もうすぐテニス大会を控えていることもあり、
テニス部の練習は一層活発になっていた。
俺はと言うと……。
選挙戦の件も吹っ切れて、
今では裕貴さんと普通に話している。
もうすぐテニス大会を控えていることもあり、
テニス部の練習は一層活発になっていた。
俺はと言うと……。
選挙戦の件も吹っ切れて、
今では裕貴さんと普通に話している。
よお!
前よりフォームが
良くなったじゃん
そうですか?
でも、珠來にもっと体力をつけろ
って言われてるんですよね
そうよ。
どんなにテクニックがあっても、
スタミナがないと
使い物にならないんだから
うっ、珠來に言われると
心にグサッとくる……
え?
なんで私が言ったらダメなのよ
その点俺なら、
テクニックもスタミナもあるぜ。
来栖……今度手合わせしないか?
え、いいですけど
ダメだあーっ!
夜の手合わせは、
断固反対だ!
何言ってんのよ、
このバカッ!
珠來……いくらなんでも、
ラケットで殴るのはやめろ……
はははっ、仲いいなお前ら
裕貴さんは笑いながら、
他の部員の所に行ってしまった。
ねえ……
ん? どうした?
この前、一緒に帰って
楽しかったわね
へえ、珠來でも
ちゃんと楽しかったって
言えるのか
何よそれ、ヤな言い方!
珠來はふくれて、そっぽを向いた。
ゴメンゴメン。
あんまり素直に言われたから、
ちょっと照れくさかったんだよ
……ふ、ふーん。
そう
珠來のおかげで、
すげー元気になったよ
アンタって結構情けないもんね。
私がついてないと
ダメなんじゃない?
それって、まさか……
プロポーズか!?
ばっ、ばっ、
バッカじゃない!?
どうしてそんな話に
なんのよ!!
ぐああっ……
耳元で叫ぶなぁ~……
そ、そんなことよりっ。
あんたも今度の大会に
エントリーしたんでしょ?
なんだ、もう聞いたのか
当たり前でしょ。
一応マネージャーも
兼任してるんだから
テニスの大会は初めてよね?
期待してるから、
頑張りなさいよ
ん……
まあ、それなりに頑張るよ
もう、頼りないわね。
それじゃあ練習を見ていて
あげるから、始めて?
イヤ~ン。
珠來に見られちゃうなんて
恥ずかしい……
ふざけてると殴るわよ
はいはい、
真面目にやりますよ
うーん、悪くはないわね。
後は大会に向けて
コンディションを整えないと
珠來がひざまくらをしてくれれば、
一気に調子が出るかもしれないぞ
はいはい。
寝言は寝て言いなさいね。
とっとと練習を再開しなさい
うう、冷たい……
さっ。
大会までもう少しだから、
私も頑張らないと
あれ?
珠來も大会に出るのか?
足の怪我は順調に治ってるし。
ひさしぶりに大会に
出てみようかなって思ったの
そうかそうか。
まあ、せいぜい恥をかかない
ように頑張りたまえ
それはアンタでしょ!
部活が終わり、下校する頃には
外は真っ暗になっていた。
冬って、日が落ちるのが
早いわね……
そうだな、オマケに寒いし!
車で帰れるお前が
うらやましいよ
ううん、今日は歩いて帰るわ
最近、車で帰ることって
少なくなったよな
うん、なんとなくね
珠來は小さく笑って、俺の前を歩き出した。
(友達と待ち合わせてる
ってわけじゃなさそうだな。
一人で帰るのか?)
なにボーッと突っ立ってるのよ。
早く帰るわよ!
えっ? あっ? 俺?
(車を呼ばないのは、
俺と一緒に帰りたいからなのか?
……とか、どうしても
思っちまうだろおぉ!!)
もうすぐクリスマスね……
そ、そうだな
小さい頃、陽太と
クリスマスパーティごっこ
なんてしたわよね
そんな事があったような、
無かったような……
また忘れたの?
アンタって、もう
わ、悪い……。
そうだ、ヒントをくれ!
そうすれば思い出すかもしれない
んーとね……
一緒にパーティをしたいねって
話になったんだけど……
クリスマス当日は
家族と過ごすから、
一緒にいるのは無理だねって
思い出した!
それで、クリスマスイブの日に
二人で外で遊んだんだよな
へえー、ちゃんと覚えてたんだ
まあな。
ツリーとか持って来るの、
すげー大変だったなあ
親に無断で持って
来ちゃったのよね。
あの後、アンタすごい
怒られてたじゃない
そうそう。
ちょっと壊しちゃったしな
陽太が振り回したり
するからよ?
ちょっと待て。
確か振り回したのは、
お前じゃなかったか?
知らない。
覚えてないわよ、そんなの
き、きたねぇ……
(今年のクリスマス、
珠來と過ごせたら
どんなに楽しいだろうなぁ……)
ねえ、今年のクリスマスだけど
アンタはどうするの?
