テニスコートに来たのはいいが、
そこに珠來の姿は無かった。

中島 陽太(なかじま はるた)

(まだ着替えてるのか?
ここで少し待ってみるか)



しばらく待ってみたはいいものの、
一向に珠來が出てくる様子は無い。

華胡(かこ)

どうしたのじゃろうな、珠來は

中島 陽太(なかじま はるた)

なあ、華胡……。
俺、思うんだけどさ

華胡(かこ)

なんじゃ?

中島 陽太(なかじま はるた)

これだけ待っても
来ないってことは、
もしかして更衣室で
倒れてるんじゃないのか?

華胡(かこ)

唐突に何を言い出すんじゃ。
仮に倒れていたとしても、
周りに誰かいるじゃろう

中島 陽太(なかじま はるた)

いや、珠來が助けを
呼んでいる気がする!
俺は女子更衣室に行くぞおおぉ!!

華胡(かこ)

コラ、待て!
理由をつけて覗きに行こうと
しているだけではないのか!?



俺は華胡が騒ぐのを無視して、
意気揚々と女子更衣室へ向かった。

中島 陽太(なかじま はるた)

おっ、あったぞ女子更衣室が。
今頃、あそこで珠來が
倒れてるかも!(下着姿で!)

華胡(かこ)

よせと言うておるのが
わからんのか!
おぬしは、すぐに下半身で
ものを考えおって!



女子更衣室のドアノブに手をかけようとした、
その時……。

キャッ!

中島 陽太(なかじま はるた)

いてて……



更衣室から出てきた誰かと鉢合わせして、
尻餅をついてしまった。


相手の顔を見ようとして顔を上げると、
視界に白い物が飛び込んできた。

中島 陽太(なかじま はるた)

あれ?
この白い物は……?


よくよく見てみると、
白い物の正体はなんと……


テニスウェア姿の珠來が履いている
パンツだった。

中島 陽太(なかじま はるた)

なんだ、この白い物は?

来栖 珠來(くるす みらい)

ばかぁっ!
変なとこに顔押し付けて
くんじゃないわよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

いやいや、この白い物が
なんなのかを確かめないと……

来栖 珠來(くるす みらい)

ド近眼でもあるまいし、
そこまで近づかなくたって
わかるでしょ?
それは私のパンツよ!

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ、なんだって?
よく聞こえなかったんだが

来栖 珠來(くるす みらい)

だ、だから……それは、
私のパ、パン……うぅ~っ!


恥ずかしがる珠來を
調子に乗って観察していたら、
顔面に蹴りをくらった。

来栖 珠來(くるす みらい)

とっとと離れなさいよ!
このバカッ!
ヘンタイッ!

中島 陽太(なかじま はるた)

いてて……鼻血が……

来栖 珠來(くるす みらい)

スケベなことばっか
考えてるからでしょ!?

中島 陽太(なかじま はるた)

いや、これは今
お前が蹴ったせいで出た鼻血だ

来栖 珠來(くるす みらい)

どっちにしたって、
そんなの自業自得じゃない!

中島 陽太(なかじま はるた)

そんなことよりさ。
本当にさっきのがパンツなのか、
確認できなかったんだ。
だからもう一回見せてくれ

珠來は俺に10往復ビンタをかますと、
更衣室の中へ戻ってしまった。

中島 陽太(なかじま はるた)

いって~……
ちょっと悪ノリしすぎたかな

華胡(かこ)

まさか本当に、
あんなに堂々と見るとは
思っていなかったぞ

中島 陽太(なかじま はるた)

あれは俗に言う、
事故というやつだ

華胡(かこ)

故意にやっていたから
事件ではないのか?

中島 陽太(なかじま はるた)

するどいな。
まあ悪ノリしたのは確かだし、
珠來に謝っておいた方が
良さそうだな……

華胡(かこ)

てにすこーと、とやらに
先回りしたらどうじゃ?

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、そうするか……


テニスコートで部員達の練習を眺めていると、
珠來がやって来るのが見えた。

中島 陽太(なかじま はるた)

(おっ、珠來だ)

中島 陽太(なかじま はるた)

(……あれ?
テニスウェアから
制服に着替えてるぞ)

中島 陽太(なかじま はるた)

(なあ、華胡。
なんで珠來が着替えたのか
わかるか?)

華胡(かこ)

わらわが知っているはずが
なかろう

中島 陽太(なかじま はるた)

(だよな……)



それから珠來は、コートに入って
後輩の指導やマネージャーのようなことを
始めた。

来栖 珠來(くるす みらい)

そこよ!
ボールをよく見て!



