堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

おはよう、
スーパースター!

中島 陽太(なかじま はるた)

なんだなんだ、朝からどうした

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

ほら、学校新聞を見てみろよ

中島 陽太(なかじま はるた)

……ん?



壁に貼られた学校新聞を見ると、
文化祭で珠來とテニスの試合をした時の
写真が載っていた。

中島 陽太(なかじま はるた)

うわっ!
なんで俺と珠來が
載ってるんだ?

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

そりゃ~ただの素人のお前が、
テニス部のエースの
サーブを返したからな。
話題にもなるだろ

中島 陽太(なかじま はるた)

ははは……。
裕貴さんのサポートが無かったら
返せたかどうか

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

またまた、ご謙遜を~。
もういっそ、
テニス部に入っちゃったらどうだ?

中島 陽太(なかじま はるた)

それが、もう入ることに
決定したんだよ

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

えっ、いつの間に!?

来栖 珠來(くるす みらい)

私は反対したんだけど、
そのための試合だったから
仕方ないわね……

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

なんだよ、お前ら!
そんな面白い事してたなんて……。
俺にも教えろよ~

来栖 珠來(くるす みらい)

でも、陽太はまず
基礎体力が必要よ。
少し鍛えないといけないわね

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

俺は無視か……

中島 陽太(なかじま はるた)

鍛えるって言われても、
どうすれればいいんだよ

来栖 珠來(くるす みらい)

そんな基本的な事も
わかんないわけ?
仕方ないわね、
私がトレーニングしてあげるわ

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

お、お前ら、俺を無視して
青春しやがって……
バカヤロー!



優斗は走っていなくなってしまった。

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、優斗……。
まあいいか、
ほっとけば機嫌直るし

──放課後。

来栖 珠來(くるす みらい)

アンタのために、
練習メニューを
作ってやったわよ

中島 陽太(なかじま はるた)

どれどれ



珠來から渡された紙を読んでみる。

中島 陽太(なかじま はるた)

川沿いの長距離コースを
ランニングだと?
いきなりキツくないか?

来栖 珠來(くるす みらい)

私も一緒に
走ってあげるんだから、
頑張りなさいよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

仕方ないなあ……

来栖 珠來(くるす みらい)

『仕方ない』じゃない!
アンタのためでしょ!?

中島 陽太(なかじま はるた)

はいはい、わかったよ

珠來と二人で、
川沿いでのランニングを始めた。

中島 陽太(なかじま はるた)

ひい、はあ……ひい……。
ち、ちょっとタイム

来栖 珠來(くるす みらい)

何よ、もう息をあげてんの?

中島 陽太(なかじま はるた)

悪かったな。
こんなに長く走るなんて、
ひさしぶりなんだよ

来栖 珠來(くるす みらい)

この分じゃ、
マラソン大会すら
思いやられるわね

来栖 珠來(くるす みらい)

あっ、そうだ!
いい案があるわ

中島 陽太(なかじま はるた)

いい案?

来栖 珠來(くるす みらい)

水泳部とテニス部で、
合同練習をするのよ

中島 陽太(なかじま はるた)

なるほど!
女子の水着姿を拝みながら
練習ができるし、
可愛い苺香ちゃんもいるしな!

来栖 珠來(くるす みらい)

そういう意味じゃない!
アンタって
どこまで変態なのよ

中島 陽太(なかじま はるた)

水泳部と合同練習することに、
他に何の意味も持たないだろ

来栖 珠來(くるす みらい)

ア、アンタね……。
私は水泳によって肺活量が
鍛えられるんじゃないか?
って考えたのよ

中島 陽太(なかじま はるた)

そっか?
んじゃ、さっそく裕貴さんに
相談しに行こう!

来栖 珠來(くるす みらい)

さっきまでへばってたくせに、
急に元気になったわね……



テニス部に戻るなり、
部長である裕貴さんに
合同練習について相談した。

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

それ、いいかもしれないな。
俺の方から水泳部の部長に
話しておくよ

中島 陽太(なかじま はるた)

本当ですか!?
ありがとうございます!!

来栖 珠來(くるす みらい)

アンタ、むちゃくちゃ
嬉しそうね……

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

あ、先生に呼ばれてるんだった。
悪いけど、二人で水泳部に
話してきてくれないか?

来栖 珠來(くるす みらい)

はい、わかりました

中島 陽太(なかじま はるた)

よろこんで!

来栖 珠來(くるす みらい)

だから、なんでそんなに
嬉しそうなのよ……

女子水泳部員

なるほど、いい考えね。
テニス部と競って練習すれば、
部員の士気も高まるし

中島 陽太(なかじま はるた)

でしょ~?
やっぱりそう思いますか?

女子水泳部員

でも、アンタみたいに
スケベな男子がいると、
練習の邪魔になるのよねえ……

来栖 珠來(くるす みらい)

ばか、陽太が
デレデレしてるからよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

俺のせい?
珠來のせいじゃないのかぁ?

来栖 珠來(くるす みらい)

な・ん・で!
私のせいなのよ!!

日下部 苺香(くさかべ いちか)

苺香は賛成ですよ~

来栖 珠來(くるす みらい)

あ、日下部さん

日下部 苺香(くさかべ いちか)

陽太ちゃ……中島先輩は、
とても真面目な人ですよ。
邪魔なんかしませんですよ

女子水泳部員

うーん……
日下部さんがそこまで言うなら、
いいわよ

中島 陽太(なかじま はるた)

ありがとうございます!

