今日は待ちに待った、文化祭の当日。


うちのクラスがやっているのは、
予定していた通りお化け屋敷だ。

中島 陽太(なかじま はるた)

う~ら~め~し~
やあぁ~

キャー!

こっち来ないでー!

中島 陽太(なかじま はるた)

ははは。
お化け役で人を怖がらせるのは
楽しいもんだな

来栖 珠來(くるす みらい)

女の子がキャーキャー言うのが
楽しいだけじゃないの?

中島 陽太(なかじま はるた)

ち、違う!
決してやましい
気持ちではない!

中島 陽太(なかじま はるた)

……あっ、
珠來の方にも誰か来るぞ

来栖 珠來(くるす みらい)

まかせなさい!
にゃあ~!

あははっ。
こんな可愛いお化けじゃ
怖くないよな

猫娘じゃん!
後で写真撮らせてね♪

来栖 珠來(くるす みらい)

うっ……
全然怖がられてない。
陽太に負けた気分だわ……

中島 陽太(なかじま はるた)

フハハハッ!
精進が足りないな

中島 陽太(なかじま はるた)

(ようやく休憩時間か。
そういえば、生徒会では
メイドコンテストをやるんだよな)

中島 陽太(なかじま はるた)

(沙穂先生のメイド姿、
楽しみだなぁ!
早く行かなきゃ!)

倉敷 沙穂(くらしき さほ)

あ、中島くん!
来てくれたんだね

中島 陽太(なかじま はるた)

あれ?
なんでコスプレ
してないんですか?

倉敷 沙穂(くらしき さほ)

司会をやるはずだった子が、
熱で来られなくなったのよ。
それで私が司会を
することになったの

中島 陽太(なかじま はるた)

そ、そうなんですか……

中島 陽太(なかじま はるた)

(楽しみにしてたのになぁ)

倉敷 沙穂(くらしき さほ)

それよりも聞いて!
今回はすごい参加者が
いるのよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

おおっ!
どんな人ですか?

倉敷 沙穂(くらしき さほ)

なんと!
本物のメイドさんが
参加するのよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

本物?
どこかのお屋敷で働いてる
ってことですか?

倉敷 沙穂(くらしき さほ)

そうみたいよ。
あっ、来た来た

参加者はこちらで
待機していれば良いと
聞きましたが……

中島 陽太(なかじま はるた)

あれ?
珠來の家のメイドさん
じゃないですか

み、珠來さまのお友達!
おひさしぶりでございます!

中島 陽太(なかじま はるた)

ひさしぶりです。
ていうか、なぜコンテストに
参加を……?

せっかくの休日ですから
珠來さまのご様子をうかがいに
参りました所、こちらの女性に
スカウトをされまして……

倉敷 沙穂(くらしき さほ)

メイド服を着てるから、
参加希望なのかと
思っちゃって!

すぐに誤解であることを
申し上げましたが、
聞く所によると珠來さまの
担任の方であるとのこと

日頃からお世話になっている
恩に報いるためにも、
参加を決意いたしました

中島 陽太(なかじま はるた)

そ、そうですか

中島 陽太(なかじま はるた)

(休日まで珠來を気に掛けて、
しかも仕事服を着て
出歩くなんて仕事熱心だな……)

華胡(かこ)

熱心というか、
ちょっと変わってるじゃろ

倉敷 沙穂(くらしき さほ)

来栖財閥のメイドさんが
参加するなんて、
盛り上がること間違いなしよね

中島 陽太(なかじま はるた)

きっと盛り上がりますよ。
それじゃ、友達と約束があるので
もう行きますね

倉敷 沙穂(くらしき さほ)

うん。
またね、中島くん

中島 陽太(なかじま はるた)

(そろそろ苺香ちゃんの
白雪姫が始まる時間だな)

中島 陽太(なかじま はるた)

(うわ!
すげ~人が並んでる)

キスシーンがあるから、
毎年人気だよね。
チケットが無いと入れないんだって

うそ~!

