御曹 司(みぞう つかさ)

最近、男子高校生に
好意を寄せられて
困っているんだ……

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

だ、男子高校生……?
男の子に好かれてるん
ですか?

御曹 司(みぞう つかさ)

ああ、そうだ。
俺の色香は男性すらも
惑わせてしまうらしい

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

それは大変ですね……

御曹 司(みぞう つかさ)

大変ではあるが、
困った事にそれが
迷惑ではないんだ

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

えっ!

御曹 司(みぞう つかさ)

彼を少なからず可愛いと
思っている自分が居るんだ

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

(こんな恋愛相談を
されても困るんだけど)

御曹 司(みぞう つかさ)

なあ?
何の取り柄も無い
平凡女子代表のキミから見て、
この恋はうまく行くと思うか?

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

取り柄が無いとか、
平凡女子代表とか、
ひどくないですか?!

御曹 司(みぞう つかさ)

ブスではないものの、
取り立てて美人でもない。
胸もそこそこで色気は皆無。
その上、男に媚びる強かさも無い

御曹 司(みぞう つかさ)

そんなキミを平凡と言わず、
何と言おうか!

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

そこまで言う事ないじゃないですか!
こ、こう見えても私は、
二人の男の子から告白されたんですよ?!

御曹 司(みぞう つかさ)

なるほど。
そういう少女漫画か小説を
読んでいるわけか

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

はあ?
違いますよ!

御曹 司(みぞう つかさ)

なるほど。
乙女ゲームを
プレイしているのか

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

それも違います!
現実の話です!

御曹 司(みぞう つかさ)

虚しいものだな……。
平凡女子の自分の
慰め方というのは。
同情を禁じ得ないよ

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

な、なんなのこの人……!
誰か助けて!!

美家 王子(びいえ おうじ)

ちょっと御曹さん。
栗崎さんをいじめないで下さいよ

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

美家くん!
ううっ、ありがとう……っ

美家 王子(びいえ おうじ)

ほら、泣いちゃった
じゃないですか

御曹 司(みぞう つかさ)

そう嫉妬するな

美家 王子(びいえ おうじ)

はい?

御曹 司(みぞう つかさ)

俺が他の人間をいじめているのが
そんなに悔しかったのか?
さすが美家はドMだな

美家 王子(びいえ おうじ)

またミラクル解釈が
始まったよこの人

御曹 司(みぞう つかさ)

だが安心しろ。
そこの平凡女は、
俺の守備範囲外だ

御曹 司(みぞう つかさ)

俺が興味を持っているのは……
美家 王子、キミだけだ

げんなり

美家 王子(びいえ おうじ)

またそれですか

栗崎 由衣(くりさき ゆい)

ねえ美家くん。
この人、ホモセクハラで
訴えたら?
勝てると思うよ

美家 王子(びいえ おうじ)

はい、考えておきます

美家 王子(びいえ おうじ)

ただいまー。
あー、疲れた……

わんわんわん!

美家 王子(びいえ おうじ)

わわっ!
飛びつくなよ

くぅーんくぅーん

美家 王子(びいえ おうじ)

今日はずいぶん
甘えん坊だな。
どうしたんだ?

美家 妃(びいえ きさき)

最近アルバイトばかりで
遊んであげてないでしょ?
きっと寂しいのよ

よしよし

美家 王子(びいえ おうじ)

そうだったのか。
ごめんな

わふっ

美家 王子(びいえ おうじ)

そうだ。
明日、小テストがあるんだ。
勉強しなきゃ

わんっ

美家 王子(びいえ おうじ)

お前は部屋に入ったら駄目だよ。
勉強に集中できなくなるだろ?

わう!?

きゅうーん……

──翌朝。

美家 妃(びいえ きさき)

いってらっしゃい。
車に気をつけてね

美家 王子(びいえ おうじ)

うん。
いってきまーす!

