8.トンネルの向こう側(前編)

 俺は心霊スポットハンター山野、心霊スポットに魅力を感じてから有名な心霊スポットに向かい写真を撮るようになった。

 その写真をSNSに投稿し続けているとちょっとした有名人になった。

 以来、休みを使い心霊スポットで写真を撮りその写真をSNSに上げるようになった。すでに俺の生活の一部になっている。

山野

ようやく着いた……ここか、いい写真が撮れそうだ

山野

まずは一枚目

山野

旧犬鳴トンネルか。いいね。いかにもって感じだ

山野

やはり夜に来ると雰囲気が出る

山野

よし、中に入るか

ノエル

ここのトンネルに入ってはいけません

山野

――君は

ノエル

私は救済天使ノエルです。あなたを助けに来ました

山野

ハハッ、俺を助けに?

ノエル

悪いことは言いません。ここは危険で危ないです。引き返しませんか

山野

ノエルさんだっけ、そういう訳にはいかないよ

ノエル

どうしてですか?

山野

君は知らないけれど俺は心霊スポットハンター山野って言うんだ。心霊スポットの写真を撮ってSNSに上げている

ノエル

心霊スポットハンター山野?

山野

俺のハンドルネームだよ

山野

そこそこ有名でね。一部のファンが俺の写真を待っているんだ

山野

つまり必要なんだよ。俺の写真が

ノエル

そうですか。しかし、入口までにしませんか

山野

どうしてさ、むしろやる気が出るね

山野

君が危ないってことはガチなんだろ

山野

つまり、いい写真が撮れる。こんな機会を逃すわけにいかないよ

ノエル

山野さん

カイト

行かせてやれよ。あんな奴

ノエル

カイトさんどうしてここに?

カイト

――っ、別にいいだろ

カイト

そんなことより、行っちゃったぜ

ノエル

あっ、待って下さい

カイト

たく、別に放っといていいだろ。あいつが勝手にやっている事なんだ。どうなろうと自己責任だろ

ノエル

それではいけません。危険が迫っている人を放っておけません

ノエル

私は誰であろうと救いたいんです。だって死んでしまいます。こんなところで死んで欲しくないんです

カイト

あの自己承認欲求が高いやつをどう止める? やるだけ無駄だ

ノエル

そうでしょうか。ちゃんと話せば聞いてくれますよ

カイト

――純粋すぎるねぇ

ノエル

何か言いました?

カイト

別に――ほら、追わないのか?

ノエル

そうでした!

ノエル

山野さん何やっているんですか

山野

来たんだ。見て分からないはしごを掛けているんだ。こうしないと中の様子が分からないからね

ノエル

ブロックで塞がれているんですか。なら、ここの写真を取り終えたら帰りましょう

山野

だから無理だってせめてトンネルの出口まで撮らないと帰れない

ノエル

そんな

山野

手伝わないんなら放っといてくれ

カイト

登っていったぞ

カイト

どうする。放っておくか

ノエル

いいえ、私も行きます

カイト

……ノエル

ノエル

なんですか?

カイト

たく、ちょっと耳を貸せ

山野

いいね。壁の落書きといい舗装されてない道、まさに見捨てられたトンネルだ

山野

外と違ってジメジメしてる。懐中電灯が無いと全く見えないしこれは写るかもな

山野

中の写真はこのぐらいでいいか……

ノエル

……

カイト

……

山野

あの……何かリアクションはしてくれ。寂しい

ノエル

いえいえ、お構いなく

山野

カイトくんだっけ、君も何か言ってよ

カイト

右に同じく

ニック

キューウ

山野

そうかよ。勝手にしな

ノエル

カイトさん。本当に黙って着いて行くだけでいいんですか

カイト

他人の言うことを聞かないやつにはこれで丁度いい

ノエル

そうですか

カイト

いいから目を離さず黙って見ていろ

山野

旧犬鳴トンネルの出口が見えたぞ

山野

……

山野

もう、引き返そうかな

山野

……いやいや

ノエル

……

ノエル

……

山野

あれ? ノエルちゃん

山野

いつの間に? まあいいか、そっちに何かあるのかい?

ノエル

……

山野

待って

ノエル

あれ? 山野さんは?

カイト

おかしいな

ノエル

はい。何処に言ったのでしょう。心配です

カイト

そっちじゃない。おかしいのはここだ

ノエル

ここ、ここって、この場所がおかしい?

カイト

ここのトンネルって封鎖されているんだろ

カイト

なのに出口は封鎖されてないんだ

ノエル

入口を塞ぐだけでは駄目なんですか

カイト

当たり前だ。それに空気が違う。ニックはどう思う

ニック

キュー

カイト

ここじゃわからないか。たく、面倒くさい事になりそうだ

8.トンネルの向こう側(前編)

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