中島 陽太(なかじま はるた)

(げっ。
俺、チケットもらってないぞ)

中島 陽太(なかじま はるた)

(開演間近だから
苺香ちゃんと話せないし……。
仕方ない、あきらめるか)

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

よお、陽太!

中島 陽太(なかじま はるた)

あっ、裕貴さん。
テニス部の調子はどうですか?

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

大繁盛してるぜ。
暇ならお前も来いよ

中島 陽太(なかじま はるた)

んじゃ、行こうかな

中島 陽太(なかじま はるた)

(……で、
テニス部に来たのは
いいんだが)

裕貴さーん!
カッコイイ!

こっち向いて!

中島 陽太(なかじま はるた)

(裕貴さんって、
やっぱ女子に人気あるんだな。
なんか面白くないな……)

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

せっかくだから、
陽太もテニスやってけよ

中島 陽太(なかじま はるた)

へっ?
俺、テニスやったこと
ないですよ?

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

だいじょーぶ!
俺が教えてやるから

中島 陽太(なかじま はるた)

うーん……。
じゃあ、ちょっとだけ
やってみようかな

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

ほいきたっ!

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

おーい!
ちょっと誰か、
相手してくれ~!

はーい!

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

ほら、陽太。
ラケット持てよ

中島 陽太(なかじま はるた)

え、えーとっ!
どうやって持てば
いいんですか?

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

グリップを、こう握るんだ。
そんで足を開いて、
こう構えて……
ラケットをゆっくり振る!

中島 陽太(なかじま はるた)

こ、こうですか?

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

いい感じ!
そうそう、焦らずボールを
よく見て……

中島 陽太(なかじま はるた)

は、はい!

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

なかなか筋がいいな

中島 陽太(なかじま はるた)

そうですか?
裕貴さんの教え方が
上手いんですよ

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

んなことねーって。
なあ、テニス部に入れよ。
お前なら、すぐに上達するぜ

中島 陽太(なかじま はるた)

テニス部かぁ……。
それもいいかな

中島 陽太(なかじま はるた)

あっ、ヤバイ!
休憩時間が終わるんで、
教室に戻りますね!

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

ああ、またな



相変わらず、お化け屋敷は大盛況している。

来栖 珠來(くるす みらい)

はあー、疲れた……

中島 陽太(なかじま はるた)

戻って来てから
ずっと働き詰めだよ

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

お前ら、聞いたか?
来栖んとこのメイドさんが、
コンテストで優勝したらしいぜ

来栖 珠來(くるす みらい)

知ってるわ。
さっきLINEがきてた

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

優勝して良かったな。
こっちにも遊びに
来ればいいのに

来栖 珠來(くるす みらい)

なんでも地方紙からの
優勝インタビューや撮影で
来れなくなったって

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來に会うために
文化祭に来たんじゃ
なかったのか……?

来栖 珠來(くるす みらい)

あの人、押しに弱いのよ。
断り切れなかったのかもね

中島 陽太(なかじま はるた)

なんだかなあ……

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

ところでお前ら、
そろそろ休憩に入れよ。
後は俺がやっとくから

中島 陽太(なかじま はるた)

おっ、サンキュー

珠來と二人で、セットの裏に座った。

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來、まだどこも
見てないだろ?
どこか回ろうか?

来栖 珠來(くるす みらい)

ううん、いい。
このままで……

中島 陽太(なかじま はるた)

そ、そうか

中島 陽太(なかじま はるた)

(俺と二人きりで
居たいって事か?
……まさかな)

来栖 珠來(くるす みらい)

ねえ、陽太……

中島 陽太(なかじま はるた)

ん?

来栖 珠來(くるす みらい)

手伝ってくれて、
ありがとう

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ!?
れ、礼なんかいらないって!



その時、珠來の背後に
積み重なっているダンボールの箱が、
崩れそうになっているのが目に入った。

中島 陽太(なかじま はるた)

危ない、珠來!

来栖 珠來(くるす みらい)

えっ?



とっさに体が動き、珠來の上に覆い被さる。


すると、背中に次々と
ダンボールの箱が当たった。

中島 陽太(なかじま はるた)

いてて……

来栖 珠來(くるす みらい)

ちょっと、大丈夫!?

