あだし野念仏寺

ルールブックの地図を見ながらその日にどこへ行くのか決めたと思う。

佳純

祇王寺と大覚寺と広隆寺が近いけど、祇王寺から戻ってきて、広隆寺は時間があったらかな?

りすちゃん

それでいいよ。

佳純

近くにあだし野念仏寺があるみたいだから行ってもいい?

りすちゃん

うん。

その時、読んでたマンガに載っていたからあだし野念仏寺に行きたかった。

佳純

静かで
いい感じだね。

りすちゃん

そうだね。

あだし野念仏寺は空気が優しい感じで穏やかだった。
無縁仏のお寺と聞いていたけれど、埋葬されている期間が千年レベルで全てが超越している感じだった。

佳純

さすが
京都だね。

りすちゃん

いい感じだね。

時間が人の念のようなものを浄化しているような感じでした。

佳純

歴史って
すごいかも

石の苔すら歴史を感じてしまった。

お寺にお参りをして、御朱印をいただきにいった。

ちょっとしたお部屋という感じの場所に御朱印と書かれた紙が下がっていた。

佳純

ルールブックに他の御朱印があってもいいって書いてあったから、この御朱印帳にいただいても良いはずだ。

ドキドキしながら小さな窓口へ御朱印帳を出す。

佳純

御朱印、
いただけますか?

はい。

旅行案内のロゴマークがしっかりきっちりついている御朱印帳。

佳純

ダメって言われたらどうしよう。

と、思いながら渡した。

…………

やはり、ロゴマークをじーっと見ているような気がした。

佳純

……怖い。

こんな素敵なお寺だもの。
きっと声をかけられたはず。

でもこのルールブックに載っていないということは

佳純

断った
お寺かもしれない。

御朱印はスタンプラリーのスタンプじゃないんだから、そんなのに参加しません。

佳純

ってお寺だったらどうしよう……

そんなことを想像しながら待っていた。

……

受け取った女性は、こたつのようなものに座っていた(記憶が確かなら)。

……

その女性の正面に、手習いをしているような感じで硯を前に練習している女の子。

佳純

……

ほのぼのとした景色だった。

佳純

この女性が
住職さんのところに御朱印を持っていくのかな?

と、思った。
なんとなく、そういう感じがしたのだった。

ところが、

さらさら
さららら~

と、その女性が御朱印を書き出した。

佳純

え?

りすちゃん

え?

りすちゃんも驚いていた。
先入観かもしれないが、そういう感じがしない女性だった。

300円です。

お金を渡して受け取った。

佳純

ありがとうございます。

少し離れたところで御朱印を確認してみた。

佳純

……

りすちゃん

……

とても美しい御朱印だった。

佳純

こたつから出ないで
書いたのにすごいね

りすちゃん

うん。
すごかった。

聞こえないようにそう言った。

佳純

静かなること山のごとし

という表現が似合う感じだったのに、

佳純

書かれた文字は
流水がごとく美しかったです。

人力車のお兄さんが言っていた

すごい御朱印

佳純

とは
こういう御朱印なのかもしれない

と思える御朱印だった。

少しずつ少しずつ
御朱印にはまっていった。

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