それを知ってどうすんだよ?
どうせアンタは彼女なんか
いないだろうから、
クリスマスは一人でしょ?
くっ……当たってるけど、
余計なお世話だ
かわいそうな陽太のために、
私が一緒にいてあげてもいいわよ
(まさか珠來から
誘ってくるなんて!
ラッキー!!)
(なーんてことに
ならねえかなあ)
むなしい……。
妄想がむなしすぎるぞ、陽太
(ゲッ、華胡!
他人の妄想を覗くなよ!)
お前の思念がダダ漏れ
じゃったのじゃ。
黙ってても見えてしまうわ
(気を抜いて妄想すら
できないとは……)
ここは久しぶりに、
パンツの力を使ってはどうじゃ?
(えっ、どうして急に?)
おぬしの事じゃ。
下手な誘い方をして、
珠來を怒らせるとも限らん
てれびで見たが、
くりすますとは大事な場面じゃろ?
慎重にやるのじゃ
(なるほど。
それじゃ、また俺の力を
華胡に分け……)
(いや、やっぱやめとくよ)
どうしたのじゃ?
(珠來の前でキスすることに
ちょっと罪悪感があってな)
そうか……
(浮かない顔して、
どうした?)
う、浮かない顔などしておらん。
わらわのことはいいから、
早く珠來を誘うのじゃ
(そか?)
(どうせなら、
珠來から誘ってくれねえかな。
それとなく話を振ってみるか)
はー、今年のクリスマスは
一人で過ごすのかー。
ヒマだな~
急にどうしたの?
なんて下手くそな
話題の振り方なんじゃ……。
泣けてきたぞ
(ほっといてくれ!
やっぱり俺から誘うしかないのか。
ええい、ヤケクソだ!)
珠來と一緒にクリスマスを
過ごしたいって
言ってるんだよ!
それなら、
最初からそう言いなさいよ。
いいわよ、その日は空けておくわ
……へっ?
サ、サンキュー
(余計なことを言った分、
恥ずかしい思いをしてしまった)
あっ、でも……。
一日中、空けるわけには
いかないかも
なんか用事があるのか?
パパとママの手前、
朝から晩まで外出ってわけには
いかないのよ
っていうことは……
(日が落ちる前に解散?
いや、別にいいんだけど……
健全すぎるなあ……)
朝と昼はパパとママの
ご機嫌取りをして、
夜に出かけるって感じかしら
よっ、夜っ!?
きっと夜の街のほうが綺麗よね。
友達の家でパーティする
って言えば、
ママも許してくれるだろうし
そ、そうかっ。
楽しみだな!
ん?
友達の家でパーティってことは、
俺の家に来るってことか?
アンタが嫌なら、
どこかのお店を予約してもいいのよ
(珠來と部屋にたった二人きりで
過ごすチャンス!
これを逃すわけには行くまい!!)
いや、がんばる!
当日までに、頑張って部屋を
クリスマス仕様に装飾しておくぞ!
そう?
楽しみにしてるわね
(本当は部屋を掃除するのが
メインだけど)
あ、そうそう。
クリスマスプレゼント、
ちゃんと用意しておきなさいよ?
もちろん!
ぱんつの力を使わずとも、
ちゃんとやれるように
なったではないか
へへっ、そうみたいだな。
さっきはアドバイスしてくれて
ありがとな
礼にはおよばん。
危なっかしかったが、
なんとか珠來と約束ができて
良かったのう
はは、危なっかしかったか……。
やっぱりパンツの力を
借りれば良かったかな
しかし、珠來の前で
唇を合わせたくないのであろう?
そう思ったけどさ……。
全然スマートに誘えなかったのが
恥ずかしかったんだよ
最近は華胡パンツに
頼ってなかったし、
また力を借りてもいいだろ?
いや、さっきはつい
ああ言ってしまったが……
本当は使わないにこした
ことはないのじゃ
なんでだ?
また自分の力で頑張れ
って説教する気かよ
そうではない。
ぱんつの力は時に
効きすぎることがある。
くれぐれも気をつけるのじゃ
効きすぎて悪いってことは
無いように思うんだけどなぁ……
…………
華胡が赤い顔をして、
うつむいているのに気づいた。
おい、華胡?
なんか様子が変じゃないか?
大丈夫じゃ……
また、ちょっと熱っぽいだけ……
コンッコンッ
咳まで出てるな。
風邪薬やろうか?
心配しなくとも良い。
それに、人間の薬が
わらわに効くとは思えぬしな
そっか……。
俺にできることがあれば、
なんでも言ってくれよ
わらわの心配をするよりも、
早く眠って体力を回復するのじゃ。
今日も部活で疲れたのであろう?
あ、ああ。
……んじゃ、おやすみ
……ありがとうな
えっ?
なんでもない。
早く寝ろ
わ、わかった
華胡がいつもより弱っている気がして、
少し不安に思いながら布団に入ったのだった。