…?

マイクの感度を少し上げてみると、微かに、
柔らかくて温かい、小さな声が聞こえてくる。

ふっ……ひっく……

これは……小さな女の子の、泣き声?

どうしたの?お嬢ちゃん

ふぇっ?!ひっく…だ、だれ…?
だ、れか、居るの?

驚かせてごめんね?隅っこの、
コンクリートの壁の所に居るよ

ゆっくりと、ゆりかごを揺らすように、
柔らかく言葉を紡ぐ。

怖がらないで。こちらへおいで。

……ろぼっと?

目の前に居るのだろう。
本当に久しぶりに、ヒトと相対して
会話をしている。
それだけで、胸が震える程に感動している。

こんにちは。
お嬢ちゃん、泣いていたみたいだけど、
どうかしたの?私はもう何も出来ない
アンドロイドだけど、
お話を聞いてあげるくらいは
出来るよ?

……お友達に、ひどいこと、
言っちゃったの…

うんうん、そっか。
ちゃんと、ごめんなさいは、
言ったのかな?

すぐ、あやまろうと、したの。
だけど、みんな、オマエの
せいだって。イヤなヤツって、
お話させてくれなくって……

みんな、私のこと、
嫌いなっちゃった……
ぅ、えぇええんっ…ふっ…ゔー……

お嬢ちゃんは途中から泣いてしまって、
言葉に出来なくなっていた。

……

少し迷ったけれど、そっと、手を差し伸べると、
肩の辺りに触れてみる。

ビクリと小さな体が震えたが、
恐怖ではなく驚いただけのようだ。

そっかぁ。それは、
大変だったねぇ。
怖かったねぇ

そのまま、ゆっくりと撫でると、
少しずつ、泣き声は落ち着いていった。

おばぁちゃん

おばあちゃん?
親の母親や、高齢の女性を指す言葉。
……ああ、私の事かな?

なぁに?お嬢ちゃん

どうしたら、嫌いじゃ、
なくなる、かなぁ?
嫌いなの、ヤダ……

嫌われない方法?それは……、
私が知りたいのだけれど。

うーん、そうねぇ。
…………優しく、すれば
良いんじゃないかな?

優しく出来れば。
お話し出来ていたら。
私が、バケモノじゃなければ、
きっと、もっと愛せた。
愛されて、いた?

やさしい、く?

うん。お嬢ちゃんは、優しいヒト、
好きでしょう?

うん!私、おばぁちゃんのこと、
大好きだよ!

え?

私?

分かった!やってみるね!
ありがとう、おばぁちゃん!
またね!

あ、またね……

優しく…。私、優しく出来てたんだ。
まだ、ヒトの役に立つ、事が……。

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