中島 陽太(なかじま はるた)

フォローありがとな、
苺香ちゃん

日下部 苺香(くさかべ いちか)

そんなあ。
苺香は何もしてないですよ~

来栖 珠來(くるす みらい)

……むぅ

翌朝、学校新聞にテニス部と水泳部の
合同練習の件が報じられていた。

中島 陽太(なかじま はるた)

『異種部活動の合同練習で
選手強化』かあ……。
情報早いな、新聞部の奴ら

来栖 珠來(くるす みらい)

この間の一件のせいで、
テニス部が注目されてるみたいよ

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來との試合だって
まぐれで打ち返せたわけだし、
そんなに注目されても困るんだが

来栖 珠來(くるす みらい)

フフッ。
実は大した事なかった、なんて
書かれないように頑張りなさいよ

中島 陽太(なかじま はるた)

それはかっこ悪いな。
真面目に練習しないと……

来栖 珠來(くるす みらい)

アンタみたいな下手くそに
教えてくれる人なんて
いないでしょ?
だから、私が教えてあげるわよ

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來……お前って優しいな!

来栖 珠來(くるす みらい)

な、何言ってんのよ。
他の部員に迷惑をかけられたら
困るじゃない?

来栖 珠來(くるす みらい)

じゃあ、先に教室行ってるわよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

(転入したきたばかりの頃に
比べると、珠來とすごく
仲良くなったよなぁ)

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來にいい所を見せる為にも、
合同練習を頑張らないとな!)



放課後に行われた水泳部との合同練習は、
想像以上にキツイものだった。

中島 陽太(なかじま はるた)

はあー……疲れた



帰宅してから、すぐにベッドに倒れ込む。

中島 陽太(なかじま はるた)

このまま寝たいけど……
シャワー浴びないとな……



疲れきった身体を無理にでも起こし、
浴室へと向かう。


バスタブに湯をはらずに
シャワーだけを浴び終えると、
着替えの下着を手に取った。

中島 陽太(なかじま はるた)

洗い立てのモテパンツでも
履くか



モテパンツを履くと、華胡が姿を現した。

中島 陽太(なかじま はるた)

よお、華胡

華胡(かこ)

最近……珠來と……
うまくいっている、
ようじゃな……

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ!
パンツの力に頼らないで
頑張ってるぜ

華胡(かこ)

そうか……。
それは感心なこと、
じゃな……

中島 陽太(なかじま はるた)

なんか元気が無い気が
するけど、
どうしたんだ?

華胡(かこ)

気にするな……。
ちょっと熱っぽいだけ、
じゃ……

中島 陽太(なかじま はるた)

神様でも風邪なんてひくのか?

華胡(かこ)

いや、その……。
これは……

華胡(かこ)

これは……そう!
洗濯をした後、すぐにしまわずに
干したままにしておくからじゃぞ!

中島 陽太(なかじま はるた)

そうだったのか、
そりゃ悪いことしたな

華胡(かこ)

冗談に決まっておろう。
簡単に騙されて、
面白い奴じゃな

中島 陽太(なかじま はるた)

なんだよ、
やっぱり元気じゃないか。
心配して損した

華胡(かこ)

ふふん。
ちょっとやそっとの熱じゃ、
わらわはくたばらん

中島 陽太(なかじま はるた)

やれやれ。
とっととメシ食って、
早いとこ寝るかな

華胡(かこ)

ところで練習には、
苺香も参加しているようじゃな

中島 陽太(なかじま はるた)

ん? ああ。
今日は慌しすぎて、
話す時間が無かったけどな

華胡(かこ)

そうか……。
以前にも言ったと思うが、
やはり苺香はおぬしに
好意を抱いているようじゃ

中島 陽太(なかじま はるた)

でもそれって、
やっぱパンツの力のせいだと
思うんだよな

華胡(かこ)

いや、苺香の反応を
見る限り……
そうでは無いだろう

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ、マジでか?

華胡(かこ)

それから、
わらわの見立てによると
沙穂もおぬしに好意を
抱いているように感じる

中島 陽太(なかじま はるた)

沙穂先生まで!?
ま、まさかぁ~。
何を根拠に言ってるんだよ

華胡(かこ)

陽太が自分に憧れていると
聞いてから、恋愛対象として
意識し始めたようじゃ

中島 陽太(なかじま はるた)

見ただけで
わかっちゃうもんなのか?

華胡(かこ)

侮(あなど)るでない。
わらわは神様じゃぞ?

中島 陽太(なかじま はるた)

そ、そうか。
忘れてたけど、
華胡ってすごい奴だったんだよな

華胡(かこ)

忘れてたとはなんじゃ、
失礼な奴じゃな

中島 陽太(なかじま はるた)

いや~しかし、
苺香ちゃんと沙穂先生が
俺に惚れてるとはな~

中島 陽太(なかじま はるた)

みんなを彼女にして
ハーレムを作っちゃう
ってのもアリだよなぁ~

華胡(かこ)

たわけ!
また悪いクセが出たようじゃな。
おぬしの、そのフワフワとした所が
心配なのじゃ……

中島 陽太(なかじま はるた)

じ、冗談だって。
俺が一番気になるのは、
やっぱり珠來だしさ

華胡(かこ)

その気持ち、本物か?

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ。
俺の事をいつも気に掛けてくれて、
前よりもずっと近くに感じるんだ

華胡(かこ)

ならいいのじゃが……。
ここぞという時に、
珠來を裏切るような事は
絶対にしてはならぬぞ

中島 陽太(なかじま はるた)

大丈夫だよ。
何があっても、
珠來は俺が守る!

中島 陽太(なかじま はるた)

っつーわけで、俺は寝る。
おやすみ

華胡(かこ)

そうだと
いいんじゃが……

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