壁に貼られた学校新聞を見ると、
文化祭で珠來とテニスの試合をした時の
写真が載っていた。
おはよう、
スーパースター!
なんだなんだ、朝からどうした
ほら、学校新聞を見てみろよ
……ん?
壁に貼られた学校新聞を見ると、
文化祭で珠來とテニスの試合をした時の
写真が載っていた。
うわっ!
なんで俺と珠來が
載ってるんだ?
そりゃ~ただの素人のお前が、
テニス部のエースの
サーブを返したからな。
話題にもなるだろ
ははは……。
裕貴さんのサポートが無かったら
返せたかどうか
またまた、ご謙遜を~。
もういっそ、
テニス部に入っちゃったらどうだ?
それが、もう入ることに
決定したんだよ
えっ、いつの間に!?
私は反対したんだけど、
そのための試合だったから
仕方ないわね……
なんだよ、お前ら!
そんな面白い事してたなんて……。
俺にも教えろよ~
でも、陽太はまず
基礎体力が必要よ。
少し鍛えないといけないわね
俺は無視か……
鍛えるって言われても、
どうすれればいいんだよ
そんな基本的な事も
わかんないわけ?
仕方ないわね、
私がトレーニングしてあげるわ
お、お前ら、俺を無視して
青春しやがって……
バカヤロー!
優斗は走っていなくなってしまった。
あ、優斗……。
まあいいか、
ほっとけば機嫌直るし
──放課後。
アンタのために、
練習メニューを
作ってやったわよ
どれどれ
珠來から渡された紙を読んでみる。
川沿いの長距離コースを
ランニングだと?
いきなりキツくないか?
私も一緒に
走ってあげるんだから、
頑張りなさいよ!
仕方ないなあ……
『仕方ない』じゃない!
アンタのためでしょ!?
はいはい、わかったよ
珠來と二人で、
川沿いでのランニングを始めた。
ひい、はあ……ひい……。
ち、ちょっとタイム
何よ、もう息をあげてんの?
悪かったな。
こんなに長く走るなんて、
ひさしぶりなんだよ
この分じゃ、
マラソン大会すら
思いやられるわね
あっ、そうだ!
いい案があるわ
いい案?
水泳部とテニス部で、
合同練習をするのよ
なるほど!
女子の水着姿を拝みながら
練習ができるし、
可愛い苺香ちゃんもいるしな!
そういう意味じゃない!
アンタって
どこまで変態なのよ
水泳部と合同練習することに、
他に何の意味も持たないだろ
ア、アンタね……。
私は水泳によって肺活量が
鍛えられるんじゃないか?
って考えたのよ
そっか?
んじゃ、さっそく裕貴さんに
相談しに行こう!
さっきまでへばってたくせに、
急に元気になったわね……
テニス部に戻るなり、
部長である裕貴さんに
合同練習について相談した。
それ、いいかもしれないな。
俺の方から水泳部の部長に
話しておくよ
本当ですか!?
ありがとうございます!!
アンタ、むちゃくちゃ
嬉しそうね……
あ、先生に呼ばれてるんだった。
悪いけど、二人で水泳部に
話してきてくれないか?
はい、わかりました
よろこんで!
だから、なんでそんなに
嬉しそうなのよ……
なるほど、いい考えね。
テニス部と競って練習すれば、
部員の士気も高まるし
でしょ~?
やっぱりそう思いますか?
でも、アンタみたいに
スケベな男子がいると、
練習の邪魔になるのよねえ……
ばか、陽太が
デレデレしてるからよ!
俺のせい?
珠來のせいじゃないのかぁ?
な・ん・で!
私のせいなのよ!!
苺香は賛成ですよ~
あ、日下部さん
陽太ちゃ……中島先輩は、
とても真面目な人ですよ。
邪魔なんかしませんですよ
うーん……
日下部さんがそこまで言うなら、
いいわよ
ありがとうございます!