珠來の指導を受けている後輩が、
さっきよりも自然に動いているように見える。

来栖 珠來(くるす みらい)

フォームが良くなったじゃない

女子テニス部員

ありがとうございます、
来栖先輩!

中島 陽太(なかじま はるた)

(お姉さんぶって、
後輩の頭なんか撫でちゃって
まあ……)

中島 陽太(なかじま はるた)

(昔はただ気が強いだけって
感じだったのに、
ずいぶんと女らしく
なったんだなあ)

華胡(かこ)

ボーッと見とらんで、
珠來に話しかければ
いいじゃないか

中島 陽太(なかじま はるた)

(うーん。
邪魔するのも悪い気がするし、
このまま帰るよ)

華胡(かこ)

うむ……そうか


帰り道を歩いていると、
優斗の後ろ姿が目に入った。

中島 陽太(なかじま はるた)

おーい、優斗!

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

おっ、陽太じゃねえか

中島 陽太(なかじま はるた)

新聞部、
いま終わったとこか?

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

まあな。
お前は何やってたんだ?

中島 陽太(なかじま はるた)

俺か?
テニス部の練習を見てたんだよ

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

へえー、
初日からさっそく覗きか

中島 陽太(なかじま はるた)

ばか、そんなんじゃねえって。
……あ、そういえば
聞きたいことがあったんだ

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

どうした?

中島 陽太(なかじま はるた)

珠來のやつ、
なんで自分は練習しないで
マネージャーみたいなこと
やってたのかなあって

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

あー、あれはな……
数ヶ月前に足を怪我した
せいらしいぜ

中島 陽太(なかじま はるた)

……足に怪我?

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

それ以来、テニス部では
サポート役に専念するように
なったみたいだな

中島 陽太(なかじま はるた)

なんでそんなに詳しいんだ?

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

そんなの、女子の会話を
盗み聞きしたに決まってんだろ!

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、そ……

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

そう言えば、その時からだな。
来栖が黒いストッキングを
履き始めたのはさ

中島 陽太(なかじま はるた)

足の怪我を隠すためにか?

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

ああ、たぶんな。
キレイな足だったのに、
もったいねえ

中島 陽太(なかじま はるた)

へえ……

華胡(かこ)

でもさっきは、てにすうぇあ
とやらに着替えて
足を出していたではないか

中島 陽太(なかじま はるた)

(あっ、そういえばそうだ!)

中島 陽太(なかじま はるた)

(転んだ時にスコートから
白い足が見えてたよなあ。
黒いストッキングは
履いてなかったぞ)

堀川 優斗(ほりかわ ゆうと)

んじゃ、俺こっちだから。
またな!

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、ああ……。
また明日

中島 陽太(なかじま はるた)

(珠來……。
何があったんだろう)



優斗と別れて一人で歩いていると、
後ろから声を掛けられた。

日下部 苺香(くさかべ いちか)

陽太ちゃーん!

中島 陽太(なかじま はるた)

(あれ?
向こうから走ってくるあの子、
プールでも見たような……)

中島 陽太(なかじま はるた)

えっと……。
どうして俺のこと知ってるの?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

やっぱり陽太ちゃんですね?
プールで珠來先輩と一緒の所を
見たですけど、自信が無くって

中島 陽太(なかじま はるた)

(この子、誰だっけ?
うーん、もう少しで
思い出せそうだけど……)

日下部 苺香(くさかべ いちか)

覚えてませんか?
同じ島の出身の、
日下部苺香です!

中島 陽太(なかじま はるた)

あっ……苺香ちゃんか!
ひさしぶりだな!

日下部 苺香(くさかべ いちか)

優斗先輩から聞いたですけど、
こっちに来るって
本当だったですね!

中島 陽太(なかじま はるた)

昨日到着したばっかなんだよ

日下部 苺香(くさかべ いちか)

そうだったですか!
また会えて嬉しいですっ

中島 陽太(なかじま はるた)

ありがとう、苺香ちゃん。
俺も嬉しいよ

中島 陽太(なかじま はるた)

(小動物的なかわいさだな。
昔からかわいかったもんな~。
珠來とはまたちがった魅力だ)

中島 陽太(なかじま はるた)

ところで苺香ちゃんも
帰るところか?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

はい、水泳部が終わったのでっ

中島 陽太(なかじま はるた)

へえ~、苺香ちゃんは
水泳部だったのか

中島 陽太(なかじま はるた)

(さっきプールへ行ったときは
筋肉ムキムキ女しか
見れなかったけど)

日下部 苺香(くさかべ いちか)

苺香の家も、こっちですよ。
途中まで一緒に帰りませんか?

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、そうしよっか

中島 陽太(なかじま はるた)

(女の子と二人で
帰るのって、いいな。
島ではできなかったことだ)

日下部 苺香(くさかべ いちか)

陽太ちゃんは
何組になったですか?

