眠い目をこすりながら、
手探りでアラームを止める。

中島 陽太(なかじま はるた)

ふわあ~……ねむっ!



スマホを見ると、沙穂先生から
LINEのメッセージがきていた。

『おはよう。
もうすぐクリスマスね♪』

『クリスマスイブには
表通りでイルミネーションが
華やかに点灯するらしいわ。
きっと綺麗でしょうね』

中島 陽太(なかじま はるた)

これはもしや、
デートのお誘いなのか!?
困ったなぁ、珠來と約束したのに

中島 陽太(なかじま はるた)

でも、なんで沙穂先生から
こんなメッセージが
来たんだろう?

華胡(かこ)

ひとりごとの多い奴じゃのう

中島 陽太(なかじま はるた)

おっ、華胡。
おはよう!

華胡(かこ)

ふむ……



華胡はメッセージを覗き込んで、
何かを考えている様子だった。

華胡(かこ)

ぱんつの力が暴走して、
威力が飛躍しているようじゃな

中島 陽太(なかじま はるた)

……と、言いますと?

華胡(かこ)

ぱんつの力を使ったことがある
相手が目の前におらずとも、
効力が出てしまっているのじゃ

中島 陽太(なかじま はるた)

沙穂先生にパンツの力を
使ったことなんかあったっけ?

華胡(かこ)

ほれ、前にあったじゃろ。
お前がここ来たばかりの頃に、
校門で女生徒を集めたではないか

中島 陽太(なかじま はるた)

あー……。
不特定多数の女の子を
たぶらかすなって、
沙穂先生から注意されたな

華胡(かこ)

そうじゃ。
あの時に沙穂は近くに居た。
そのせいで影響を受けたのじゃ

中島 陽太(なかじま はるた)

それって、ちょっと
マズイんじゃないか?

華胡(かこ)

とりあえず、今は様子見じゃな。
ぱんつの力だからといって、
おなごを無碍(むげ)にする
ようなことがあってはならぬぞ

中島 陽太(なかじま はるた)

当たり前だ。
俺が沙穂先生を面倒に
思うことなんかあるはずがない!

華胡(かこ)

だったら、早く返信してやれ

中島 陽太(なかじま はるた)

そうだな。
うーんと……なんて返そうかな

『俺も、表通りの
イルミネーションを見たいです』

華胡(かこ)

そんな思わせぶりな
返信をして大丈夫かのう

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ?
……あ、もう返事がきたぞ

『嬉しいな。
中島くんと同じ気持ちだなんて』

中島 陽太(なかじま はるた)

おおー!
なんか好感触だぞ!?

華胡(かこ)

たわけ。
おぬしは珠來と
約束をしておるのじゃろうが

中島 陽太(なかじま はるた)

そ、そうだった……

『イブに珠來と会う約束なので、
見に行ってみますね』

中島 陽太(なかじま はるた)

よし、これで送信っと

華胡(かこ)

ふむ……。
多少回りくどくはあるが、
まあいいじゃろう

中島 陽太(なかじま はるた)

本当は沙穂先生とも
デートしたかったけどさ……
って、もう返事がきた

『そうなんだ。
二人が仲良くしてるのは
嬉しいけど、
ちょっとヤケちゃうかな。
でも、頑張ってね!』

中島 陽太(なかじま はるた)

沙穂先生……
じーんときちゃったじゃないか

華胡(かこ)

ところで、
そろそろ学校に行った方が
良いのではないか?

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、もうこんな時間か。
行くとするか

学校に向かう途中で、
苺香ちゃんの姿が見えた。

日下部 苺香(くさかべ いちか)

あ、陽太ちゃーん!
おはようです!

中島 陽太(なかじま はるた)

お、苺香ちゃん。
おはよう

日下部 苺香(くさかべ いちか)

丁度良かったです。
陽太ちゃんに聞きたいことが
あるですよ

中島 陽太(なかじま はるた)

ん? なんだ?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

明日はクリスマスイブですよね。
陽太ちゃんは、
予定とかありますか?

