あれから、珠來と話さない日々が続いた。


珠來の、足の怪我のこと……。


それを俺が、苺香ちゃんに話したのだと
誤解されたままだ。

中島 陽太(なかじま はるた)

はああぁ~……

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

よお、どうした!
デッカイため息なんか
ついちゃって

中島 陽太(なかじま はるた)

……ん?
いやあさ、珠來ともう何日も
話してないな~と思ってな

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

いいじゃねえか、
お前のファンは
いっぱいいるんだし

中島 陽太(なかじま はるた)

マジメに聞いてくれよ……

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

でも、いくらモテ期が
きてるお前でも、
こいつにはかなわないだろうな



そう言って優斗は、一枚の写真を出した。

中島 陽太(なかじま はるた)

誰だ……?
このイケメンは

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

3年生の成瀬 裕貴
(なるせ ひろたか)先輩だよ。
見た目はちょっとチャラいが、
生徒会長なんだぜ

中島 陽太(なかじま はるた)

ふうーん……

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

生徒会の顧問は沙穂先生だろ?
成瀬会長が狙ってんじゃねえか
ってみんなヒヤヒヤしてんだよ

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、そう

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

なんだ、敵じゃねぇってか?

中島 陽太(なかじま はるた)

ちがうっての。
今は珠來のことで悩んでるから
それどころじゃねぇんだよ。
はあ~……

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

悩み多き青年だなあ!
俺なんか、来栖に存在すら
認識されてねーぜ!

中島 陽太(なかじま はるた)

笑顔で言うことかよ、それ……

中島 陽太(なかじま はるた)

(今日もボーッとしてる内に
放課後になっちまったな)

中島 陽太(なかじま はるた)

(さて、何も用事が無いし
帰るか……)

中島 陽太(なかじま はるた)

んっ……?



玄関を出ると、鼻の頭に水滴が落ちた。

華胡(かこ)

むう、来るの……

中島 陽太(なかじま はるた)

何がだよ?

華胡に聞いた直後に、
頭上に大雨が降ってきた。

中島 陽太(なかじま はるた)

ぶわあっ、冷てえーっ!
玄関に戻るぞおーっ!

華胡(かこ)

だから来ると言ったではないか。
……大雨が

中島 陽太(なかじま はるた)

そういうことは早く言えよ!
濡れちゃったじゃないか!

華胡(かこ)

傘は持っておらんのか?

中島 陽太(なかじま はるた)

無いな。
折り畳み傘も持ってない。
こりゃあ、雨がやむまで
待つしかなさそうだな……

華胡(かこ)

なら、教室に戻るのじゃ。
優斗の机に入っていた
漫画本を読もうではないか

中島 陽太(なかじま はるた)

めざといな。
いつの間にチェックしてたんだ

教室に戻ると、
珠來が教室の隅に一人でいた。

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來?
一人で何やってんだ?

来栖 珠來(くるす みらい)

いちいちアンタに
報告しなきゃいけない
義務でもあるわけ?

中島 陽太(なかじま はるた)

そうツンツンするなよ。
この間のこと、
まだ怒ってるのか?

来栖 珠來(くるす みらい)

まだ?
陽太にとっては
私の怪我の話なんて
その程度のことなの?

中島 陽太(なかじま はるた)

いや、そういう意味で
言ったんじゃないんだ。
……ごめん

来栖 珠來(くるす みらい)

私の顔を見れば、
謝ってばかりね

中島 陽太(なかじま はるた)

(だって、
これ以上なんて言ったら
いいんだよ……)

華胡(かこ)

誠意を見せる必要が
あるようじゃの

中島 陽太(なかじま はるた)

(そう言っても、
誠意なんてどうやって
見せるんだ?)

華胡(かこ)

情けない奴じゃのう。
ここはパンツの力で
乗り切るしかないようじゃな

中島 陽太(なかじま はるた)

(情けなくて悪かったな!)

