二人は当初の目的だった買い出しに戻ることにした。
置いていた荷車を取りに戻り、早速買う予定の店に向かった。
二人は当初の目的だった買い出しに戻ることにした。
置いていた荷車を取りに戻り、早速買う予定の店に向かった。
とりあえず、小さな物から買っていって。最後に重い小麦粉をまとめて買っちゃおう
そうだね
ああー、それにしてもデートが終わっちゃって寂しいな
も、もう、何言ってるの
……ルルーはデートあんまり楽しくなかった?
え?そ、そんなことない楽しかった!
本当??
!……
そっか……よかった
う、うん……
やけにホッとしたように笑うヘルフリートに、ルルーはもじもじしながらもそう言う。
ヘルフリート、いつもと違って、変な感じ……
……あ。あの雑貨屋に飾ってあるレース可愛い、グレータに似合いそうだよ
布生地やリボンの素材を多く扱っている雑貨屋だ。可愛い色合いのものが多く、グレータに似合いそうなリボンが沢山並んでいた。
ああ、本当だ可愛いね
他に生地も買いたいし、ここでグレータのお土産もここで買おう
それじゃ。荷車もあるし、俺は外で待ってるよ
お願いね
ルルーは、ヘルフリートを残し店に入る。
色んなものに使える布生地や使えそうな端切れ、それから糸や毛糸を選び手に取っていく。
毛糸はこれから寒い季節には重要だ、長い冬の合間の時間つぶしにも使える。
最後にお土産のリボンと、ついでにレオのために薄いブルーのリボンも買っておこう
それにしても。少しだけど、やっぱり物の値段が上がってるわね……
国の経済は少しずつだが確実に悪化しているようだ。
それは同時に魔王の復活を示していて、ルルー何もできないもどかしさを噛みしめ店を出る。
まあ、今考えても仕方ないか……あ、ヘルフリート
おまた……せ……
店を出たルルーは、手を上げて道の向こうで待っているヘルフリートに声をかけようとした。
しかしヘルフリートは荷車の横で、だれか知らない女の子と話していて、ルルーは動きを止める。
あ、ルルー買い物終わった?
隣にいた女の子は、ヘルフリートに手を振り離れていった。
じゃーね、バイバイ
ルルー買い物ご苦労様
さっきの誰……?
「ああ、なんか道を聞かれたんだ。でも俺もよく知らないって言って、喋ってただけだよ……
どうしたの?
ま、またナンパでもしてたのかと思って……
えー、ひどいな〜俺はそんなにしょっちゅうナンパばっかりしてないよ
会った日にいきなり襲おうとした人には、言われたくないわ
そうだった。ヘルフリートはこんなやつだった……
あれ?なんか怒ってる?
お、怒ってないよ……ほら、次行くよ
あ、待って
ルルーはホッとはしたものの、まだ何か複雑な気持ちになる。
ルルーは自分の着ている服を見下ろす。
さっきの女の子、可愛い服着てたな……
私の服は古いし……なんだか恥ずかしい……
ルルーは自分がなんだか猛烈に惨めで恥ずかしくなってきて思わず早足になって、その場を離れた。
私……最悪だ……
この服、おばあちゃんの形見みたいな服なのに……なんてことを……
……
だ、だめだ。こんな事してる場合じゃない
ルルーは気を取り直し、顔を上げる。
あ、あれ?ヘルフリート?
どうやら考え事をしていて、はぐれてしまったようだ。
どうしよう……どこ行ったんだろう……
一度戻ってみようかな……
っきゃぁ!
元来た道に戻ろうとした時、いきなり何者かに腕を掴まれた。
その腕はルルーを狭い路地に引っ張りこんだ。
な、なに?
気がつくと、ルルーは二人の柄の悪そうな男に囲まれていた。
男たちは黒っぽくて汚い格好をしていて。
よく見ると、刃物を持っている。
へへ、大人しくしな。痛い目に会いたくなかったらな……
……その金、俺たちに渡しな
男達はニヤニヤ笑いながら、ルルーを壁に追い詰める。
ルルーはお金の入ったカバンを胸に抱きしめ、男達を睨みつけた。
な、なんであなた達に渡さなきゃいけないのよ!
ルルーは、隙をみて脇を一気にすり抜け逃げる。
こう言ったことは先手必勝だ。下手に相手にするとお金以外のものも取られるし、交渉もできそうにない。
きゃぁ!
ルルーは慌てていたせいか、足を引っ掛けてこけてしまった。
おらっ、よこしな!
あ!やめて!
腕を掴まれ抱えていたカバンを取られそうになる。
ルルーはなんとかカバンを死守すると、慌てて立ち上がり相手の足を蹴り上げる。そしてカバンを抱え後ずさりして相手と距離をとった。
男の一人が剣を抜いた。
刃を振り上げると、ルルーに振り下ろされる。
いやぁぁ!!