中島 陽太(なかじま はるた)

(こりゃどういうことだ?
朝に続いてパンツの力が
暴走してるのか?)

中島 陽太(なかじま はるた)

えっと、明日は……

日下部 苺香(くさかべ いちか)

ひょっとして、
お友達と遊ぶ約束が
あるですか?

中島 陽太(なかじま はるた)

ま、まあそんなとこかな。
夜に出かける約束をしていて……

日下部 苺香(くさかべ いちか)

それなら、
ちょっとだけでもいいので
会いたいです

中島 陽太(なかじま はるた)

(午前中は苺香ちゃん、
午後は珠來ってのも
盛りだくさんでいいもかなあ)

華胡(かこ)

おぬしは本当に
それでいいと思っておるのか?

中島 陽太(なかじま はるた)

(だって苺香ちゃんがこんなに
会いたがってるのに、
断るなんて可哀想だろ)

華胡(かこ)

考えてもみよ。
もしも珠來が午前中に裕貴、
午後におぬしと会うとしたら
どう思うのじゃ?

中島 陽太(なかじま はるた)

(絶対にイヤだ)

華胡(かこ)

ならば苺香になんと
言えば良いのか、
おのずと答えは出るじゃろう

中島 陽太(なかじま はるた)

(ううっ……。
こうするしかないのか……)

中島 陽太(なかじま はるた)

苺香ちゃん……。
本当に、本当に残念だけど、
明日はダメなんだ……

中島 陽太(なかじま はるた)

ウッ……ウッ……!
ウウウ~ッ!!

日下部 苺香(くさかべ いちか)

な、泣かないでくださいっ!
苺香が悪かったですぅ~!

中島 陽太(なかじま はるた)

別に苺香ちゃんは悪くないよ。
悪いのは俺の理性を無視して
悲しんでる下半身だよ……

日下部 苺香(くさかべ いちか)

ふにゅ?

華胡(かこ)

下半身とは、
ぱんつであるわらわが
悪いと言うのか!?

中島 陽太(なかじま はるた)

(なんでそうなる)

日下部 苺香(くさかべ いちか)

よくわからないですけど、
苺香がわがまま言って
困らせちゃったですね。
ごめんなさいです

中島 陽太(なかじま はるた)

いやいや、そんな。
わがままだなんてことないよ

日下部 苺香(くさかべ いちか)

陽太ちゃんって
素敵ですもんね。
誰かと約束があって当然です

中島 陽太(なかじま はるた)

素敵なんて言ってくれるのは
苺香ちゃんだけだって!
ありがとな

日下部 苺香(くさかべ いちか)

えへへ、
苺香は思ったことを
言っただけですよ?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

あっ、友達と学校行こうって
待ち合わせてたの忘れてたですっ。
またねです~!



苺香ちゃんはパタパタと走って行ってしまった。

中島 陽太(なかじま はるた)

(苺香ちゃんは
いつも元気だなぁ。
さて、俺も行くか)

──放課後。

中島 陽太(なかじま はるた)

(今日も練習キツかったなぁ)

来栖 珠來(くるす みらい)

ねぇ、陽太。
一緒に帰らない?

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、ああ。
いいぜ

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來がこんなに素直に
誘ってくるなんて珍しいな。
これもパンツの力だろうか……)

来栖 珠來(くるす みらい)

考え込んじゃって、
どうしたのよ?

中島 陽太(なかじま はるた)

いやいや、なんでもないんだ。
そういや明日、どこに行く?

来栖 珠來(くるす みらい)

あっ。
私、表通りのイルミネーションを
見に行きたいなって思ってたのよ

中島 陽太(なかじま はるた)

そこ、沙穂先生も言ってたけど
人気スポットなのか?