華胡(かこ)

口を閉じよ

中島 陽太(なかじま はるた)

(……ゆ、許す)

華胡(かこ)

あん?

来栖 珠來(くるす みらい)

ちょっと。
謝る気があるなら、
これ手伝いなさいよ

中島 陽太(なかじま はるた)

(おっ、さっそく
チャンスがきた!)

来栖 珠來(くるす みらい)

……な、なに?
私、変なこと言った?

中島 陽太(なかじま はるた)

いやいや。
……で、俺は
何をすればいいんだ?

来栖 珠來(くるす みらい)

学級委員の仕事を手伝ってよ。
この前、文化祭の出し物について
アンケートを取ったでしょ?
その結果をまとめるの

中島 陽太(なかじま はるた)

そう言えばこの前、
みんな提出してたなぁ……

来栖 珠來(くるす みらい)

アンタはなんて書いたの?

中島 陽太(なかじま はるた)

俺?
究極のメニュー VS
至高のメニューで料理対決
って書いたぞ

来栖 珠來(くるす みらい)

そ、そう……。
これアンタだったの

中島 陽太(なかじま はるた)

何か問題でもあったか?

来栖 珠來(くるす みらい)

別に……



それから俺は珠來と机をくっつけて、
アンケートの集計や
予算に関する書類の整理を手伝った。

中島 陽太(なかじま はるた)

なあ、珠來……

来栖 珠來(くるす みらい)

……何よ?

中島 陽太(なかじま はるた)

この前は、ごめん

来栖 珠來(くるす みらい)

…………

来栖 珠來(くるす みらい)

……ねえ。
どうして日下部さんに
足の怪我のことを言ったの?

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來は誤解してるみたいだけど、
怪我の話を最初にしたのは
苺香ちゃんなんだ

来栖 珠來(くるす みらい)

そうだったんだ……。
日下部さん……
私のこと、嫌いなのかな

中島 陽太(なかじま はるた)

違う、そうじゃない!
きっと苺香ちゃんも
珠來を心配してるんだよ

来栖 珠來(くるす みらい)

……そう。
日下部さんのことは、
本人に聞かなきゃわかんないから
別にいい

来栖 珠來(くるす みらい)

でも、アンタが陰で私のことを
話してたんじゃないかと思って
ショックだったの

中島 陽太(なかじま はるた)

確かに、話してたのは認める。
だけど面白がって
話したわけじゃないんだ

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來に何かあったのかと思って、
不安だったんだよ

来栖 珠來(くるす みらい)

…………



それから珠來は黙ってしまい、
ただじっと文化祭のプリントを見ていた。


そうして少し経ってから、
珠來が一言つぶやいた。

来栖 珠來(くるす みらい)

悪気がなかったなら、
別にいいわよ……

中島 陽太(なかじま はるた)

許してくれるのか!?



驚いて立ち上がり、
プリントを床にばら撒いてしまった。

来栖 珠來(くるす みらい)

あーあ……
何やってるのよ、もぉー

中島 陽太(なかじま はるた)

わ、悪い



珠來がプリントを拾うのに続き、
俺も拾おうとしてしゃがみ込むと、
手と手が触れてしまった。

来栖 珠來(くるす みらい)

あっ……

中島 陽太(なかじま はるた)

(顔が近い……)



目と目が合い、お互いに
恥ずかしくなって横を向く。

来栖 珠來(くるす みらい)

あれから少しだけ、
アンタのこと考えてた……

中島 陽太(なかじま はるた)

俺のことって……なんだよ?

来栖 珠來(くるす みらい)

私が、島にいた頃……。
男の子とケンカをして、
アンタが加勢してくれたことが
あったじゃない

中島 陽太(なかじま はるた)

そんなこともあったな

来栖 珠來(くるす みらい)

でもボロボロに負けちゃって、
私は大泣きしちゃったのよね……

来栖 珠來(くるす みらい)

そんな姿をアンタに
見られたのが恥ずかしくて、
大切なことを言えなかったの

中島 陽太(なかじま はるた)

大切なことって……?

