そうなのだ、他にも氷や雷そして炎を操る魔法を使う魔力がある子供が生まれると、大体母親はその魔法の犠牲になってしまう運命になる。
魔女や魔法使いが人と仲良く暮らしていた時代は、そういったことは他の魔法使いが魔法で未然に防ぐこともできたのだが。
魔法使いや魔女が迫害されてしまった今はそんな知識もなくなってしまっている。
そして魔力を持った子供が生まれると、ただ恐ろしいものが生まれたと思われその子供は大抵捨てられるか殺されてしまうのだ。
私が生まれなかったら、お兄ちゃんはもっとお母さんと過ごせた。お父さんもあんな女と再婚もしなかったのに……私が生まれたから……
グレータ……
グレータはいい子だよ。グレータのお母さんは体調が悪くてもグレータを頑張って産んだんでしょ?
きっとグレータがいい子だってわかってたから。会いたかったから命と引き換えにしてでも産んだんだよ
!……そんなことない!わたしは……
そうだ、私の不幸自慢を、もう一つ教えてあげる
……え?
以前、私が森に捨てられてたって言ったでしょ?
うん
私の親がどこにいるのか、どんな人達なのかわからない……
だけどひとつわかっていることがあるの……
私は炎の魔法が使えるでしょ?今は自分の意思でコントロールできるけど、子供の時はそれが上手くできないものなの
特に生まれたばかりの時は絶対といっていいぐらい、力をコントロールできない
?
だから炎の魔法を持った子供が生まれると、必ず母親はその魔法の犠牲になってしまうの
!?
そうなのだ、他にも氷や雷そして炎を操る魔法を使う魔力がある子供が生まれると、大体母親はその魔法の犠牲になってしまう運命になる。
魔女や魔法使いが人と仲良く暮らしていた時代は、そういったことは他の魔法使いが魔法で未然に防ぐこともできたのだが。
魔法使いや魔女が迫害されてしまった今はそんな知識もなくなってしまっている。
そして魔力を持った子供が生まれると、ただ恐ろしいものが生まれたと思われその子供は大抵捨てられるか殺されてしまうのだ。
そ、そんな……
おそらく私の母親は私を産んで、すぐに私が発した魔法で焼け死んでしまった……
周りの人は恐ろしかったでしょうね。きっとどうすることもできなくて、私を森に捨てるしかできなかったんだと思う
おばあちゃんが私を見つけた時はへその緒がついたまま、で周りの木や草は焼けて焦土と化していたんだって……
その事実を知ったのは、師匠であるおばあちゃんから魔法を習っていた時のことだった。
調べ物をするために本棚で本を探していた時にルルーはその資料を見つけてしまったのだ。
それは隠すように置かれていて、おばあちゃんがルルーの目に触れないようにしていたのだ。
初めて知った時はショックで大泣きした。
ルルーは、それまで自分を捨てた親を恨んですらいたのだ。
ルルー……
私の母親は、きっと私が生まれる時その子供の力で死ぬなんて思ってなかったはず
きっと幸せな未来を夢見ていたのに、何もわからないうちに炎に包まれて死ぬことになったんだ
グレータが悪い子だったら、私は極悪人だよ
ルルー!そんなことない!ルルーは優しい、いい人だよ!
口の悪い私とかすけべなお兄ちゃんとかの面倒見てくれてるじゃん。本当はそんなことする必要なんてないのに。お人好しすぎる……
極悪人なわけないよ!
ありがとう、グレータ。ほら、やっぱりグレータはいい子じゃない
……ごめんなさい
もう私はいい子でいいよ
グレータは観念したようにそう言った。
ありがとう……
……それと……ひどいこと思い出させてごめん
これでおあいこだね。私もからかいすぎちゃったし。ごめんね
さあ、もう寝ようか
うん……
ベッドの中は暖かくて、グレータはルルーに抱き着いた。
暖かくてホッとする。
グレータ、それじゃ寝にくくない?
ルルーって意外に胸おっきいね、今度お兄ちゃんに教えてあげよう
そう?
……っていうか、ヘルフリートに教えるのはやめて欲しいわ
いつもの調子が戻ってきて、ルルーはホッとする。
お母さんがいたら、こんな感じだったのかな?
