「お金のことは……反省しているし、これからは私も気をつけ……」

「それ、もう、何度目だよ」

僕は溜息を吐いた。
こいつと付き合い始めてから、僕のコツコツと貯めていたお金は飛ぶように消えていった。
こいつは何も苦労せずに、デート費用も全額払わせて、僕に買わせた高価なものを身につけて。

結婚式の予約金まで払わされ、貯金もほぼほぼ底をつきそうになっていた時のメールで、ついに堪忍袋の緒が切れたのだ。

彼女の目からは一筋の涙が伝って落ちたが、僕はもう、許さない。
以前も同じような局面で涙を流されて許してしまったがために、さらにお金がなくなることになったからだ。

「いいかい、里子」

僕は彼女に諭すように言った。

「結婚っていうのは、双方が同意しないとできないんだ。里子は結婚したいと思っていても、僕は自分の経済力では最早無理だと思っている。結婚どころか、付き合い続けることも。だから、別れよう」

「そんな……私達、これで終わってしまうの?」

「うん。もう、里子とは無理なんだ」

僕はあっさりと言った。
こいつ……僕が断れない性格だからってこれまで散々タカってきて。今日こそ絶対に別れるって決めて来たのだ。

「嫌よ。だって、寿退社もしたし、結婚式も予約したし……」

彼女は手で顔を覆って泣き始めたけれど、もうこいつには騙されないんだ。

「ごめん。本当にもう、決めたことなんだ」

僕はそう、彼女に冷たく言い放ったけれど。

「寿退社までしたのに……」と言いながらいつまでも泣き続ける彼女を見ていると、若干、罪悪感を覚えてきた。

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