来栖 珠來(くるす みらい)

なんで倉敷先生が出てくるのよ。
もしかして誘ったの?

中島 陽太(なかじま はるた)

は、はは……違うって

来栖 珠來(くるす みらい)

怪しいわね。
ま、いいわ

来栖 珠來(くるす みらい)

アンタは島ぐらしが長いから
知らないだろうけど、
表通りのイルミネーションは
豪華なことで有名なのよ

来栖 珠來(くるす みらい)

友達が去年のクリスマスに、
表通りにデートに行った~
なんて自慢しまくってたせいで、
どうしても見に行きたくなったの

中島 陽太(なかじま はるた)

(それってつまり……
俺とデートに行きたい
ってことだよな?)

来栖 珠來(くるす みらい)

何よ?
さっきから黙ってるけど、
もしかして行きたくないの?

中島 陽太(なかじま はるた)

んなことねーよ。
どんなにすごいんだろうな~
って想像してたんだ

来栖 珠來(くるす みらい)

そう?
島にはイルミネーションなんて
無かったもんね!

華胡(かこ)

ロウソクの灯りならば、
尊惚弁天祭りで
大量に出てたじゃろ

中島 陽太(なかじま はるた)

(たぶん、ああいうのとは
かなり違うと思うぞ)

中島 陽太(なかじま はるた)

んじゃ、明日は表通りへ行くか!

来栖 珠來(くるす みらい)

じゃあ、夜の7時に
駅で待ち合わせましょう

中島 陽太(なかじま はるた)

了解。
遅れるなよ

来栖 珠來(くるす みらい)

アンタこそ。
明日、楽しみにしてるんだから
遅刻しないでよ?
じゃあね!

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、またな

──クリスマスイブ当日。

来栖 珠來(くるす みらい)

わぁ、綺麗……



珠來はイルミネーションを見上げて、
感動しているようだった。

中島 陽太(なかじま はるた)

(思わず『今日のために
お洒落をした珠來の方が綺麗だ』
なんて言いそうになったが……)

中島 陽太(なかじま はるた)

(そんなキャラに無いことを
言おうものなら、
大笑いされるにちがいない)

来栖 珠來(くるす みらい)

ね、陽太……



珠來はほほ笑むと、手を握った。

中島 陽太(なかじま はるた)

み、珠來?

来栖 珠來(くるす みらい)

周りの人達、
みんなこうしてるでしょ?
だから私もつなぎたくなったの

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來の手って、
柔らかいんだな~。
それに、しっとりしてる……)



思わず、珠來の手に指をからめて握った。

来栖 珠來(くるす みらい)

そ、そんな握り方
しなくても……



珠來は顔を赤くして、
上目づかいでこちらを見た。

中島 陽太(なかじま はるた)

(ヤバイ、かわいい……)

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、えーと……ごめん。
つい無意識で

来栖 珠來(くるす みらい)

謝らなくてもいいわよ



今度は珠來が、腕に抱きついてきた。

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來がこんなに
デレてくるなんて、
パンツの力が効きすぎ
じゃないのか!?)

中島 陽太(なかじま はるた)

(ちょっと怖い気もするが、
腕におっぱいが
あたってラッキー)

来栖 珠來(くるす みらい)

なんか、鼻の下伸びてない?

中島 陽太(なかじま はるた)

やわらかくて、
気持ちいいな~と思って

来栖 珠來(くるす みらい)

……バカッ!



言葉の意味に気づいたらしく、
真っ赤になって離れてしまった。

中島 陽太(なかじま はるた)

(黙ってればもう少し
感触を味わえたのに!
俺って本当にバカ!)

来栖 珠來(くるす みらい)

ところで、
ディナーなんだけど……

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、そう言えば晩メシのこと
全然考えてなかった

来栖 珠來(くるす みらい)

アンタのことだから
そう言うと思ったわ

中島 陽太(なかじま はるた)

わ、悪い。
これから入れる店を探すか?