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、これくらい
なんてことないって。
……あっ

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來を守るためとはいえ、
押し倒しちまった!)

中島 陽太(なかじま はるた)

わ、悪い!

来栖 珠來(くるす みらい)

ううん……
別にいいけど……

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來のやつ、
真っ赤になって……
変に意識しちまうじゃないか)

来栖 珠來(くるす みらい)

ところで……
いつまでそうしてるの?

中島 陽太(なかじま はるた)

そうしてるって、何が?

来栖 珠來(くるす みらい)

えっと……だからっ!
二人でこんな風にしてるの、
誰かに見られちゃったら……っ!

中島 陽太(なかじま はるた)

わわっ、暴れるなって!


珠來が身をよじったせいで体勢が崩れて、
全身が密着してしまった。

来栖 珠來(くるす みらい)

!?

中島 陽太(なかじま はるた)

(うおわぁっ!!
俺の胸板に、珠來のおっぱいが
ふにふにと当たってる!!)

来栖 珠來(くるす みらい)

ちょ、ちょっと……!
足、どけて……!

中島 陽太(なかじま はるた)

足?

中島 陽太(なかじま はるた)

(ヤバイ!
珠來の太ももの間に
俺の足が入っちまってる!!)

中島 陽太(なかじま はるた)

(つうか顔も近いし、
体中のあちこちが密着して……
これはイカン!
学校でこれはヤバすぎる!)

中島 陽太(なかじま はるた)

す、すぐどけるから!
動くなよ!?

来栖 珠來(くるす みらい)

うん……



なんとか背中のダンボールをよけて、
珠來から離れて座った。

来栖 珠來(くるす みらい)

…………

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來が目を
合わせてくれない!
ううっ、怒ってるぞこれ)

華胡(かこ)

そうとも限らんぞ

中島 陽太(なかじま はるた)

(ふぇ?)

華胡(かこ)

落下物から自分を守ろうとして
起こった事故じゃ。
不愉快になることはなかろうて

中島 陽太(なかじま はるた)

(でも、珠來が何も話して
くれないじゃないか!)

華胡(かこ)

ならばおぬしから
話しかければ
良いだけのことじゃ

中島 陽太(なかじま はるた)

(俺から、か……。
よ、よしっ!)

中島 陽太(なかじま はるた)

さ、さっき裕貴さんに
誘われてさ……
テニス部に行ったんだ

来栖 珠來(くるす みらい)

成瀬先輩に?

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ。
んで、筋がいいから
入部しないかって言われてんだ

来栖 珠來(くるす みらい)

陽太が入部したって、
どうせ続かないわよ

中島 陽太(なかじま はるた)

おっ、言ってくれるな。
俺の腕も見てないくせに

来栖 珠來(くるす みらい)

だったら私と
テニスで勝負しなさいよ。
そうね……初心者だから
ハンデをあげるわ

来栖 珠來(くるす みらい)

私から一点でも
取ることができたら、
入部を認めてあげる

中島 陽太(なかじま はるた)

一点とは大きく出たな!
やってやろうじゃないか!

中島 陽太(なかじま はるた)

(……とは言ったものの、
かなり手ごわそうだぞ。
珠來は後輩をコーチできる
レベルだもんな)

華胡(かこ)

パンツの力を使えば
手加減してくれる
かもしれぬぞ

中島 陽太(なかじま はるた)

(いや、
自分の力でやってみるよ)

華胡(かこ)

ほう、それは感心じゃの。
頑張るのじゃぞ

珠來と勝負をするために、
テニスコートへ来た。


更衣室へ入った珠來は、
ものの五分で出てきた。

来栖 珠來(くるす みらい)

お待たせ。
行くわよ

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來……
テニスウェアには着替えてるけど、
スパッツを履いてるのか)

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

おっ!
お二人さん、どうしたんだ?

来栖 珠來(くるす みらい)

成瀬先輩。
ちょっとテニスコートを
借りますね

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

いいけど、
何を始めるんだ?

