これ以上、俺に関わるな!

どうして?
なぜ私を遠ざけようと
するの?

俺は深淵に魅入られている。
近づく者を皆、
不幸にしてしまうだろう──

俺は人と関わっては
いけない人間なんだ!!

元凶は、あなたの中に眠る
ご先祖様の血よ。
あなたは何も悪くない

俺の先祖である、闇の覇者──
その呪われた血が、
俺を滅びの運命へ
導いているというのか?

美家 王子(びいえ おうじ)

(このラノベ……。
最初は表紙買いだったけど、
読んでる内に癖の強い文体と
中二病な設定にハマッてしまった)

美家 王子(びいえ おうじ)

(作者の『ベル』先生の作品を
もっと読みたいけど、
出版社を移った関係で過去作は
ほとんど絶版なんだよなあ)

美家 王子(びいえ おうじ)

あ、もうバイトの時間だ。
行かなきゃ

御曹 司(みぞう つかさ)

今日はみんなに
お知らせがある

美家 王子(びいえ おうじ)

改まってなんですか?

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

遂に現場での勉強を終えて、
社長であるお父様がいらっしゃる
本社へ戻るんですね。
今までお世話になりました。
もう帰ってこなくていいです

御曹 司(みぞう つかさ)

しめるぞ平凡女

美家 王子(びいえ おうじ)

そ、それでお知らせって
何なんですか?

御曹 司(みぞう つかさ)

実は取引先である出版社から、
ラノベ作家の
アシスタント募集の話が
きているんだ

本屋さんのバイトから
募集するなんて、
変わってますね

御曹 司(みぞう つかさ)

俺のもとで働いている人間なら、
信頼ができるという事だそうだ

美家 王子(びいえ おうじ)

(外では一応まともな人として
通ってるんだな)

御曹 司(みぞう つかさ)

だが、この俺に魅かれて
働いているお前たちが、
他のバイトに行くとは思えない。
この話は聞かなかったことに
してくれ

美家 王子(びいえ おうじ)

(なら話すなよ)

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

本当にそんな募集きてるんですか?
御曹さんの脳内にだけ存在する
作家なのでは……?

御曹 司(みぞう つかさ)

ふざけるな!
最近アニメ化もされて
調子づいてる作家、
『ベル』からの募集だぞ!

御曹 司(みぞう つかさ)

俺の言っている事が
信じられないのならば、
出版社に聞いてみるがいい

美家 王子(びいえ おうじ)

ベル先生からの募集なんですか!?
俺、行きたいです!

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

美家くん、
その小説家のファンなの?

美家 王子(びいえ おうじ)

大好きです……。
今日もバイトに来る前に読みました

御曹 司(みぞう つかさ)

ふっ。アシスタントに応募して、
俺への好感度を稼ごうというのか?

美家 王子(びいえ おうじ)

どうしてそうなるんですか

御曹 司(みぞう つかさ)

俺が持って来た求人に
誰も応募しないと、俺が困る……
そう考えたんだな?(名推理)

美家 王子(びいえ おうじ)

この求人へ応募すると御曹さんへの
好感度が上がってしまうなら、
やっぱ辞めます

いや、ゲームじゃ無いんだから

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

行きましょうよ、BL王子!
絶対に行った方がいいです!
こんなチャンス、
二度と無いですよ!

美家 王子(びいえ おうじ)

藤吉さん、なんでそんなに
勧めてくるの?
そしてなぜバイトの会議に
参加してるの?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

今日は新刊の発売日なので
買い物に来たのですが、
売り場と間違えてここに入ってしまった
という体を装ってここにいます

御曹 司(みぞう つかさ)

体を装わずに
事実をありのままに話すと?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

常習的にBL王子の
後をつけており、
店員さんの会議を盗み聞き
していたらBLイベントが
始まりそうだったので
遠慮なく不法侵入しました

御曹 司(みぞう つかさ)

なるほど。
ただちに出て行け

美家 王子(びいえ おうじ)

(……で。
なんだかんだで、
ベル先生のアシスタントに
応募したわけだけど)

美家 王子(びいえ おうじ)

(御曹さんに教えられた住所だと、
このマンションの最上階に
ベル先生が居るはず)

美家 王子(びいえ おうじ)

(まずはオートロックの
インターホンを押さなきゃ。
うう、緊張するなぁ……)

『はい』

美家 王子(びいえ おうじ)