来栖 珠來(くるす みらい)

えっ?
アンタの部屋で
パーティするのよね?

中島 陽太(なかじま はるた)

だってピザを頼むにしても、
クリスマスで混雑してるから
届くかどうか……

来栖 珠來(くるす みらい)

大丈夫、安心して。
ちゃんと用意してあるから

中島 陽太(なかじま はるた)

用意???

来栖 珠來(くるす みらい)

うちの使用人に
料理を準備させてるの。
電話一本で届けてくれるはずよ

中島 陽太(なかじま はるた)

わあ~! ステキ!
KURUSUber Eats
だね!!

来栖 珠來(くるす みらい)

それじゃ、アンタの家に
行きましょう

中島 陽太(なかじま はるた)

(小ボケを無視されると
ちょっぴり恥ずかしい)

来栖 珠來(くるす みらい)

ここがアンタが住んでる
アパート?
思ったより綺麗じゃない

中島 陽太(なかじま はるた)

じいちゃんと見つけた物件なんだ。
学校から近いし、
家賃も安くて仕送りだけで
なんとかできるし

中島 陽太(なかじま はるた)

(一応片付けてはおいたが、
珠來が満足してくれるか
どうか……)

中島 陽太(なかじま はるた)

(それに、約束してた
クリスマスの装飾も
あまりできなかったしなあ)

来栖 珠來(くるす みらい)

どうしたの?
入らないの?

中島 陽太(なかじま はるた)

お、おう!
じゃあ入ってくれ!!

中島 陽太(なかじま はるた)

あ……れ……?



ドアを開けると、
そこには異世界が広がっていた。


部屋中に響き渡るクリスマスソング。


壁一面には賑やかなウォールステッカーと、
華やかなクリスマスリース。


中でも最も目を引いたのは、
部屋の中心に有るクリスマスツリーだった。


まるでホテルに置いてあるような、
大きくてきらびやかなクリスマスツリー……。


それを目にした珠來は、
これでもかってくらいに
瞳をキラキラと輝かせていた。

来栖 珠來(くるす みらい)

すごいじゃない、陽太!
これ全部一人でやったの?!

中島 陽太(なかじま はるた)

あー……
えーと……
一人というか……

来栖 珠來(くるす みらい)

きれーい!
このツリー、どうやって
運び込んだの?
写真撮ってもいい?

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、どうぞ……

中島 陽太(なかじま はるた)

(おい、華胡!
これやったのお前だろ?)

華胡(かこ)

ふふふっ、わらわの自信作じゃ。
てれびのくりすます特集を
見ながら作り上げたが、
なかなか苦労したぞ

中島 陽太(なかじま はるた)

(感謝はしてるけど、
ちょっとやり過ぎじゃないか?
部屋の面積まで広がってるし)

華胡(かこ)

やり過ぎなくらいが丁度良い。
現に珠來もはしゃいで
おるではないか

中島 陽太(なかじま はるた)

(まあ……。
珠來が喜んでくれるのが
一番だけどな)



珠來はクリスマスツリーや
部屋の飾りを撮り終えると、
俺の腕をグイッと引っ張った。

中島 陽太(なかじま はるた)

どうした?

来栖 珠來(くるす みらい)

どうしたじゃないでしょ。
ツリーをバッグにして、
一緒に撮るわよ

中島 陽太(なかじま はるた)

へっ?


珠來が俺たちに向けたスマホを高く掲げて、
シャッターボタンを押す。

来栖 珠來(くるす みらい)

ふふっ、ちゃんと撮れてる。
アンタにも送ってあげるわよ

中島 陽太(なかじま はるた)

おう、サンキュ

中島 陽太(なかじま はるた)

(おっ、LINEで
写真が送られてきた)

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來と二人でイブに
撮った写真か……。
待ち受けにしとこっ)

中島 陽太(なかじま はるた)

ん?
こんな時間に誰だ?

