(くるす みらい)

前に、お父さんが言ってたの。
神木の樹液をモテパンツの
成分にしているって……

来栖 珠來(くるす みらい)

私のお父さんのせいで、
華胡さんが消えてしまうなんて……
ごめんなさい、ごめんなさい……

中島 陽太(なかじま はるた)

大丈夫だ。
珠來は泣かなくてもいい



珠來を優しく抱きしめた。

中島 陽太(なかじま はるた)

小さい頃……よく二人で、
神木のそばで遊んだよな。
覚えてるか?

来栖 珠來(くるす みらい)

うん、覚えてる……。
鬼ごっことかしたわよね

中島 陽太(なかじま はるた)

もしかするとあの頃から、
華胡に見守られてたのかも
しれないな

来栖 珠來(くるす みらい)

ねえ……昔、陽太が神木の前で
言ってくれたことも、
覚えてる?

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ……

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來ちゃん!

来栖 珠來(くるす みらい)

なあに?
陽太くん

中島 陽太(なかじま はるた)

大きくなったら……
僕と結婚しよう!

中島 陽太(なかじま はるた)

(そうか、俺……
あの頃から、珠來を……)

来栖 珠來(くるす みらい)

思い出してくれた?

中島 陽太(なかじま はるた)

な、何をだよ?

来栖 珠來(くるす みらい)

陽太が私に
プロポーズしてくれたことよ

来栖 珠來(くるす みらい)

アンタは忘れたかも
しれないけど、
ずっと覚えてたんだから

中島 陽太(なかじま はるた)

覚えてるわけないだろ、
そんなの!

来栖 珠來(くるす みらい)

ふうーん、そうなんだ……



珠來は寂しそうに下を向いてしまった。

中島 陽太(なかじま はるた)

(なんでそんなに
可哀想な感じになるんだよ~)

中島 陽太(なかじま はるた)

ウソだよ、覚えてる!

来栖 珠來(くるす みらい)

えっ?

中島 陽太(なかじま はるた)

正直に言うと……
忘れてたんだけど。
珠來に言われて思い出したんだ

来栖 珠來(くるす みらい)

フフッ、そう

中島 陽太(なかじま はるた)

(チクショー、
あんまり可愛い顔で笑うなよ。
キスしたくなるだろ)

来栖 珠來(くるす みらい)

あ、それよりも……
華胡さんを助けるには、
どうすればいいの?

来栖 珠來(くるす みらい)

私に話したっていうことは、
私が関係あるのよね?

中島 陽太(なかじま はるた)

えーと、それは……

中島 陽太(なかじま はるた)

(華胡に言われたんだよなぁ。
恋愛が成就すれば神木が復活する
ってことは……黙っておけって)

中島 陽太(なかじま はるた)

(それを話して結ばれても、
効力は発揮しないって
言ってたな……)

中島 陽太(なかじま はるた)

(それに……俺だって、
そんな告白の仕方はしたくない)

来栖 珠來(くるす みらい)

どうしたの?

中島 陽太(なかじま はるた)

悪い……。
どうすればいいのか、
俺にもわからないんだ

来栖 珠來(くるす みらい)

そう……。
お父さんに頼んでも、
きっと樹液を採るのを
やめて貰えないだろうし……

中島 陽太(なかじま はるた)

だよな。
モテパンツはKURUSUの
看板商品だからな

来栖 珠來(くるす みらい)

うん……

中島 陽太(なかじま はるた)

(弱ったな……。
『珠來と島に行って恋愛成就する』
それを説明しちゃ台無しだし)

来栖 珠來(くるす みらい)

ねえ。
私にできることって、
何か無いかな?

中島 陽太(なかじま はるた)

そうだな……。
珠來も、島に……

来栖 珠來(くるす みらい)

島に?

中島 陽太(なかじま はるた)

島に行って神木を調べれば、
ヒントが有るかもしれないって
華胡が言ってたんだ

来栖 珠來(くるす みらい)

二人で島に行くの?

中島 陽太(なかじま はるた)

そうだ。
今から行かないか?

来栖 珠來(くるす みらい)

今日は予定がないから、
大丈夫だけど……。
でも、一度家に帰って
準備をしてからでもいい?

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、わかった。
俺も家に戻る

来栖 珠來(くるす みらい)

じゃあ、すぐに用意するから。
またあとでね!

中島 陽太(なかじま はるた)

(ふう……。
珠來がOKを出してくれて
良かった)

中島 陽太(なかじま はるた)

(しかし、こんな形で
島に戻るとは思わなかったな。
とりあえず家に帰るか)

華胡(かこ)

はあっ……はあっ……

中島 陽太(なかじま はるた)

(華胡、やっぱり苦しそうだな)

華胡(かこ)

どう……じゃった?
珠來との話は……

中島 陽太(なかじま はるた)

これから二人で、
島へ行くことになったよ

華胡(かこ)

そうか……がんばれ、よ……

中島 陽太(なかじま はるた)

もうわかった、
喋らなくていいから

中島 陽太(なかじま はるた)

(華胡の為に……
そして、俺と珠來の為にも……
島に向かうぞ!)

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