御曹司さんの紹介で来ました、
美家王子です

『部屋の鍵は開けてある。
そのまま入ってくれ』

美家 王子(びいえ おうじ)

あ、はい。
失礼します

美家 王子(びいえ おうじ)

(遂にベル先生の家に
上がらせて貰うのか。
緊張するな)

美家 王子(びいえ おうじ)

(このドアの向こうにベル先生が……!
メディアにまったく出ない人だから、
顔を見たことないんだよな。
一体どんな人なんだろう)

美家 王子(びいえ おうじ)

し、失礼します

…………

美家 王子(びいえ おうじ)

(パソコンの画面を食い入るように見て
ずっとキーボードを打ってる人がいる。
あの人がベル先生かな?)

美家 王子(びいえ おうじ)

すみません。
先ほどインターホンを
押した者ですけど……

…………

美家 王子(びいえ おうじ)

あっ、あのっ!

……ああ。
さっきインターホンで
話した子だな?

美家 王子(びいえ おうじ)

あ、はい。
ベル先生……ですよね?

そうだ。
締め切りが近いものでな、
気づかなくてすまなかった

美家 王子(びいえ おうじ)

(さっきは背中を向けていて
顔が見えなかったけど、
めちゃくちゃイケメンだ!!)

美家 王子(びいえ おうじ)

(想像以上に知的な雰囲気で、
穏やかで品が有って、
なんか良い匂いがする……)

司から話は聞いている。
キミが美家くんだな?

美家 王子(びいえ おうじ)

へっ? 司?

キミのバイト先にいる、
御曹司のことだ。
昔からの知り合いでな。
下の名前で呼び合ってるんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

(ベル先生と御曹さんって
友達だったんだ)

で、キミは……

美家 王子(びいえ おうじ)

あ!
お、俺は美家王子、
高校2年生です

雷殿 鐘(らいとの べる)

俺は雷殿 鐘(らいとの べる)だ。
作家としては、
ベル名義で活動している

美家 王子(びいえ おうじ)

先生って、本名もベルさんなんですね。
知らなかった……

雷殿 鐘(らいとの べる)

親が森鴎外を好きなものでな。
子供に洋風の名前を
付けたかったらしい。
難儀な話だ

美家 王子(びいえ おうじ)

はは、そうなんですか

雷殿 鐘(らいとの べる)

さて、今回のアシスタントの件だが……

美家 王子(びいえ おうじ)

は、はい!

雷殿 鐘(らいとの べる)

司の紹介だからといって、
即採用というわけではない。
今日一日の働きぶりを見て、
今後も頼むか決めさせてもらおう

ゴクッ

美家 王子(びいえ おうじ)

(採用試験ってやつか)

美家 王子(びいえ おうじ)

具体的には何をすれば
いいんですか?

雷殿 鐘(らいとの べる)

難しいことはない。
最近仕事が増えてきて、
身の回りのことに
手が回らなくなったんだ

雷殿 鐘(らいとの べる)

だから掃除や洗濯をしたり、
食事を作るなどの
雑用をして欲しいんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

料理なんてやったこと無いから、
ちゃんとした物は作れませんよ?

雷殿 鐘(らいとの べる)

俺は食にこだわりは無い。
食えれば何でもいい

美家 王子(びいえ おうじ)

そ、そうですか

雷殿 鐘(らいとの べる)

さて、俺は仕事に戻る。
後は適当にやってくれ

美家 王子(びいえ おうじ)

(テキトーっていうのが
一番困るんだけど。
まあ、まずは洗濯から始めるか)

美家 王子(びいえ おうじ)

バスケットに服や靴下が入ってる……。
これが洗濯物かな?

美家 王子(びいえ おうじ)

(洗剤や柔軟剤が
整理整頓してある。
几帳面な人なんだなあ)

美家 王子(びいえ おうじ)

(洗濯機を回してる間に、
掃除するか)

美家 王子(びいえ おうじ)

(思ったより散らかってない。
人気作家で仕事が忙しい割りに、
こんなに清潔感が
あるなんて意外だ)

しみじみ

美家 王子(びいえ おうじ)

(作品は闇落ちキャラが多いけど、
作者本人は闇に
落ちてないんだなあ)

美家 王子(びいえ おうじ)

(ほとんど掃除しなくても
大丈夫そうだけど、
とりあえず掃除機はかけておこう)

美家 王子(びいえ おうじ)

(後は目に付く所の
拭き掃除をして……)

美家 王子(びいえ おうじ)

ベル先生、掃除が終わりました

雷殿 鐘(らいとの べる)

…………

美家 王子(びいえ おうじ)

(駄目だ、仕事モードだ)

美家 王子(びいえ おうじ)

(そろそろ洗濯が終わる頃だから、
洗濯物を干すか)

美家 王子(びいえ おうじ)

ふー、これで終わりかな

美家 王子(びいえ おうじ)

たまに母さんに家事を
手伝わされるけど、
こんな所で役に立つなんて

美家 王子(びいえ おうじ)

(もう話しかけても大丈夫かな?)