来栖 珠來(くるす みらい)

来たわね



珠來がドアを開けると、
料理が載ったワゴンと共に
来栖家のメイドさんが立っていた。

珠來さま。
お料理とお飲み物を
お持ちしました

来栖 珠來(くるす みらい)

ありがとっ!
そこのテーブルに用意して
ちょうだい

中島 陽太(なかじま はるた)

お前、いつの間に
この人たちを呼んだんだ?

来栖 珠來(くるす みらい)

さっき電話してたじゃない。
気づいてなかったの?

中島 陽太(なかじま はるた)

(たぶん俺が華胡と
話してるときだな……)

では、失礼いたします

失礼しまーす!

お邪魔します♪



三人のメイドさんがゾロゾロと入ってくる。

中島 陽太(なかじま はるた)

(メイドさんハーレム!
ちょっといいかも!)



メイドさんたちは、
目にも留まらぬ速さで食卓をセットすると、
横一列に並んでエレガントに会釈をした。

それでは、私たちはこれで
失礼いたします

中島 陽太(なかじま はるた)

み、みなさん
もう帰られるんですか?
もうちょっと居ても……

来栖 珠來(くるす みらい)

なによ。
なんか用事でもあんの?

中島 陽太(なかじま はるた)

いや……
ないけど……

お二人とも、ごゆっくり!

良いクリスマスを♪

中島 陽太(なかじま はるた)

嵐のようだった……

来栖 珠來(くるす みらい)

さっ、食べましょ。
このクリスマスサーモンが
おすすめよ

中島 陽太(なかじま はるた)

サーモンの刺身?
なぜチキンじゃない!?
なんか飾り付けてあるし!

来栖 珠來(くるす みらい)

さあ?
美味しいからいいじゃない。
私サーモンって大好きなのよね

中島 陽太(なかじま はるた)

いや俺も嫌いじゃ
ないけどさ……。
ん? そっちのは?

来栖 珠來(くるす みらい)

これは焼いた
クリスマスサーモンよ。
遠慮しないで食べて

中島 陽太(なかじま はるた)

いやだから、
なんで鮭なんだ……?

来栖 珠來(くるす みらい)

なんでかしら?
うちではクリスマスっていうと
シャケなのよね

中島 陽太(なかじま はるた)

そ、そうか。
まあ美味けりゃ
なんでもいいけど

来栖 珠來(くるす みらい)

あとは……
ジャジャーン♪
ケーキよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

ようやく定番の品が出てきたな



珠來がナイフを手に取り、
丁寧にケーキを切り分ける。


それをお互いの皿に載せ、
二人で料理やシャンメリーを味わった。

来栖 珠來(くるす みらい)

パパやママがいない
クリスマスパーティなんて初めて!
やっと夢が叶ったわね

中島 陽太(なかじま はるた)

夢?

来栖 珠來(くるす みらい)

子供の時に二人でパーティを
開こうとしたけど、
結局ダメだったじゃない

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、そうだったな。
時間かかっちまったけど、
やっと実行できたな

来栖 珠來(くるす みらい)

ふふっ。
その上、今回はプレゼントも
用意してあるし

中島 陽太(なかじま はるた)

おおっ、サンキュー!
開けてもいいか?

来栖 珠來(くるす みらい)

どうぞ。
アンタが気に入ってくれるか
わかんないけど……

中島 陽太(なかじま はるた)

おおっ、これは!

中島 陽太(なかじま はるた)

ワイヤレスヘッドホンじゃん!
しかも結構いいやつ!
高かったんじゃないのか?

来栖 珠來(くるす みらい)

そんなことないわよ。
アンタの好みとかよく知らないから
かなり悩んだんだけど……
そんなので良かった?

中島 陽太(なかじま はるた)

いいに決まってるだろ!
すげー欲しかったやつ!
ありがとな!