中島 陽太(なかじま はるた)

命を賭けた闘いです!!

来栖 珠來(くるす みらい)

命は賭けないわよ。
こいつが入部できる実力が
有るかを見るんです

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

おお~……。
なんか壮大なことになってんな。
頑張れよ、陽太

中島 陽太(なかじま はるた)

はいっ!!



珠來が俺にラケットを渡し、
自分もボールを持って構えた。

来栖 珠來(くるす みらい)

さあ、準備はいい?

中島 陽太(なかじま はるた)

どっからでも
かかってこい!



テニスの試合を始めたが、
一方的に珠來が有利な状態が続いた。

中島 陽太(なかじま はるた)

はあ、はあ……。
くそっ、どうして一本も
返せないんだ!

来栖 珠來(くるす みらい)

そんな調子じゃ、
一点取るなんて百年かかっても
無理なんじゃない?

中島 陽太(なかじま はるた)

ふん、すぐに取ってやるさ!

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

陽太!
さっきの感覚を思い出せ!

中島 陽太(なかじま はるた)

さっきの……?

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

来栖のボールをよく見て、
目を慣らすんだ!

中島 陽太(なかじま はるた)

(そうか!
珠來のスピードに慣れれば、
打ち返すくらいなら
出来るかもしれない)

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

……今だ!



裕貴さんの合図を受けて、
スマッシュを決めた。

来栖 珠來(くるす みらい)

えっ、ウソ!?

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

来栖から一本取るなんて
すごいじゃないか、陽太!

来栖 珠來(くるす みらい)

ちょっと待って!
今のはズルイでしょ!

中島 陽太(なかじま はるた)

何がズルイんだよ。
ちゃんと打ち返しただろ

来栖 珠來(くるす みらい)

だって成瀬先輩が
アシストしたじゃない!

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

来栖……。
陽太は初心者だぜ。
アドバイスくらい良いだろ?

来栖 珠來(くるす みらい)

うう~……

中島 陽太(なかじま はるた)

どうだ、一点取ったぞ。
約束通り、
入部を認めてくれるよな?

来栖 珠來(くるす みらい)

納得いかないけど、
仕方ないわね

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

良かったな、陽太。
ようこそテニス部へ!

中島 陽太(なかじま はるた)

はい!
これからよろしく
お願いします!

来栖 珠來(くるす みらい)

悔しいけど……
ちょっとカッコ良かったわよ

中島 陽太(なかじま はるた)

ん?
なんか言ったか?

来栖 珠來(くるす みらい)

別にっ!

日が暮れて、メインイベントの
キャンプファイヤーと
フォークダンスが始まった。

華胡(かこ)

焚き火を囲んで男女が
対(つい)になって踊るのか。
これは祈祷の儀式じゃな?

中島 陽太(なかじま はるた)

(儀式じゃねーよ。
女の子と楽しく踊って
親睦を深めるって感じだな)

華胡(かこ)

なるほどな。
それならば当然おぬしは、
珠來を誘うのであろう?

中島 陽太(なかじま はるた)

(えっ……?
あっ、ああ!
そうだな?)

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來を誘ったら、
なんて言われるだろう。
……ええい、イチかバチか!)

中島 陽太(なかじま はるた)

みっ、珠來!

来栖 珠來(くるす みらい)

なに?

中島 陽太(なかじま はるた)

俺と……

日下部 苺香(くさかべ いちか)

陽太ちゃーん!

中島 陽太(なかじま はるた)

へっ……苺香ちゃん?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

陽太ちゃんと踊りたくて、
ずっと探してたですよ。
苺香と踊って欲しいです!

中島 陽太(なかじま はるた)

え、えーと……

来栖 珠來(くるす みらい)

あら、良かったじゃない?
日下部さんと
踊ってあげれば?

中島 陽太(なかじま はるた)

何言ってんだよ。
俺は……

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

なんだよ、来栖。
陽太にフラれちゃったのか?

来栖 珠來(くるす みらい)

ふ、フラれてなんかいません!
もともと陽太と踊るつもり
なんてありませんから!

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

ふーん。
……じゃ、俺と踊るか?