美家 王子(びいえ おうじ)

ベル先生……?

雷殿 鐘(らいとの べる)

……ん?
キミは誰だ?

美家 王子(びいえ おうじ)

朝に話したでしょ!
御曹さんの紹介で
アシスタントに応募した、
美家王子です!

雷殿 鐘(らいとの べる)

ああ、そうだったな。
仕事に集中していたせいで、
キミの存在を忘れていた

美家 王子(びいえ おうじ)

へえー、すごい集中力ですね

雷殿 鐘(らいとの べる)

夢中になると周りが見えなくてな。
俺の悪い癖だ

美家 王子(びいえ おうじ)

集中力を乱さずに
作品を書き続けられるなんて、
長所だと思いますよ

雷殿 鐘(らいとの べる)

ふっ、そうか。
お世辞だとわかっていても、
悪い気はしないな

美家 王子(びいえ おうじ)

お世辞じゃないのに……

雷殿 鐘(らいとの べる)

ところで、
仕事はどこまでやった?

美家 王子(びいえ おうじ)

リビングの掃除と
洗濯は大体終わりました

雷殿 鐘(らいとの べる)

早いな。
男子高校生とは思えない
手際の良さだ

美家 王子(びいえ おうじ)

そんなことないですよ。
元々整理されていたので、
助かりました

雷殿 鐘(らいとの べる)

そうか?
本当は昼食も作ってもらおうと
思っていたのだが、
キミが居たのを忘れて
Uber Eatsで注文してしまった

美家 王子(びいえ おうじ)

Uber Eats。
俺が来た意味は……

雷殿 鐘(らいとの べる)

安心しろ、キミの分も今から頼む。
それとも出前館の方が良かったか?

美家 王子(びいえ おうじ)

そういうこと
言ってんじゃないですけどね

雷殿 鐘(らいとの べる)

食事が届くまでの間、
暇なら本棚に有る
俺の本を読んでくれて構わない

美家 王子(びいえ おうじ)

(俺の本って……。
まさか、絶版になった
過去作を読めるのか!?)

美家 王子(びいえ おうじ)

(と……To LOVEるしかない!
無印からダークネス、
果ては画集や小説版、
データブックまで
全部揃っている!)

美家 王子(びいえ おうじ)

(いや、待てよ。
よく見たら……)

美家 王子(びいえ おうじ)

(BLACK CATと、
あやかしトライアングル
も有る!?)

美家 王子(びいえ おうじ)

(だけど、本の並び順から考えても
To LOVEるから矢吹健太朗に
入ったっぽい!)

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

これはいけませんねえ……

美家 王子(びいえ おうじ)

藤吉さん?
Uber Eatsのリュックを背負って
何やってるの?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

Uber Eatsのリュックは、
Amazonで誰でも買えるんですよ

美家 王子(びいえ おうじ)

そ、そうじゃなくて。
まさかUber Eatsの配達員を
始めたのかなって

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

このリュックに入っているのは、
料理ではなくBLコミックです

美家 王子(びいえ おうじ)

はあ

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

これを本棚の本と入れ替えましょう

美家 王子(びいえ おうじ)

何やってるの藤吉さん!

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

主人公のリトくんが
女体化している巻以外は
全部捨てました

美家 王子(びいえ おうじ)

なぜ!?

雷殿 鐘(らいとの べる)

息抜きに本でも読むか

美家 王子(びいえ おうじ)

(ベル先生が棚から
BLコミックを手に取って、
黙々と読んでいる)

雷殿 鐘(らいとの べる)

何かがいつもと違う……。
いつもより妙に男が多い

雷殿 鐘(らいとの べる)

この主人公の男は、
親友の男と恋愛をするのか。
斬新な切り口だな

美家 王子(びいえ おうじ)

絵柄もストーリーも
何もかも違うだろ!
あんたは矢吹健太朗の
何を見てきたんだ!