来栖 珠來(くるす みらい)

フフッ、どういたしまして!

中島 陽太(なかじま はるた)

さ、さて。
今度は俺の番か……。
ちょ、ちょっと待ってくれ……

来栖 珠來(くるす みらい)

んっ?

華胡(かこ)

どうした?
早く出さぬか。
珠來が変に思っておるぞ

中島 陽太(なかじま はるた)

(こんな高い物渡されたら、
俺のプレゼントが
な~んか出しづらくてさ)

華胡(かこ)

はああぁ~……。
おぬしは女心を
わかっとらんのう

中島 陽太(なかじま はるた)

(どういう意味だ?
誰でも高い物のほうが
嬉しいに決まってるだろ)

華胡(かこ)

なぜ高価な物が嬉しいかと
言うと、それだけ自分に重きを
置いてくれたことが肝要なのじゃ

華胡(かこ)

陽太がいま出せる限りの金で
買った物なら、高価な贈り物を
したのと同じことなのじゃ

中島 陽太(なかじま はるた)

(そ、そうか?
よしっ、思い切って……!)

中島 陽太(なかじま はるた)

受け取ってくれっっ!!
珠來っっ!!

来栖 珠來(くるす みらい)

あ、ありがとう。
開けてもいい?

中島 陽太(なかじま はるた)

煮るなり焼くなり
好きにしてくれ!

来栖 珠來(くるす みらい)

煮たり焼いたりする物なの?
……あっ

来栖 珠來(くるす みらい)

バラの……ネックレス……?

中島 陽太(なかじま はるた)

お、お前ならアクセサリー
いっぱい持ってるよな?
要らなかったら捨ててくれよ!

来栖 珠來(くるす みらい)

ばかっ……。
捨てるわけ無いじゃない


珠來は今まで着けていたネックレスを外して、
それをテーブルに置いた。


そして……


俺がプレゼントしたバラのネックレスを
着けたのだ。

来栖 珠來(くるす みらい)

変な物をよこされるの
覚悟してたけど、
意外に可愛いもので
ビックリしちゃった

中島 陽太(なかじま はるた)

俺が変な物を
プレゼントするような男に
見えるのか!

来栖 珠來(くるす みらい)

実際にプレゼント
してきたじゃない。
子供のときに、セミの抜け殻

中島 陽太(なかじま はるた)

そ、そうだっけ?

来栖 珠來(くるす みらい)

アンタも女の子の気持ちが
わかるくらいには
成長したってことよね!

来栖 珠來(くるす みらい)

だから、これは……
バラのネックレスのお礼……



珠來がこちらに顔を近づけたかと思うと、
そっと頬に唇を落とした。

来栖 珠來(くるす みらい)
中島 陽太(なかじま はるた)

!!!???
ほっ! ほっ!
ほっぺにチュー!?

来栖 珠來(くるす みらい)

な、何よ?
前にして欲しいって
言ってたじゃない

中島 陽太(なかじま はるた)

まさか、生徒会長に立候補して
選挙活動してたときのアレ……
聞こえてたのか!?

来栖 珠來(くるす みらい)

うん、まあね……

中島 陽太(なかじま はるた)

聞こえてたのに
とぼけてたのか……

来栖 珠來(くるす みらい)

とぼけてないわよ。
聞き間違えかな? と思って
聞き返したのに、
アンタ答えなかったじゃない

中島 陽太(なかじま はるた)

そ、そうだけど!

中島 陽太(なかじま はるた)

(嬉しすぎて卒倒しそうだ。
ほっぺとは言え、珠來から
チューしてくれるなんて!)

来栖 珠來(くるす みらい)

さっ、まだ時間があるわよ!
門限までたっぷり遊ぶんだから!

中島 陽太(なかじま はるた)

おうっ!

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來と二人きりで過ごす
クリスマスイブ……
最高だな!)

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