……せめてお姉ちゃんがよかったな
お姉ちゃん……
……うん、それもいいな……
グレータはそう言って、クスクス笑いそのままの体勢で眠ってしまった。
ルルーはそれを見てグレータにシーツを肩までかけてやり、自分も眠りについた。
それから数日後。
なんだか、最近グレータと仲がいいね
え?そう?……う〜ん確かにそうかも
今日はルルーとヘルフリートは家の裏で、炉を使い壊れた剣を直す作業を進めていた。
壊れた武器たちは順調に直されていっていて、ルルーはそろそろ街に売りに行ってもいいかもしれないと思いながら炉に火を満たしていた。
確かに、最近グレータは懐いてくれたのか一緒に居ることが多くなった。
最近は一緒に寝ることもあるし。
本当に妹みたい……春なったら寂しくなっちゃいそう……
……
どうしたの?
いや、仲がいいのはいいんだけど……ちょっと……
……?
……妹を取られたみたいで、なんだか面白くない……
グレータは滅多に人に心を許さないんだ。しかも小さい頃は特に何かあるとお兄ちゃん、お兄ちゃんって懐いてきてベッタリだった
最近は口が悪くなっちゃったけどそれでも、なんだかんだ言ってお兄ちゃんが一番だと思ってたのに。
ルルーに一番を取られた気分……
一番は今でもヘルフリートだと思うわよ、グレータと喋ってても一番話題が出るのはヘルフリートだもの
いや、俺がグレータと喋ってる時はルルーの話題が一番出る!
まあ、ヘルフリートとグレータが喋っている時にヘルフリートの話題が出るってことはヘルフリートが何か罵倒されてる時ぐらいしか想像できないから、必然的にそうなるのかな?
……たしかに
そう言うと、ヘルフリートは、がっくりと肩を落とす。
ああ〜、わかってるんだ。この先にもグレータはもっと友達ができたり彼氏ができたりするんだって
それにいつかグレータも嫁に行くんだ。……わかってた。わかっていたけど仲のいい女の子の友達ができただけで、こんなに寂しくなるなんて……
グレータ、嫁なんか行かないでくれ!!
グレータにはまだ恋人もいないのに、大袈裟な嘆きようである。
ちなみにグレータは今、レオと薬草探しに行っている。
薬草とりは大分と慣れてきたようで、採れる量も増えてきた。
グレータによると、レオとは最近少しだけだけど距離を縮めたらしい。
近づいても嫌な顔をされなくなったと自慢げに言っていた。
そういえば、仲良くなったきっかけはなんだったんだ?俺の知らない間に何かあった?
もしかして、仲良くなれる魔法の薬でもあるのか?
まさか、そんな風に人の心を動かせる魔法薬なんてないよ
それに春には出てってもらわなくちゃならないのに、あんまり仲良くなってもしょうがないじゃない
そういえばそうだね
じゃあ、なんなんだ?
うう〜ん、しいて言うなら女の子同士だからこそ、分かり合える事があるからだと思うけど……
あと……
そう言ってルルーはあの夜、グレータから聞いた話をヘルフリートに伝えた。
あれから、ルルーとグレータは仲良くなった。どうかんがえてもあれがきっかけだ。
それに、グレータはきっとヘルフリートに本音を言ったりしないだろうから、伝えておいた方がいいと思ったのだ。
ーーグレータはきっと、ずっとそのことが心に引っかかってたんだと思う。でも誰にも言えないから苦しかったのよ
今更結果を変えることも状況も変えられないけど、私に喋ったことで少しスッキリしたのかもしれない……
……
……どうしたの?
ヘルフリートはルルーをじっと見つめ、急に立ち上がるとルルーを抱きしめた。
わ!
ごめん……ルルーにもそんな過去があったなんて知らなかった。それなのに勝手に嫉妬して、変なこと言った
ヘルフリート……
本当にごめん
ヘルフリートもグレータも本当にいい人たちだな……
この家に来た当初はとんでもない兄妹だと面食らったものだし、どうなることかと前途多難だった。
ルルーは思い出す、二人が来る前は本当に静かな暮らしをしていた、それに比べると随分賑やかで。そして思った以上に楽しかった。
これじゃあ、本当に春になったら二人を追い出すなんてできなくなりそう
…………
…………
…… ヘルフリート?いつまで抱きついてるの?
……いや、グレータが言った通り、胸おっきいな〜と
!!ば、ばか!
慌ててルルーはヘルフリートから離れる。
全く油断も隙もないんだから!
へ、変なこと言ってないでもう休憩は終わり。キリキリ働いて!サボってると釜に放り込むわよ!
はーい
……本当、やばいなルルーは可愛すぎる。本気になるつもりなんて、なかったのに……
うん?何か言った?
いや、何でもないよ
そうして、二人は作業に戻った。
じゃあまた竈に火をいれるね
…………でも…本当。
……あんまり仲良くなるのは、これくらいにしとかないと……知られたくないこともあるし……
うん?何か言った?
え?あ、……な、なんでもないわ
その後の作業は順調に進み、その日は終わった。