雷殿 鐘(らいとの べる)

何を見てきたと言われても

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

そんなに興奮されても

美家 王子(びいえ おうじ)

藤吉さん……。
ベル先生に見つかる前に
帰った方がいいよ

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

はーい。
私がいたらお邪魔になりますし、
撤退しますねっ

雷殿 鐘(らいとの べる)

……ん?
誰か居たような気がするんだが

美家 王子(びいえ おうじ)

う、Uber Eatsの人じゃ
ないですかね

美家 王子(びいえ おうじ)

あ、本物のUber Eatsが来た

美家 王子(びいえ おうじ)

ピザ、美味しかったですね

雷殿 鐘(らいとの べる)

ああ……。
しかし、気になることが一つある

美家 王子(びいえ おうじ)

なんですか?

雷殿 鐘(らいとの べる)

ピザが一枚少なかった気がするんだが、
配達員が食べたのだろうか

美家 王子(びいえ おうじ)

そんなわけないでしょ

雷殿 鐘(らいとの べる)

次からは信頼できそうな
配達員に依頼しよう。
……そうだな、この女性なら安心だ

美家 王子(びいえ おうじ)

どんな人ですか?

←スマホ画面

美家 王子(びいえ おうじ)

(こ、これは藤吉さんでは?
名前欄に姫って書いてあるし)

雷殿 鐘(らいとの べる)

プロフィールに
『嫌いなもの、ピザ。
好きなもの、
BL(基本雑食、主人公総受け)』
と書いてある

雷殿 鐘(らいとの べる)

この女性ならピザを
つまみ食いされる心配が無いな

美家 王子(びいえ おうじ)

好きな物の
くせの強さは無視ですか

雷殿 鐘(らいとの べる)

ところで美家くんは
高校生だったな。
学校は楽しいか?

美家 王子(びいえ おうじ)

はい。
同級生やら先輩やら後輩やらと
楽しくやってます

雷殿 鐘(らいとの べる)

そうか。
キミなら友達が多そうだし、
彼女もいるだろうな

美家 王子(びいえ おうじ)

はは……。
それが残念ながら
彼女はいないんですよ

雷殿 鐘(らいとの べる)

へえ。
わざと作らないように
してるのか

美家 王子(びいえ おうじ)

うっ。
人の気にしてることを……

雷殿 鐘(らいとの べる)

なんだ。
俺は何かまずいことでも
言ったか?

美家 王子(びいえ おうじ)

モテるベル先生には
わからないでしょうけど、
彼女なんてすぐできるもの
じゃないですよ

雷殿 鐘(らいとの べる)

モテる……?
司がそう言ったのか?

美家 王子(びいえ おうじ)

そうは言ってませんけど、
見ればわかるじゃないですか

美家 王子(びいえ おうじ)

高身長&高収入で
しかもイケメンなんて、
ずるいですよ

美家 王子(びいえ おうじ)

こんな人があんなに面白い小説を
書いてると知ったら、
誰だって好きになるじゃないですか

雷殿 鐘(らいとの べる)

そうか、ありがとう。
美家くんは、俺の小説を
読んでくれているんだな

美家 王子(びいえ おうじ)

当たり前ですよ!
今連載しているシリーズなら、
全巻持ってます

美家 王子(びいえ おうじ)

でも、過去作はどこを探しても
見つからなくて……。
ファンとして悔しいです

雷殿 鐘(らいとの べる)

キミには感謝しかないな。
とても勇気づけられるよ

美家 王子(びいえ おうじ)

勇気?

雷殿 鐘(らいとの べる)

正直に言えば、
俺は作家としての
自信が無いんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

ベル先生の作品は
アニメ化までされてるのに、どうして?

雷殿 鐘(らいとの べる)

俺はライトノベルを書くまで、
まったく売れない作家だった

美家 王子(びいえ おうじ)

そうだったんですか……。
知りませんでした

雷殿 鐘(らいとの べる)

ノンフィクション、エッセイ、
ホラー、ミステリー……
色んなものに挑戦したが、
どれも花開くことは無かった

雷殿 鐘(らいとの べる)

あらゆる所に頭を下げて回り、
ゴーストライターなどの下請けの仕事を
もらって何とか食いつないでいた状態だ

美家 王子(びいえ おうじ)

ベル先生にも
そんな時代があったんですね

雷殿 鐘(らいとの べる)

ああ。
その頃にはよく司に
世話になったよ。
出版社に掛け合ってくれて、
小さいけれどいくつか仕事を
持って来てくれたんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

(あの人、ただの変な人じゃ
なかったんだな)

雷殿 鐘(らいとの べる)

そんな時に司からの勧めもあって、
ライトノベルを書いてみたんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

なぜ御曹さんが?
ラノベを好きそうに見えないけどな

雷殿 鐘(らいとの べる)

お前の様なコミュ力が低い男には、
ライトノベルで中二病設定を
書くのが丁度いいだろう
と、言われてな

美家 王子(びいえ おうじ)

ちょっとそれ、
ひどい偏見じゃないですか!?