来栖 珠來(くるす みらい)

助けに入ってくれて、
ありがとう

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ!
い、いや、別に!
気にすんなって

中島 陽太(なかじま はるた)

(驚いた……。
パンツの力を使ってないのに、
珠來がこんなに素直になるとは)

来栖 珠來(くるす みらい)

良かった、ようやく言えた。
なんだかスッキリしたわ



そう言った珠來の表情は、
とてもホッとしたような感じだった。


……と思ったのも束の間、
プリントを拾おうとして
ずっと手が触れ合っていたことに、
二人で同時に気づく。

中島 陽太(なかじま はるた)

ご、ごめん!

来栖 珠來(くるす みらい)

べ、別にいいわよ



恥ずかしくなって、珠來と離れてしまった。

中島 陽太(なかじま はるた)

(うっ……気まずい。
何か喋らないと)

中島 陽太(なかじま はるた)

あのさ、その……
足、怪我してるんだっけ?

来栖 珠來(くるす みらい)

……なんでまた、
その話をするのよ

中島 陽太(なかじま はるた)

(マズイ……!
珠來がまた不機嫌になったぞ!)

来栖 珠來(くるす みらい)

本当は私が
怪我なんかしてないこと
知ってるんでしょ?

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ……どういう意味だ?

来栖 珠來(くるす みらい)

とぼけないでよ!
前に更衣室の前で、
スコートの中を見たじゃない。
その時に足も見たんでしょ?

中島 陽太(なかじま はるた)

更衣室の前っていうと……
ああ、ぶつかった時の話か

中島 陽太(なかじま はるた)

(なぜかあの時だけ
珠來はテニスウェアを着ていた。
そんで俺はパンツをじっくり
見ちゃったんだよな)

来栖 珠來(くるす みらい)

陽太が思っている通り……
私、怪我なんかしてないのよ

中島 陽太(なかじま はるた)

そうだったのか!?

来栖 珠來(くるす みらい)

白々しいわね……。
本当は見たんでしょ?
足に傷なんか無いって
知ってるんでしょ!?

中島 陽太(なかじま はるた)

えーと……

中島 陽太(なかじま はるた)

たしかに色が白くて、
キレイな足だったような……。
それに、肌もすべすべして……

来栖 珠來(くるす みらい)

いやっ……!

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ、イヤ?

来栖 珠來(くるす みらい)

アンタには、
そういう風に見えてたわけね……

中島 陽太(なかじま はるた)

(なんだ?
珠來の様子がおかしいぞ?)

中島 陽太(なかじま はるた)

ちょっと大げさな
言い方をしたのは謝るけど、
何もお前を襲おうと
思ったわけじゃなくて……



珠來は何かを思い出したように、
顔を真っ青にした。

来栖 珠來(くるす みらい)

来ないでー!!



泣きながらそう叫ぶ珠來に、
俺はなんと声をかければ良いのか
わからずにいた。

中島 陽太(なかじま はるた)

(一体どうしたんだ?
そんなに過剰に反応しなくても
いいのに……)

中島 陽太(なかじま はるた)

(おい、華胡。
俺……何かまずいことを
言ったか?)

華胡(かこ)

お前は悪くはないのだ……。
それは珠來もわかっている
はずじゃ……

中島 陽太(なかじま はるた)

(どういう意味だ?)

華胡(かこ)

……いや、なんでもない。
とにかく、珠來が落ち着くまで
待つのじゃ

中島 陽太(なかじま はるた)

(そ、そうか……)



珠來に近寄らず、
そして声もかけずにじっとしていると……
珠來の顔に、
だんだん血の気が戻ってきた。

来栖 珠來(くるす みらい)

も、もうこんな時間……。
そろそろ部活に
行かなくちゃ……

中島 陽太(なかじま はるた)

おい……大丈夫か?