中島 陽太(なかじま はるた)

俺か? 2年C組だよ

日下部 苺香(くさかべ いちか)

そっかあ……それなら、
珠來先輩と同じクラスですねっ

中島 陽太(なかじま はるた)

ああ、そうだよ。
珠來とは今でも
話したりするのか?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

はい……。
でも、学年がちがうし
昔ほど話さないです

中島 陽太(なかじま はるた)

そっか……。
苺香ちゃんは俺らより
一つ年下だしな

日下部 苺香(くさかべ いちか)

珠來先輩といえば、
数ヶ月前に足を怪我しちゃって
大変だったですよ

中島 陽太(なかじま はるた)

あー、さっき優斗からも聞いたよ。
それで、今はテニス部で
コーチをしてるんだよな?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

でも、怪我はもう治ったはずです。
きっと別の理由があって、
練習ができないと思うですよ……

中島 陽太(なかじま はるた)

別の理由?
苺香ちゃん、何か知ってるのか?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

えっ……
何も知らない、
何も知らないですよ!



苺香ちゃんは慌てた様子で、
首をぷるぷると横に振った。

中島 陽太(なかじま はるた)

(どう見ても
知ってる感じだけどなあ……)

中島 陽太(なかじま はるた)

(すげえ気になってきた。
珠來に何があったのか、
どうにかして
聞きだす方法はないか?)

華胡(かこ)

ようやくわらわの出番じゃな。
陽太よ、わらわに力を貸すのじゃ

中島 陽太(なかじま はるた)

(たっ、たのむぜ!)

華胡(かこ)

では、唇を閉じておとなしくせよ

中島 陽太(なかじま はるた)

(うーん……。
やっぱり華胡の唇はやわらかい)

日下部 苺香(くさかべ いちか)

あの……

中島 陽太(なかじま はるた)

どうした?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

やっぱり、陽太ちゃんになら
話してもいいかなって。
苺香が知ってること……

中島 陽太(なかじま はるた)

(華胡パンツのおかげだな。
サンキュー、華胡!)

華胡(かこ)

ふふ、礼はいらんぞ。
そのおなごの話を聞いてやれ

日下部 苺香(くさかべ いちか)

実は、珠來先輩は……
最初から怪我なんて
してないかもです

中島 陽太(なかじま はるた)

えっ、どういうことだ?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

あれは2ヶ月前の夜だったです。
そこの角を曲がって、
コンビニへ行こうとしたら……

日下部 苺香(くさかべ いちか)

草むらの中から、
珠來先輩が出てきたです。
しかも、服がボロボロになって

中島 陽太(なかじま はるた)

それって……
何か探し物をしてたんじゃ
ないのか?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

だったら、服がボロボロに
なってたのは変ですっ!
地面をはっただけじゃ、
あんな風にはならないですっ!

日下部 苺香(くさかべ いちか)

それに、珠來先輩は
お金持ちのお嬢様なのに、
あんな時間に草むらなんかへ
一人で行くのはおかしいです……

中島 陽太(なかじま はるた)

うーん……。
確かに、普通じゃないな

日下部 苺香(くさかべ いちか)

それからなんです……
珠來先輩が黒いストッキングを
履くようになったのは

日下部 苺香(くさかべ いちか)

真夏なのに、
黒いストッキングを
履くなんて変だなって
思ったですけど……
もしかして、珠來先輩は……



苺香ちゃんはうつむいて、
そのまま黙り込んでしまった。

中島 陽太(なかじま はるた)

もしかして、なんだ?

日下部 苺香(くさかべ いちか)

ごめんなさいです!
これ以上は、言いたくないです!



苺香ちゃんは俺を振り切るように、
走って行ってしまった。

中島 陽太(なかじま はるた)

い、苺香ちゃん!?

華胡(かこ)

後を追うんじゃ!

中島 陽太(なかじま はるた)

(わかった!)

中島 陽太(なかじま はるた)

おーい、苺香ちゃーん!



全速力で苺香ちゃんを追いかけたが、
すでに姿は見えなくなっていた。

中島 陽太(なかじま はるた)

(さ、さすが……
水泳部で鍛えた脚力は
伊達じゃないな……)

中島 陽太(なかじま はるた)

(仕方ない……。
そろそろ家に帰ろう)

華胡(かこ)

たわけ~~っっ!!

中島 陽太(なかじま はるた)

うわっ!
な、なんだよいきなり!

華胡(かこ)

珠來のことが
心配ではないのか!?