美家 妃(びいえ きさき)

さて、と。
お洗濯しなくちゃ

美家 妃(びいえ きさき)

あら?
王子ったら、財布を忘れてる。
総司、ちょっとこれ……

これを王子くんに
届ければいいの?

美家 妃(びいえ きさき)

ええ。
よろしくね

総司(そうじ)

今、俺を
呼ばなかったか?

美家 妃(びいえ きさき)

えっ!
総司、たった今
出て行かなかった?

総司(そうじ)

いや、俺はさっきまで
リビングで掃除をしていたが

美家 妃(びいえ きさき)

じゃあ、さっきのは誰???

責田 好(せめだ こう)

小テストどうだった?

美家 王子(びいえ おうじ)

そこそこできたかな。
コウは?

責田 好(せめだ こう)

俺?
まったく勉強しないで挑んだら
思った通り駄目だったぜ!

美家 王子(びいえ おうじ)

そ、そう。
じゃあ、昼ご飯買いに行こうか

責田 好(せめだ こう)

おう。
今日は外で食べようぜ

美家 王子(びいえ おうじ)

そうだね。
天気いいし

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

(俺も王子と昼メシを
食べたい……。
でも、いつもあいつと
一緒なんだよなあ)

あのー……

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

(正直、あのコウって奴
苦手なんだよ。
こう見えても俺は
人見知りするタイプだからさ)

あのっ!!

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

あん?
何だテメ……

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

(なんだコイツ!
犬の耳と尻尾に……
首輪ーっ!?)

王子くん見なかった?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

王子なら、
あっちに行ったけど……

そっか。
ありがとう、暮男くん!

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

(何だアイツ?)

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

(つーかなんで俺の名前
知ってんだ?)

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

……ハッ!
王子が危ない!!

美家 王子(びいえ おうじ)

しまった

責田 好(せめだ こう)

どうした?

美家 王子(びいえ おうじ)

財布忘れた……。
ごめん、お金貸して

責田 好(せめだ こう)

悪りぃ。
今日の昼飯買う分しか
持って来てないんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

そうかぁ……。
どうしようかな……

王子くん!
忘れ物だよ!

美家 王子(びいえ おうじ)

あ、俺の財布!
ありがとう!

どういたしましてっ

責田 好(せめだ こう)

……なあ、王子

美家 王子(びいえ おうじ)

なに?

責田 好(せめだ こう)

コイツ知り合い?

美家 王子(びいえ おうじ)

いや?
知らない人だよ

責田 好(せめだ こう)

なぜ知らない人から
普通に物を受け取る

美家 王子(びいえ おうじ)

だってこれは俺の財布だし

責田 好(せめだ こう)

なんで見知らぬ人間が
王子の財布を持ってんだよ!
犬のコスプレしてるし、
怪しいぞコイツ!

美家 王子(びいえ おうじ)

し、失礼だぞコウ。
何か家庭の事情があるの
かもしれないじゃないか

責田 好(せめだ こう)

犬のコスプレしなきゃ
いけない家庭の事情
なんてあるか!

ぴこぴこ

これはコスプレじゃないよ。
本物の耳と尻尾だよ

美家 王子(びいえ おうじ)

犬耳と尻尾が動いてる!

責田 好(せめだ こう)

可動式だと!?

美家 王子(びいえ おうじ)

ふわふわして
気持ち良さそう……。
触ってもいいかな?

いいよ。
はい、どうぞ

美家 王子(びいえ おうじ)

わあ、ふわふわ……。
なんだかこの触り心地、
初めてじゃない気がする

そりゃそうだよ。
いつも触ってるじゃないか

美家 王子(びいえ おうじ)

いつも?
どういうこと?

僕は王子くんの家で
飼われてる犬だよ

美家 王子(びいえ おうじ)

犬?
またまた、ご冗談を

冗談なんかじゃないよ。
この首輪、王子くんに
もらったやつでしょ?