来栖 珠來(くるす みらい)

何言ってんの?
私はなんともないわ。
今から部活に行くから、
仕事を終わらせておいてくれる?

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ、俺がかよ?
これって学級委員の
仕事じゃないのか?

来栖 珠來(くるす みらい)

終わったら帰っていいわよ。
頼んだわね!



珠來は腕時計を気にしながら、
足早に教室を出て行ってしまった。

中島 陽太(なかじま はるた)

……ったく、仕方ねえなあ



その後、一人で黙々と作業を続け……
終わった頃には、
時計の針は6時半を指していた。

中島 陽太(なかじま はるた)

すっかり暗くなっちまったな

華胡(かこ)

雨はまだやんでいない
ようじゃのう

中島 陽太(なかじま はるた)

困ったな……

華胡(かこ)

この調子じゃと朝まで
雨は上がらんじゃろ。
ここで一晩過ごしてはどうじゃ?

中島 陽太(なかじま はるた)

そうもいかねえだろ。
とりあえず玄関まで行くか


下駄箱の所まで行くと、
部活が終わったらしく珠來が立っていた。

来栖 珠來(くるす みらい)

あっ、陽太……

中島 陽太(なかじま はるた)

仕事なら終わらせたから、
安心しろよ

来栖 珠來(くるす みらい)

そうじゃなくて、
アンタの下駄箱を見たら
まだ靴が有ったから……

中島 陽太(なかじま はるた)

それがどうしたってんだ?

来栖 珠來(くるす みらい)

だからっ!
傘……持ってないんでしょ。
待っててやったんだから、
入りなさいよ


珠來はそう言いながら、傘を広げた。

中島 陽太(なかじま はるた)

ええっ?
どうしちゃったんだ?

来栖 珠來(くるす みらい)

仕事を押し付けちゃったから、
悪いかなって思っただけよ。
入るの? 入らないの!?

中島 陽太(なかじま はるた)

は、入らせて
いただきます……



頭を少しさげて傘に入ると、
珠來が照れくさそうにうつむいた。

来栖 珠來(くるす みらい)

…………

中島 陽太(なかじま はるた)

……ありがとな

来栖 珠來(くるす みらい)

天気予報くらい、
ちゃんとチェックしなさいよね

中島 陽太(なかじま はるた)

はいはい

中島 陽太(なかじま はるた)

(これはきっと、
意地っ張りな珠來なりの
『どういたしまして』だろうな)



校門まで行くと、珠來がキョロキョロと
辺りを見回し始めた。

来栖 珠來(くるす みらい)

迎えの車が遅いわ!
何やってるのかしら?

中島 陽太(なかじま はるた)

お前は家でも
そうやってカリカリしてるのか?

来栖 珠來(くるす みらい)

カリカリなんか
してないでしょ?

中島 陽太(なかじま はるた)

そんな顔で運転手さんに会ったら
ビックリされるぞ

来栖 珠來(くるす みらい)

だって!
時間通りに来ない方が
悪いんじゃない!

来栖 珠來(くるす みらい)

……もう、そんなの
どっちだっていいわ。
しばらく待ちましょう

中島 陽太(なかじま はるた)

(しばらく待つ?
俺も一緒に待つのか??)



よくわからない内に立ち続けていると、
雨が強くなってきた。

中島 陽太(なかじま はるた)

(これじゃあ、
珠來の肩が濡れちまうな)



それとなく、傘を珠來の方にずらしてみる。

中島 陽太(なかじま はるた)

(よし、これで珠來の肩に
雨はかからないな)


少ししてから、珠來がハッとした様子で
自分の肩と俺の顔を見比べた。

来栖 珠來(くるす みらい)

何やってんのよ。
アンタが濡れちゃうじゃない、
このバカ!

