エルカとレイヴンが【友達】になってから数日が過ぎた。


 二人は引っ越し先の駅に降り立っ。


 その後を荷物を抱えたソルと不機嫌なナイトが続く。



 エルカとレイヴンの足取りは軽やかだ。

 大人の二人は疲労に満ちた表情を浮かべている。

エルカ
レイヴン
ソル
ナイト

 探していた人物はすぐに見つかった。


 黒髪の地味な少年も、こちらにもすぐに気付いた。


 そして、目を見開いて、口を開いて呆けている。

エルカ

久しぶり、ルイくん

ルイ

エルカ、久しぶり…………なんで、レイヴンが一緒に?

 そう呟いたルイの声。


 彼の姿を見て驚愕の表情を浮かべていた。


 そこにいたのは決別したはずの親友だった。


 彼と彼女がどうして一緒にいるのだろうか。


 接点らしい接点なんてなかったはずなのに。


 困惑するルイは立ち尽くしていた。



 親友だったレイヴンが、ゆっくりとルイに近付く。


 そして二人は向き合った。


 レイヴンは暗い表情を浮かべる。

レイヴン

ルイ……事件のこと、心配だった。決別したとしても、やっぱり友達だったから

 事件の二文字にルイは眉を潜めた。


 両親が何者かに殺害されたあの夜、凄惨な光景が無意識に思い出されたのだろう。


 眉間に深い皺を寄せて渋面を浮かべる。

ルイ

あの事件のこと知っていたんだな

レイヴン

手遅れ……って言うのかな。お前の助けになりたかったのに、お前はどこにもいなかった。お前は引っ越してしまった。何も言わずに姿を消してしまった

ルイ

僕がいなくなっても、誰も気にしないと思ったから

レイヴン

お前のいない日常が寂しかった

ルイ

………僕も寂しかった。レイヴンがいない日々が

レイヴン

自分勝手なのは承知の上だ。お前とここで親友としてやり直したい

 レイヴンはルイの前に手を差し出す。
 その手をルイは凝視していた。

エルカ

……仲直り、しなよ

ルイ

エルカ?

 エルカはルイを見上げる。彼女はルイの心配に気が付いたのだろう。


 呆れたように、困ったように微笑する。

エルカ

……こう言えば良いの? お願いだから、彼と仲直りして

ルイ

え?

レイヴン

……っ

 エルカは二人の腕を強引に掴むと、その手を重ね合わせる。


 二人の男が目を丸くして、同時にエルカを凝視する。


 そして、ルイは静かに彼に向き直った。
 

ルイ

……レイヴン……また、親友と呼んでもいいか?

レイヴン

当たり前だ

ルイ

……ありがとう

レイヴン

学校も同じだからな、またよろしくな

ルイ

そ、そうなのか? それで、どうして、二人が一緒にいるんだよ

レイヴン

オレの引っ越しにはコレットさんが絡んでいる。因みにオレとエルカちゃんの関係だけど……母親同士が親友だったんだよ

ルイ

そ、そんな繋がりがあったのか

レイヴン

そうそう世の中って狭いんだぜ

 固く握手を交わす二人の男の子をエルカは眩しそうに見ていた。

エルカ

………

 きっと、ルイは知らなかっただろう。

 エルカは好きだったのだ。


 ルイが親友にだけ浮かべる無邪気な男の子の笑顔を。


 それはエルカの前では見せない隙だらけの表情だ。


 あの表情が自分に向けられる日が来るのだろうか。

 そんな夢を抱いていた。 

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