エルカとレイヴンが【友達】になってから数日が過ぎた。
二人は引っ越し先の駅に降り立っ。
その後を荷物を抱えたソルと不機嫌なナイトが続く。
エルカとレイヴンの足取りは軽やかだ。
大人の二人は疲労に満ちた表情を浮かべている。
エルカとレイヴンが【友達】になってから数日が過ぎた。
二人は引っ越し先の駅に降り立っ。
その後を荷物を抱えたソルと不機嫌なナイトが続く。
エルカとレイヴンの足取りは軽やかだ。
大人の二人は疲労に満ちた表情を浮かべている。
探していた人物はすぐに見つかった。
黒髪の地味な少年も、こちらにもすぐに気付いた。
そして、目を見開いて、口を開いて呆けている。
久しぶり、ルイくん
エルカ、久しぶり…………なんで、レイヴンが一緒に?
そう呟いたルイの声。
彼の姿を見て驚愕の表情を浮かべていた。
そこにいたのは決別したはずの親友だった。
彼と彼女がどうして一緒にいるのだろうか。
接点らしい接点なんてなかったはずなのに。
困惑するルイは立ち尽くしていた。
親友だったレイヴンが、ゆっくりとルイに近付く。
そして二人は向き合った。
レイヴンは暗い表情を浮かべる。
ルイ……事件のこと、心配だった。決別したとしても、やっぱり友達だったから
事件の二文字にルイは眉を潜めた。
両親が何者かに殺害されたあの夜、凄惨な光景が無意識に思い出されたのだろう。
眉間に深い皺を寄せて渋面を浮かべる。
あの事件のこと知っていたんだな
手遅れ……って言うのかな。お前の助けになりたかったのに、お前はどこにもいなかった。お前は引っ越してしまった。何も言わずに姿を消してしまった
僕がいなくなっても、誰も気にしないと思ったから
お前のいない日常が寂しかった
………僕も寂しかった。レイヴンがいない日々が
自分勝手なのは承知の上だ。お前とここで親友としてやり直したい
レイヴンはルイの前に手を差し出す。
その手をルイは凝視していた。
……仲直り、しなよ
エルカ?
エルカはルイを見上げる。彼女はルイの心配に気が付いたのだろう。
呆れたように、困ったように微笑する。
……こう言えば良いの? お願いだから、彼と仲直りして
え?
……っ
エルカは二人の腕を強引に掴むと、その手を重ね合わせる。
二人の男が目を丸くして、同時にエルカを凝視する。
そして、ルイは静かに彼に向き直った。
……レイヴン……また、親友と呼んでもいいか?
当たり前だ
……ありがとう
学校も同じだからな、またよろしくな
そ、そうなのか? それで、どうして、二人が一緒にいるんだよ
オレの引っ越しにはコレットさんが絡んでいる。因みにオレとエルカちゃんの関係だけど……母親同士が親友だったんだよ
そ、そんな繋がりがあったのか
そうそう世の中って狭いんだぜ
固く握手を交わす二人の男の子をエルカは眩しそうに見ていた。
………
きっと、ルイは知らなかっただろう。
エルカは好きだったのだ。
ルイが親友にだけ浮かべる無邪気な男の子の笑顔を。
それはエルカの前では見せない隙だらけの表情だ。
あの表情が自分に向けられる日が来るのだろうか。
そんな夢を抱いていた。