10.地図になき村(前編)
10.地図になき村(前編)
SNSに心霊スポットの写真を上げるようにしたきっかけは暇つぶしだった。始めは期待などしなかったが退屈を埋めるほど注目を浴び、いつの間にか生きがいになっていた。
怖いもの見たさもあった。
注目も浴びたかった。
退屈から抜け出したかった。
ただ、それだけだったのに俺は欲を出し過ぎたようで罰を受けようとしている。
助けて欲しい。こんな俺を退屈な日常に戻してくれ。
俺は助かるのかな
助けますよ
でも相手は窯を持ってる
異常だ。殺そうとしてる
たく、考えてないでとっとと逃げるぞ
逃げるって――囲まれている。どうしよう
はい。山野さん、私に捕まって下さい
飛んで逃げます
飛んで、あ、天使だったね
さあ、手を!
はい
これで大丈夫なの
心配なら俺が抱えてやろうか
あー、できればノエルちゃんがいいな
こいつ
準備はいいですね。行きます
体が浮いてる。やった俺は助かったぞーーー
あんまり喋ると舌を噛むぞ
いいじゃないですか。嬉しい時は
だって映画みたいじゃないか。こんなに爽快な脱出は体験したことはないよ。カイトくん
まるで子供だな。おい
このまま山の麓まで行きましょう
そいつはよした方がいい
どうしてですか
そうだ。さっさと離れた方が良い
周りを観てみろ
周りですか
山奥とは言えおかしいだろ街の明かりが全く見えない
そうですね
低い位置にいるからだろ。もっと高いところに行けば見えるんじゃないの
それにしては暗すぎる。それにスマホを観てみろ
スマホ?
電波が届いてない。でも、山奥だし……アレ、ここって空中だよな
それなら電波が届いてもおかしくないはずだ。どうして届いてないんだ?
私のスマホも届いてないです
これはおかしいですね。私のスマホは天界製です。人間界の何処にいても通話が出来るはずなのに電波が届いていない
もしかして……ここは
ああ、ここは俺達がいた世界と別の世界
異世界ってやつだ
異世界、異世界ってファンタジーだろ
おっさんの思っている異世界とは違うようだな
いつの間に異世界に来てしまったのでしょう
多分、トンネルだな
トンネル、旧犬鳴トンネルが異世界に繋がっていたのですか
でも、どうして
理由はわからない。だが、トンネルはこの世界に繋がっていた。それだけは真実だ
それが本当だとしてどうやったら帰れるんだ
帰りたいよ
カイトさん
情けない声を出すな
トンネルからここにこれたことはトンネルを通れば帰れる
――はずだ
はず! 確定じゃないのかよ
しょうがないだろ。俺はそこまで詳しくないんだ
まあまあ、可能性があるじゃないですか
とりあえず試してみましょう
し、しょうがないな
とにかく、急いでトンネルに行きましょう
そうだな。ここで言い合っても疲れるだけだ
そうだな
はい。早く帰りましょう
トンネルは……あそこですね
キューーー!
待て、何か……動いてるぞ
カイトさん?
ノエルちゃん、ア、アレ!?
何ですか。アレは!?
蛇、それにしてはデカすぎる
山と同じ、ここら周辺を胴体で囲んでいたのか
生物としてありえない。怪獣じゃないか
まさか俺達に気づいて動き出した
くそ、急いでトンネルに向かうぞ
はい
山と観間違えるほどの大蛇はうねりを上げ大地を揺らしている。
行動にどのような意味がなるかわからないが大蛇はノエル達に向かっているような気がして仕方がなかった。
ノエルは必死にトンネルに向かった。
トンネルに入り後ろから聞こえる轟音を気にする暇などなくトンネルを抜ける。
気づけばトンネルの外で疲労した体を休めていた。どうやら元の世界に戻ってきたようで街灯の光がノエル達を照らしていた。