フォローありがとな、
苺香ちゃん
そんなあ。
苺香は何もしてないですよ~
……むぅ
翌朝、学校新聞にテニス部と水泳部の
合同練習の件が報じられていた。
『異種部活動の合同練習で
選手強化』かあ……。
情報早いな、新聞部の奴ら
この間の一件のせいで、
テニス部が注目されてるみたいよ
珠來との試合だって
まぐれで打ち返せたわけだし、
そんなに注目されても困るんだが
フフッ。
実は大した事なかった、なんて
書かれないように頑張りなさいよ
それはかっこ悪いな。
真面目に練習しないと……
アンタみたいな下手くそに
教えてくれる人なんて
いないでしょ?
だから、私が教えてあげるわよ
珠來……お前って優しいな!
な、何言ってんのよ。
他の部員に迷惑をかけられたら
困るじゃない?
じゃあ、先に教室行ってるわよ!
(転入したきたばかりの頃に
比べると、珠來とすごく
仲良くなったよなぁ)
(珠來にいい所を見せる為にも、
合同練習を頑張らないとな!)
放課後に行われた水泳部との合同練習は、
想像以上にキツイものだった。
はあー……疲れた
帰宅してから、すぐにベッドに倒れ込む。
このまま寝たいけど……
シャワー浴びないとな……
疲れきった身体を無理にでも起こし、
浴室へと向かう。
バスタブに湯をはらずに
シャワーだけを浴び終えると、
着替えの下着を手に取った。
洗い立てのモテパンツでも
履くか
モテパンツを履くと、華胡が姿を現した。
よお、華胡
最近……珠來と……
うまくいっている、
ようじゃな……
ああ!
パンツの力に頼らないで
頑張ってるぜ
そうか……。
それは感心なこと、
じゃな……
なんか元気が無い気が
するけど、
どうしたんだ?
気にするな……。
ちょっと熱っぽいだけ、
じゃ……
神様でも風邪なんてひくのか?
いや、その……。
これは……
これは……そう!
洗濯をした後、すぐにしまわずに
干したままにしておくからじゃぞ!
そうだったのか、
そりゃ悪いことしたな
冗談に決まっておろう。
簡単に騙されて、
面白い奴じゃな
なんだよ、
やっぱり元気じゃないか。
心配して損した
ふふん。
ちょっとやそっとの熱じゃ、
わらわはくたばらん
やれやれ。
とっととメシ食って、
早いとこ寝るかな
ところで練習には、
苺香も参加しているようじゃな
ん? ああ。
今日は慌しすぎて、
話す時間が無かったけどな
そうか……。
以前にも言ったと思うが、
やはり苺香はおぬしに
好意を抱いているようじゃ
でもそれって、
やっぱパンツの力のせいだと
思うんだよな
いや、苺香の反応を
見る限り……
そうでは無いだろう
えっ、マジでか?
それから、
わらわの見立てによると
沙穂もおぬしに好意を
抱いているように感じる
沙穂先生まで!?
ま、まさかぁ~。
何を根拠に言ってるんだよ
陽太が自分に憧れていると
聞いてから、恋愛対象として
意識し始めたようじゃ
見ただけで
わかっちゃうもんなのか?
侮(あなど)るでない。
わらわは神様じゃぞ?
そ、そうか。
忘れてたけど、
華胡ってすごい奴だったんだよな
忘れてたとはなんじゃ、
失礼な奴じゃな
いや~しかし、
苺香ちゃんと沙穂先生が
俺に惚れてるとはな~
みんなを彼女にして
ハーレムを作っちゃう
ってのもアリだよなぁ~
たわけ!
また悪いクセが出たようじゃな。
おぬしの、そのフワフワとした所が
心配なのじゃ……
じ、冗談だって。
俺が一番気になるのは、
やっぱり珠來だしさ
その気持ち、本物か?
ああ。
俺の事をいつも気に掛けてくれて、
前よりもずっと近くに感じるんだ
ならいいのじゃが……。
ここぞという時に、
珠來を裏切るような事は
絶対にしてはならぬぞ
大丈夫だよ。
何があっても、
珠來は俺が守る!
っつーわけで、俺は寝る。
おやすみ
そうだと
いいんじゃが……