雷殿 鐘(らいとの べる)

事実、
俺は人と関わらない主義だし、
結果として作家で成功したから
司が正しかったんだよ

美家 王子(びいえ おうじ)

(人と関わらない主義……。
ベル先生も
先祖が闇の覇者なのかな)

雷殿 鐘(らいとの べる)

だが、たまたま作品が
当たったからといって、
いつ前の生活に戻るかはわからない

雷殿 鐘(らいとの べる)

そう考えると毎日が
怖くて仕方が無いんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

どうしてそんなことまで
初対面の俺に
話してくれるんですか?

雷殿 鐘(らいとの べる)

なぜだろう。
自分でもわからないが、
キミに俺のことを知って欲しいと思った

雷殿 鐘(らいとの べる)

キミが俺という人間を
肯定してくれたかもしれないな

美家 王子(びいえ おうじ)

肯定だなんて、そんな。
俺はただ、ベル先生の作品が
好きなだけで……

雷殿 鐘(らいとの べる)

こんなに素直なのに、
彼女がいないのが不思議だな

美家 王子(びいえ おうじ)

まあ、好きな子は
いるんですけどね。
好きな子が俺を男として
見ていないというか……

雷殿 鐘(らいとの べる)

ああ、そういうことか。
俺はてっきり……

美家 王子(びいえ おうじ)

てっきり?

雷殿 鐘(らいとの べる)

いや、なんでもない

美家 王子(びいえ おうじ)

言い掛けてやめられると
気になるなあ。
言ってくださいよ

雷殿 鐘(らいとの べる)

あ、いや……。
てっきり美家くんが
女に興味が無いのかと
思ったんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

ええっ!
俺ってそんなにクールに
見えますか?

雷殿 鐘(らいとの べる)

クール……では無いな。
どちらかと言えば可愛い系だ

美家 王子(びいえ おうじ)

は?

雷殿 鐘(らいとの べる)

まあそんな事はいいんだ。
今日は朝からお疲れ様だったな。
今後も続けられそうか?

美家 王子(びいえ おうじ)

今日みたいな感じでいいなら……。
料理については不安が残りますけど

雷殿 鐘(らいとの べる)

キミが通ってくれると言うなら、
食事はこれからもUber Eatsで
頼んでもいい

美家 王子(びいえ おうじ)

ええっ!
ベル先生はそれでいいんですか?

雷殿 鐘(らいとの べる)

構わない

美家 王子(びいえ おうじ)

なんだかそれじゃ悪いから、
一応料理の練習はしておきます

雷殿 鐘(らいとの べる)

それは助かる。
本屋のバイトと兼務でもいいから、
時間が空いている時にいつでも来てくれ

美家 王子(びいえ おうじ)

それじゃベル先生が困るでしょう?
御曹さんに相談して、
シフトを調整してもらいますよ

雷殿 鐘(らいとの べる)

そうか。
司なら上手くやってくれるだろう

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

それじゃあ、BL王子は
正式採用されたってことですね!?

雷殿 鐘(らいとの べる)

そう思ってくれて構わない

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

やりましたね、BL王子!
これからはラノベだけじゃなく、
BL小説も書いてくれるかも
しれませんよ

美家 王子(びいえ おうじ)

書かないと思うし、
帰ったんじゃなかったの藤吉さん?

雷殿 鐘(らいとの べる)

美家くん。
一通り掃除や洗濯を
やってくれたようだし、
今日はもう帰って大丈夫だ

美家 王子(びいえ おうじ)

あ、そうですか?
それじゃあ仕事の邪魔に
ならないように、
今日の所は失礼します

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

また来ますね~

雷殿 鐘(らいとの べる)

…………

雷殿 鐘(らいとの べる)

今の女の子は誰だ?

第30話 恋するラノベ作家 - 前編

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