中島 陽太(なかじま はるた)

んなっ……!
バカとはなんだ、バカとは!



キキーッ!


目の前に、いつもの高級車が止まった。

来栖 珠來(くるす みらい)

ようやく来たわね……



車のドアが開くと、
珠來は傘を閉じて中に乗り込んでしまった。

中島 陽太(なかじま はるた)

(傘に入れてくれたんだから、
そのまま貸してくれても
いいのになあ……)

中島 陽太(なかじま はるた)

(まあいいか、走って帰ろう)



傘の代わりにカバンを頭に乗せて
走り出そうとしたら、
珠來が俺に向かって叫んだ。

来栖 珠來(くるす みらい)

何やってんのよ!
送って行くから、乗りなさい!

中島 陽太(なかじま はるた)

み、珠來……。
お前、熱でもあるのか?
部活で頭を打ったとか?

来栖 珠來(くるす みらい)

わけわかんないこと
言ってると、
車でひくわよ……

中島 陽太(なかじま はるた)

す、すみません。
ありがたく乗らせて
いただきます

来栖 珠來(くるす みらい)

そう、それでいいの。
早く乗って!

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來が楽しそうに
見える気がするが、
気のせいか……?)

中島 陽太(なかじま はるた)

(さすが高級車。
座席のシートがふかふかで
座り心地がいいんだが……
逆に落ち着かないな)



一人でソワソワしていると、
珠來が運転席の方へ身を乗り出した。

来栖 珠來(くるす みらい)

家まで急いで

中島 陽太(なかじま はるた)

いや……。
俺んち逆なんだけど

来栖 珠來(くるす みらい)

そんなに濡れてるんじゃ、
風邪ひくでしょ。
まったく、バカなんだから!

中島 陽太(なかじま はるた)

バカは風邪ひかないって
迷信があるんだが

来栖 珠來(くるす みらい)

そう言われれば、そうね。
……フフッ



笑ってる珠來がかわいくて、
一瞬ドキッとしてしまう。


そうしてから車は走り出し、
運転手さんがおもむろに話し始めた。

運転手

お嬢様のご友人ですか?

来栖 珠來(くるす みらい)

まあ、そんなとこね

中島 陽太(なかじま はるた)

(おっ、否定しないのか)

運転手

他の方をお乗せになるなんて、
初めてですね。
よほど仲がよろしいのですね

来栖 珠來(くるす みらい)

別に仲なんて良くないわよ。
こいつが変態で、
いつも困らされてるんだから

中島 陽太(なかじま はるた)

ちょっ……お前!
誤解を招くような
言い方すんなよ!

来栖 珠來(くるす みらい)

誤解じゃないでしょ?
変態じゃなかったら、
なんだっていうのよ

中島 陽太(なかじま はるた)

俺は優斗に
スーパーアイドルと
呼ばれたことがあるぞ

来栖 珠來(くるす みらい)

最近は変態の呼び名も
変わってきたのね

中島 陽太(なかじま はるた)

だーかーらー、違うって!
ヘンタイヘンタイと連呼するな!

来栖 珠來(くるす みらい)

フフッ、じゃあこれからは
もっとマジメになることね!

運転手

お二人とも本当に
気心が知れているのですね

来栖 珠來(くるす みらい)

どこが!!

中島 陽太(なかじま はるた)

…………



そんなことばかり話していると、
豪華な家の前で車が止まった。

運転手

着きましたよ

中島 陽太(なかじま はるた)

おー! すごい家だな。
お前、超お嬢様になったんだな……
本当すげえなあ、珠來は

来栖 珠來(くるす みらい)

私なんかすごくも
なんともないわよ。
パパがすごいだけ



珠來に招かれて、重厚な門をくぐった。

中島 陽太(なかじま はるた)

(まさか、珠來の部屋で
二人っきりに
なったりして……!)



この後の展開を予想して、
期待に胸を膨らませたのだった。


pagetop