中島 陽太(なかじま はるた)

ちょ、ちょっと待っ!!??

日下部 苺香(くさかべ いちか)

陽太ちゃん、
早く踊ろうです

中島 陽太(なかじま はるた)

(おい、華胡!
どうすりゃいいんだ!?)

華胡(かこ)

それくらい自分で考えろ。
珠來から一本取った勇ましさは
どこへ行ったんじゃ?

中島 陽太(なかじま はるた)

(わかったよ!
自分で考えれば
いいんだろ!)

中島 陽太(なかじま はるた)

あの、裕貴さん!

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

なんだ?

中島 陽太(なかじま はるた)

俺たち4人で、
交互に踊りませんか?

成瀬 裕貴(なるせ ひろたか)

俺は別にいいけど。
そっちの子は、
それでいいのか?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

苺香は大丈夫です!
それじゃ、踊ろうです!

来栖 珠來(くるす みらい)

陽太……。
アンタって、要領いいのね

中島 陽太(なかじま はるた)

も、文句あんのか?

来栖 珠來(くるす みらい)

いいけどね、別に……

華胡(かこ)

陽太、お前……

中島 陽太(なかじま はるた)

(なんだよ!
華胡まで文句つける気か?!)

華胡(かこ)

文句は無い。
ただ呆れてるだけじゃ

中島 陽太(なかじま はるた)

(チクショー!
俺だって、本当は……)



俺、珠來、裕貴さん、苺香ちゃんと
交互に踊った。

中島 陽太(なかじま はるた)

(これはこれで楽しいが、
しかし……)

華胡(かこ)

もうすぐ最後の曲が始まるぞ。
また4人で踊るのか?

中島 陽太(なかじま はるた)

…………

日下部 苺香(くさかべ いちか)

陽太ちゃんっ。
最後は二人で
踊りましょうですっ

中島 陽太(なかじま はるた)

ごめん、苺香ちゃん。
俺……珠來と
踊ろうと思ってたんだ

日下部 苺香(くさかべ いちか)

そう、ですか……。
それなら、仕方ないです



苺香ちゃんは、寂しげな顔をして
向こうへ行ってしまった。

来栖 珠來(くるす みらい)

日下部さん、
どうしたの?

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來と踊りたいから、
苺香ちゃんからの誘いを
断ったんだ

来栖 珠來(くるす みらい)

えっ……

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來……。
最後は俺と二人で
踊ってくれないか?

来栖 珠來(くるす みらい)

仕方ないわね、
踊ってあげるわよ



恥ずかしそうに手を握る珠來が、
いつも以上に可愛かった。

中島 陽太(なかじま はるた)

ありがとう、珠來

来栖 珠來(くるす みらい)

いいの。
本当は私も、
アンタと踊りたかったから

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ?

来栖 珠來(くるす みらい)

な、なんでもない!


照れ隠しをするかのように、
珠來がくるりとターンする。

中島 陽太(なかじま はるた)

ところでさ……。
ごめんな、
俺がテニス部に
入ることになって

来栖 珠來(くるす みらい)

なんで謝るのよ?

中島 陽太(なかじま はるた)

だって珠來は、
俺に入って欲しく
なかったんだろ?

来栖 珠來(くるす みらい)

そんなこと
言ってないじゃない

中島 陽太(なかじま はるた)

じゃあなんで
テニスで勝負までして
入部を反対したんだ?

来栖 珠來(くるす みらい)

もしアンタが周りの部員に
ついて行けなかったら、
辛くて辞めちゃうでしょ?

来栖 珠來(くるす みらい)

だから、
どの程度の実力が有るかを
試しただけよ

中島 陽太(なかじま はるた)

そうか……。
俺のことを
考えてくれたのか……

来栖 珠來(くるす みらい)

そ、そんなんじゃ無いわよ!
簡単に入ったり出たり
されたら困るからっ……

中島 陽太(なかじま はるた)

はいはいっ!
テニス部のお荷物に
ならないように頑張るよ!



こうしてフォークダンスは終わり、
文化祭は幕を閉じた。


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