グレータ

……あれ?私まだ寝てるのかな?

 驚きすぎて固まっていたグレータは確認のためにほっぺたをつねる。

 しかし、痛い。

グレータ

……実は、まだ暖かいベッドの中で眠っているのかな?。いやもしかしたら昨日起こった全てが夢だったのかもしれない

グレータ

うん、そうよ、夢……夢よね……ゆめ……ゆ……め……?

 ヘルフリートは恐ろしい物を見たように言ったが、グレータは完全に現実逃避をしてしまってなにを言っているのかもはやわからない。

ルルー

レオ、どういうことなの?

 レオは頷き、続きを話し始める。

レオ

まず。もしかしてと思ったのは、グレータが作った魔法薬でヘルフリートがカエルになった時だ

レオ

あれ、実は作っているところは僕も近くで見てたんだけど、グレータ以外で魔力を込められる隙はなかった。ちなみに僕は見ていただけで、何もしてない

ルルー

え?そうなの?私はてっきりレオが何かしたんだと思っていたわ

 あの薬のことは、ルルーも疑問だったから、後から、そうあたりをつけていたのだ。

 最近、レオとグレータは少しずつ距離を縮めていた。
 だからレオがこっそり何かしていたんだろうと思っていた。

レオ

僕は何もしてないよ

レオ

どちらにしろ猫の姿じゃ、ろくに魔力はこめられない。
だけどヘルフリートがカエルになったって言うことは、しっかり魔力が込められいたってことだ

グレータ

で、でも私はルルーみたいに。一つだけ使えるっていう魔法とか、使えたことなんてないよ?

グレータ

私が魔女なら、もうとっくの昔にわかってないとおかしくない?

 ルルーの話では魔女や魔法使いは一つだけ魔法を持っていると言っていた。

 しかし、生まれてから今までグレータは何かしらの不思議な力が使えたことはない。

ヘルフリート

そうだよな、もしそうなら俺が気づかないわけないし……

 ヘルフリートは心配そうにグレータを見る。
 それはそうだ、いきなり自分の妹が魔女だと言われたのだ。

レオ

そうなんだけど、グレータの魔法はかなり珍しくて、そしてわかりにくい魔法だったんだ

レオ

今の状況や環境も合わさって、誰にもわからなかった。本人でも

ルルー

レオ、もうちょっとちゃんと説明して

レオ

わかってる。いまから説明するよ

レオ

グレータ、昨日冬狼に襲われたこと覚えている?

グレータ

う……やっぱりあれは夢じゃなかったのか……

レオ

冬狼は氷の魔法を使うのは見たよね?口に魔力を貯めて一気に吐き出し氷をぶつけるんだ

レオ

だけどグレータが僕をかばってくれた時、狼は確実に魔法を使ったはずなのに何も起きなかった……

ルルー

何も起きなかったって……もしかして!……

 ルルーは、何かわかったようで驚いたように言った。

レオ

そう、グレータの持っている魔法は、他の魔法を無力化する魔法なんだ

グレータ

魔法を無力化?

 グレータは首を傾げる。

 そもそも魔法のことがよくわかっていないのに、いきなりそんなことを言われてもわかるわけない。

ルルー

なるほど、そう言うことか……

 ルルーはさすがにわかったようで一人でうんうんと頷いている。

ルルー

だから、グレータとヘルフリートが結界を越えてこの家に来れたのね

グレータ

え?……ええっと?……うん……だめだ全然わからない……

 ルルーは詳しく説明し始める。

ルルー

おそらくだけど、2人は森で迷ったでしょ?へルフリートには魔法が効いたと思う。
だけどグレータは魔法が効かなくて、迷って街に戻ることもなく。
そのまま、結果の中に入ってしまったのよ

ルルー

そしてまっすぐこの家にたどり着いた。だから結界にほころびが見つからなかったんだわ

ルルー

グレータが一時的に結界を無効化しただけだったから結界は壊れてなくて、グレータが通った後は元に戻ってしまった。いくら探しても見つからないわけだ……

レオ

そう、冬狼の攻撃が効かなかったのも同じ理由。あの時グレータは無意識だったと思うけど、かなり強い力で広範囲に無力化の魔法を使ってたよ

ルルー

あ!そういえばグレータとレオを探している時、明かりとして使っていた魔法の炎が消えてしまったけど……

レオ

おそらくグレータの魔法がルルーの魔法にも影響したんだろうね。力の使い方がわかるようになればその範囲をコントロール出来ると思うけど、あの時は限度がわからず最大限に力を使ってしまったんだ

レオ

あの後、グレータが気絶してしまったのも、急に魔力を使いすぎて魔力切れを起こしてしまったからだ

グレータ

魔力切れ……

 ルルーとレオには納得できたのかもしれないが、グレータにとっては未だに困惑しかない。

グレータは唖然とレオの言葉を繰り返す。

レオ

誰も。本人でさえもグレータが魔女だと気がつかなかったのは、グレータの魔法は身近に魔法がないと発現しない魔法だからだ

レオ

もし魔法使いや魔女が周りにいたとしても、見つけるのは遅かっただろうけど、全く魔女や魔法使いがいない環境で育ってきたなら見つかるわけもないよ

レオ

今回もたまたまこの家に来て魔法に触れたからわかったけど、もし街で何事もなく過ごせていたら死ぬまで気がつかなかったってこともありうる

ルルー

なるほどね、確かにこれは珍しい魔法だわ

 魔法にも色々な種類があって、過去の魔法使いが分類して研究してきた。だから資料としては残っているのだ。その中にグレータの魔法と同じような魔法を持った魔法使いは、過去にもいた記録はある。

それでもグレータの魔法は珍しい部類で、だからルルーもレオもすぐにはわからなかったのだ。

ルルー

どんなに当てずっぽうでも、魔法薬の正しい方法をたまたま作るなんて絶対に出来ない。

ルルー

カエルになる魔法薬も、私が材料を言ってしまったから出来たけど、それがなかったら絶対に作れることなんてないものだものね。
街でグレータが魔法を使えるとわかるチャンスなんてなかった

グレータ

えーっと……?

ルルー

つまり、こう言うことよ

 そんなグレータにルルーがそう言って手に炎を出す、そうしていきなりグレータに放った。

グレータ

きゃあ!!

 驚いてグレータは腕で顔を覆う。しかし炎は突然、消えてしまった。

グレータ

……あれ?

 グレータは腕を上げた状態で固まる、熱くもないし衝撃もなかった。

炎はグレータにたどり着く前に何もなかったかのように消えてしまったのだ。

ヘルフリート

本当だ……何か壁があるみたいに炎が消えた。……これがグレータの魔法なんだね

グレータ

私が……魔女……

レオ

そう、そして僕も魔法使いなんだ

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