うわ!!
恐ろしくて叫んだルルーは思わず手をかざし、魔法を使ってしまう。
大きな炎が壁のように現れる。
な、なんだ。いきなり火が出たぞ!
何があったんだ!
慌てた強盗は無茶苦茶に剣を振り回し、また切りかかる。
や、やめて!
ルルーはまた炎を出してしまう。手から炎が燃え上がる。
ヒィ!!こいつだ!こいつが炎を出したぞ!ば、化け物だ
なに!新手の魔物か?
……っ!!ち、ちが……
今度は強盗が恐ろしいものを見るように後ずさる。
ルルー!
ヘルフリートだ。叫び声を聞つけてやってきた。
何をしている!
なんだ?!、仲間か!!ぐぁ!
ヘルフリートの声に驚いて、強盗は油断したのか。
ヘルフリートはその隙をついて殴り、相手の剣を奪い取った。
ック!
男達は反撃されるとは思っていなかったのか、怯み後ずさる。
今のうちだ!逃げるぞ!
ヘルフリート!
ルルーは腕を引かれるままに、そこから逃げ出した。
ルルーとヘルフリートは必死に走りその場を離れる。
しばらく走ると、人が多く安全な場所にたどり着いた。
はぁ、はぁ……追いかけては来なかったようだな
なんとか落ち着ける場所に辿りつき、落ち着いたところでヘルフリートがそう言った。
大丈夫だった?
だ、大丈夫……
ごめん、見つけるのが遅くなって。もっと早くに辿りつければ良かったんだけど
ヘルフリートは真っ青になって震えるルルーをおもわず抱きしめる。
ううん、私が勝手に迷って一人になったから狙われたの
お金、取られるところだった……私の方こそ、ごめんなさい
ルルーは震えが止まらなくて、思わずヘルフリートを抱きしめ返す。あんな風に直接的な危険な目にあったのは初めてだった。
よっぽど怖かったんだ……ルルー泣いてる?
大丈夫、大丈夫だよ。あいつらはもう来ないし来ても俺がなんとかするから
ヘルフリートはそう言って優しく撫でる。
ヘルフリートの手暖かい。ホッとする……
しばらくそうしているとだんだんとルルーの震えも止まった。
しかし、そうなるとずっとヘルフリートにしがみついているのが恥ずかしくなってきた。
……ごめんなさい
ルルーもう大丈夫?
う、うん
だ、大丈夫……
そう言ってルルーは無理矢理笑う。その笑顔にヘルフリートは思わず見惚れる。
……!ルルー……
ヘルフリートはルルーの頬に手をあて、顔を近づけた。
ヘルフリート?どうしたの?
……!
な、何でもない
ヘルフリートはそう言って慌てて離れる。
それにしてもヘルフリート、結構強いのね。剣も使えるなんて意外だった
はぁ、危なかった。変なことするところだった。
ルルーはもう大丈夫そうだな。よかった……
ああ、鍛治の仕事では剣も扱うから、使い方も知っていなきゃだめなんだ。だから一通りは習わされる。
これでも筋はいいって褒められたんだよ。でも不意打ちで戦って逃げるが精一杯だったけどね。
本当はもっとカッコよく倒して、警備兵に渡せるとこまでできればよかったんだけどな……
そんなことない、かっこよかったよ
あ、ありがと……
あ、そうだ。買い物の途中だった……
ルルーは慌てる。泣いていた所為で随分時間がたってしまっていた。
ああ、そうだった。時間を食ってしまったな……
早く帰らないと、夕食が遅くなっちゃう
そうだった、忘れてた。急いで行こう
うん
あ、そうだ……おばあちゃんの姿に変えておこう。また見つかると面倒だし
用心するに越したことはない。ルルーは物陰に隠れ老婆の姿になる。
あ、そうか。
……ごめん、俺が元の姿でデートしたいなんて言ったから……
ううん、気にしないで私は楽しかったし
2人は荷車のところにもどり、残りの買い物を済ませた。
強盗に襲われたので街中は少し怖かったが、その後は何事もなく終わった。
いつもよりお金に余裕があったから買いたいものは全て買うことができた。
……
……
色々あったせいか帰りは二人とも少し無口だ。
特にヘルフリートは何か考えこんでいるようでなにか上の空だった。
冬が近いせいか日が落ちるのが早くなっていて、家に到着したのは太陽が沈みかけたころだった。
二人ともお帰り!
ただいま
ただいま。お土産買ってきたよ
本当!うわー可愛い。ありがとう!
レオも
ニャー
やっぱり、ここはホッとするな……
森はじわじわと冬に向かっているが、暮らしはいつも通りに進んでいった。