中島 陽太(なかじま はるた)

そりゃあ、心配だけどさ……

華胡(かこ)

ならば、苺香の話に出てきた
現場へ行ってみよ。
何か手がかりがあるかもしれんぞ

中島 陽太(なかじま はるた)

ん……そうだな。
とりあえず行ってみるか

中島 陽太(なかじま はるた)

(確か、苺香ちゃんは
そこの角を曲がって、
コンビニに行こうとしたら
珠來を見かけたと言っていたな)



苺香ちゃんの話を思い出しながら、
草むらが無いか探していると……。

華胡(かこ)

むっ。
そこに怪しげな草むらがあるぞ。
現場はそこではないのか?

中島 陽太(なかじま はるた)

(どうだろう……。
何か手がかりは
無いだろうか……)



草むらに座り込み、
ひたすら辺りの雑草を手でかき分ける。


華胡も同様に、草むらの中を探し始めた。

華胡(かこ)

ふむ……
これは上等な一品じゃの。
ほれ、見てみい

中島 陽太(なかじま はるた)

うるさいな。
今は華胡に構ってる
暇はないんだよ



そう言って振り向くと、
華胡の手にはなんと
女物のパンティが握られていた。

中島 陽太(なかじま はるた)

パパパンティ!?
な、なぜ!

華胡(かこ)

このぱんつ……
陽太の物と、素材が一緒じゃぞ



パンティを手に取って、
まじまじと眺めてみる。

中島 陽太(なかじま はるた)

うーん……。
なぜ草むらにパンティが
落ちてるんだ?

倉敷 沙穂(くらしき さほ)

中島くん……だよね?
そこで何してるの?



後ろから声を掛けられて、
心臓が飛び出しそうになった。

中島 陽太(なかじま はるた)

うわあっ、沙穂先生!?
おっ、俺は別にっ、
何もしてませんよ!



とっさに、さっきまで眺めていたパンティを
カバンにしまい込む。

倉敷 沙穂(くらしき さほ)

そう?
こんな所で屈み込んでるから、
具合でも悪いのかなって思って

中島 陽太(なかじま はるた)

わ、悪くないです大丈夫です。
そんじゃ、俺もう帰んないと
いけないので!
さよなら!

倉敷 沙穂(くらしき さほ)

あ、う……うん。
気をつけてね

中島 陽太(なかじま はるた)

ふう、なんとかごまかして
帰って来たぞ……

華胡(かこ)

ごまかせていたか?
ものすごく不自然だったぞ

中島 陽太(なかじま はるた)

うっ……ま、まあ気にすんな

中島 陽太(なかじま はるた)

そう言えば、慌てて持って
来ちゃったなぁ。
さっきのパンティ……



カバンから、
さっきの女物のパンティを取り出す。

華胡(かこ)

このぱんつは、
わらわと非常に相性が
良いようじゃ

中島 陽太(なかじま はるた)

へっ?
どゆこと?

華胡(かこ)

まるで島に戻っているような
気分になるのじゃ……。
とても落ち着くぞ

中島 陽太(なかじま はるた)

俺のパンツの素材と
一緒って言ってたよな。
それと関係があるのか?

華胡(かこ)

うーむ……
そこまではわからんな

中島 陽太(なかじま はるた)

ふうーん。
そっか……

中島 陽太(なかじま はるた)

あっ、そんなことより!
あの番組がはじまっちまう!



急いでテレビのスイッチを入れると、
丁度パンツのCMが流れていた。

中島 陽太(なかじま はるた)

今日はあっちでもこっちでも
パンツの話ばっかだな

華胡(かこ)

よほど縁があるのじゃろうな

中島 陽太(なかじま はるた)

あ、よく見たら
モテパンツのCMじゃん。
このアイドル好きなんだよな~

雲母 亜百合(きらら あゆり)

『パンツを履くなら、
男も女もモテパンツ!
ド直球のネーミングが功を奏して
SNSで話題沸騰中!』



KURUSU

中島 陽太(なかじま はるた)

なんだこの投げやりなCMは



パンツのCMの最後には、
『KURUSU』というブランドのロゴが出た。

中島 陽太(なかじま はるた)

KURUSU?
どこかで聞いたような……
くるす、くるす……

華胡(かこ)

確か珠來の上の名は
来栖ではなかったか?

中島 陽太(なかじま はるた)

あー、それだ!
まさか、珠來が
お金持ちなのって……

華胡(かこ)

ぱんつの会社の、
社長の娘なのかもしれぬな



何気なく、草むらで拾った
女物のパンティを手に取る。

中島 陽太(なかじま はるた)

(どうしてだ……?
わけもなく不安に
なってきた……)

華胡(かこ)

何か、このぱんつから
災いを感じるぞ……



不安を煽るかのような華胡の言葉に、
俺は返事をしなかった。

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