「……こうして、思いを確かめ合ったルルーとヘルフリートは。末長く幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし」

グレータ

……って感じかな?

 グレータは森で薬草を探しつつレオに話しかけてた。

レオ

ニャー

グレータ

フフフ。今日はレオが珍しく返事してくれた

グレータ

それにしても。なんでお兄ちゃんは、カエルになっちゃったんだろうね?

 グレータは見つけた薬草を摘みながら、不思議そうに言った。

ルルーの説明ではグレータが作った薬では、ヘルフリートがカエルに変身する可能性はなさそうだ。

それなのに、ヘルフリートはカエルになってしまった。

グレータ

ルルーは魔力を込めながら作るって言ってたよね……
探す時、レオも協力してくれたけど、もしかしてあれのせい?

レオ

……

グレータ

……まさかね

 実は、グレータ一人では材料を探すのが大変で、見かねたレオが少し手伝ってくれていたのだ。

 特にカエルを捕まえるのは本当に大変だった。
 レオが居なかったら薬は出来なかっただろう。

グレータ

あの時はありがとうね。まさかお兄ちゃんがカエルになるなんて予想してなかったけど、結果的に2人の仲が進展してくれて良かったわ

レオ

……

 レオは別にといった表情で目をそらす。

 それでもレオの尻尾がちょっと嬉しそうに揺れていた。

グレータ

レオもちょっと嬉しそう。レオに言ったら怒られそうだけど、本当に可愛いな

グレータ

それにしてもあの2人は本当にじれったかったわよね……

グレータ

実はお兄ちゃんって口が上手くてすぐ女の子をナンパするくせに。本気で好きになるとすぐにヘタレになるのよ

グレータ

ルルーがそう言うことに慣れてないのはわかってるんだから、こここそはもっと押せよって思うんだけどね

グレータ

女の子はなんだかんだ言っても強引に迫られたり引っ張ってくれるのが嬉しいのにね

 グレータは得意げに、知ったかぶってそう言った。

レオ

……

グレータ

お兄ちゃんは昔からそうだったの、子供の時も近所のパン屋の女の子を好きになったのに上手く話しかけられなくて。逆に虐めちゃって、思いっきり嫌われちゃったのよ

 グレータは喋りながらも、薬草は手早くしっかりと摘んでいく。

グレータ

だいっきらいって言われて、すごい落ち込んで。あの時は、本当に鬱陶しかったわ

グレータ

お兄ちゃんは結構、顔はいいし優しいし。体も結構引き締まってるからモテるんだけど

グレータ

好きになる人は振られがちで、逆に面倒臭そうな変な女にはつきまとわれたりするのよ

グレータ

だから私が気を利かせて、お兄ちゃんと話すと妊娠するとか、女にだらしないとか噂を流して自衛してあげたのよ

レオ

……

 それを聞いたレオは、呆れ顔になる。

 ヘルフリートには迷惑な話だが、グレータは結構なブラコンで、愛情の示し方がちょっと歪んでいた。

グレータ

でも良かった……私もルルーのこと好きだし、お兄ちゃんとずっと上手くいってくれたら嬉しいな……

レオ

……

グレータ

それにしても、私達はどれくらいで帰ったらいいものなのかしらね?

グレータは少しからかうように言って、レオに向き直る。

レオ

……

グレータ

あ、待ってよ。怒った?ごめんね、でもこれは結構深刻な問題よ?

グレータ

早く帰りすぎて、真っ最中だったらかなり気まずいわよ?

レオ

にゃー!

 レオは怒ったように鳴くと、早くこの薬草を取れと言わんばかりに薬草を前足で示す。

グレータ

あ、ここにもあったのね。ありがとう、レオ

グレータ

フフフ、やっぱり怒ってるレオも可愛い

グレータ

まあ、でもこの際だから。今日はいっぱい薬草を摘んで帰りたいわね

レオ

ニャ

 森は油断すればすぐにでも雪が降りそうなくらい、寒くなってきた。

グレータ

こんな風に薬草を摘みにこれるのもこれが最後になるかもしれないわね

 そんなわけで、グレータとレオは張り切って薬草や木の実を探しはじめる。

 しかし冬は近いせいもあって、薬草や木の実はかなり少なくなってきている。

 グレータは薬草を求めてズンズン森に入って行く。

グレータ

こっちは行ったことないわよね?何かないかな……

 グレータは、今まで行ったことのない茂みに入って行く。

グレータ

わ!すごい!探してた薬草がこっちにいっぱいあるわ!

レオ

ニャー

 そこは森が少し開けた場所で光が差し込み、探していた薬草が群生していた。

グレータ

こんなにいっぱいあるなら、多めにとっても大丈夫そうね

 グレータは夢中で薬草を摘み始める。

グレータ

ふんふん♪薬草〜薬草〜どこにあるのかな〜薬草〜薬草〜なんで苦いのかな〜♪ふんふん〜

 嬉しくてグレータは、変な鼻歌を歌い始める、これはグレータのいつもの癖なのだ。

 持ってきた籠の中がいっぱいになった頃、気がつくと太陽はだいぶ沈み、空は薄暗くなってきていた。

グレータ

あ、そろそろ帰った方がいいかな?さすがに今なら、帰っても気まずい思いはしないよね

グレータ

……あれ?レオ?……どこ行ったの?

 顔を上げ周りを見たが夢中になりすぎたのか、いつも一定の距離を保ちながらもそばにいてくれたレオの姿が見当たらない。

グレータ

レオ!レオ!

 グレータは森の中で、ひとりぼっちになってしまったような感覚に陥る。

ざあっと冷たい風が吹く。

グレータ

っ……

グレータ

レオ……どこ?

レオ

ニャー

グレータ

あ!レオ!

 かなり離れたところで、レオの声がした。

夢中になって薬草採りをしているうちに、いつの間にかはぐれてしまっていたようだ。

レオはスルスルと、こちらに向かってきた。

暗い森に白い体のレオの体は、発光しているように真っ白で暗い海に光る灯台のようだった。

グレータ

良かった……。今からそっちに行くよ

レオ

ニャー!!

グレータ

え?なに?……わ!!

 その途端、グレータは足を滑らせた。

 高い崖があったのだが、草が高く生えていたので崖があるのが見えなかったのだ。

 足を取られたグレータは、バランスを崩し一気に崖を転げ落ちた。

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