グレータは、まだ自分が魔女だと言うことを納得しきれていないのに、また新たな情報を聞かされまたもやぽかんとなる。

　とはいえ、考えてみれば今さっき猫が人間になっているのをその目で見ていたのだ。

明らかに魔法で変身したんだろうと言うことは推測できる。

　ルルーは少し申し訳なさそうな顔をして話し始めた。

　ヘルフリートは不思議そうに聞いた。別に隠れていてもよかったしルルーと同じように人として出てきてもよかったはずだ。

　要するに、一度猫の姿で現れたおかげで言うタイミングを逃し、後に引けなくなってしまって、ずっと猫の姿で生活していたのだ。

　レオがそう言うと。男の子の姿からあっという間に変化して、今度は小さなネズミになった。

　そう言っている間もネズミだったレオはうさぎになったかと思うと、今度はよく見慣れた猫の姿に戻った。

　グレータは気を失う寸前に巨大な竜が現れたのを思い出した。

あの時、とっさにかばったはずのレオがいなくなっていた。しかしあの竜がレオならば、全て説明がつく。

　レオはあの時、自分が他の動物に変身できることを隠すために狼をできるだけグレータから引き離し、姿が見えないところで竜に変身して冬狼を追い返そうとしていたのだ。

　グレータはあの時のことを思い出してがっくりする、自分のしたことは結局余計なことでしかなかったのだ。

　あの時レオは自分に注目させるために必死だったのだ。
　だから説明する暇もなく、グレータはレオが怪我をしたと勘違いしてしまい、あの結果になった。

　レオはそう言って人間の姿に戻り、グレータの手をギュっと握った。

　まだ見慣れていないレオの姿に手を握られて、グレータは真っ赤になって固まる。

　間近にそんな綺麗な人にまっすぐ見つめられ、悲しげな顔をされるとグレータは、もうどうしていいかわからなくなってしまう。

しかもレオはなんだか甘い雰囲気を漂わせている。

　レオは申し訳なさそうに言って、さらにグレータの手をぎゅっと握る。

　目の前の男の子がレオだと言うことは、なんとか理解できたが。いかせんレオの顔が綺麗すぎて目がまったく慣れてくれない。

　グレータは気を失うまでレオのことをずっと猫だと思っていたし、初めて人間のレオを見たときもレオだなんて気がつかなかった。

このまま黙っていても問題はなかった、むしろレオの立場になったら黙っていた方が良かったのではないかと思った。

　ルルーとヘルフリート、それからグレータは同時に驚き立ち上がる。

　ルルーとヘルフリートは同時にグレータに詰め寄るが、グレータもなんのことだかわからず慌てる。

　三人とも完全にパニックだ。

　レオはしれっととんでもない事を暴露した。

　今度は部屋の中が水を打ったように、静かになった。

　グレータは弁解しようとしたが、家出のことを2人に責め立てられ、口を挟む隙間もない。

　さらに言い訳をしようと思ったその時、グレータはある事に気がついた。

　グレータは薬草を摘みにいつもレオと一緒に行っていたことを思い出す。

　レオのことは、頭のいい猫だなとは思っていたものの、まさか言葉を全て理解しているのとは思っていなかった。
　
　だから油断してベラベラとどうでもいいことをずっと話していた。

　それなのに……目の前にいるレオは、自分とおそらく歳の近い男の子、しかも超がつくほど綺麗でかっこいい男の子だ。

あまりにも恥ずかしくてグレータは変な汗が出てくる。

　ここでグレータの頭はいっぱいいっぱいになってしまう。

　なんせ朝から目を覚ましたら知らない男の子がいて、それが更に猫のレオだと言われ、混乱していたのに今度はあなたは魔女ですと宣告された。

そしてトドメがこれだ。

グレータは大人びている発言もするがいってもまだ子供だ。

大人でも混乱する状況に、どうすればいいかなんて、わからなかった。

　パニックになったグレータは立ち上がると、叫び声をあげ、顔を真っ赤にさせながらいつも寝ている部屋に走って飛び込み、閉じこもってしまった。