美家 王子(びいえ おうじ)

本当だ……。
キズの位置が一緒だ

責田 好(せめだ こう)

つまり、お前の犬から
首輪を取り上げた
マニアなのか?

美家 王子(びいえ おうじ)

どんなマニアだよ
それは

ごくり…

責田 好(せめだ こう)

きっと自分が
王子の犬になりたくて
盗んだんだよ……

美家 王子(びいえ おうじ)

はい?
俺の犬?

責田 好(せめだ こう)

犬っていうのは、
性的な意味で奴隷になる
ってことだ

違うよ!
やっぱりこいつ嫌いだ!
ウウ~ッ……わんわん!

責田 好(せめだ こう)

うわっ!
吠え方がお前んちの犬と
ソックリ!

美家 王子(びいえ おうじ)

まさか……。
キミ、本当にうちの犬なの?

うん、そうだよ。
人間になったんだ

責田 好(せめだ こう)

犬が人間になるなんて
そんな馬鹿な話って
あるのか?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

ありますよ

美家 王子(びいえ おうじ)

あっ、藤吉さん

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

落語で元犬(もといぬ)と
いうお話がありまして

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

来世で人間に生まれ
変われると言われた犬が、
神社で願掛けしたところ
本当に人間になってしまった
というお話です

美家 王子(びいえ おうじ)

でもそれ、落語だよね?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

私がBL以外のお話を
知っているのが
おかしいとでも?

美家 王子(びいえ おうじ)

いやいやそうじゃなくて、
落語と現実は違うよね?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

でも私の目の前には、
次々と男性に惚れられるという
現実離れした特徴を持つ
男子がいるわけでして

美家 王子(びいえ おうじ)

それはそうなんだけど……

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

それに、この前は
子供に変身しましたし。
犬が人間になるのも
有り得るんじゃ
ないですか?

美家 王子(びいえ おうじ)

シーッ!!
それ、コウにはナイショ!

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

そうでしたっけ?

責田 好(せめだ こう)

ん?
何の話だ?

美家 王子(びいえ おうじ)

なんでもない
なんでもない!

責田 好(せめだ こう)

……そうか?
まあそんなことより

責田 好(せめだ こう)

まさかお前も
人間になれるように
願掛けしたのか?

特にそう言うのは
してないけどなあ。
朝起きたら
こうなってたんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

じゃあ元に戻る方法を
探さないとな

元に戻る?
どうして?

美家 王子(びいえ おうじ)

だってお前、
犬に戻りたくないのか?

このままでいいよ。
人間の方が、王子くんに
いっぱい遊んで
もらえるから

美家 王子(びいえ おうじ)

わっ! ととっ……!
急に抱きつくなよ!

ペロペロ

くうんくうん

美家 王子(びいえ おうじ)

ひゃっ!?
顔なめるなよ!!

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

!?

責田 好(せめだ こう)

んなっ!?

駄目なの?
いつもやってることなのに

美家 王子(びいえ おうじ)

いつもは犬だろ!
人間の姿でなめたら
ダメ!

ちぇーっ

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

ケチーッ

美家 王子(びいえ おうじ)

藤吉さん……

どこなら舐めてもいいの?
手? 足? お腹?

責田 好(せめだ こう)

どれも駄目に決まってんだろ!
俺ですらなめさせて
もらえないのに!!

美家 王子(びいえ おうじ)

コウ……

責田 好(せめだ こう)

な、なんだよその目は

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

責田くんって、
BL王子の手や足やお腹を
なめたかったんですね

責田 好(せめだ こう)

そんなこと一言も
言ってないだろ!
なんで矛先が俺に向いてんだよ!

美家 王子(びいえ おうじ)

お前が妙なこと
言うからだろ

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

はあっ、はあっ……!
どこに行ったんだ?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

王子を不審者から
守らなきゃいけねーのに、
見つからねえ!

美家 王子(びいえ おうじ)

さーて、
家まで連れて来たのは
いいけど……。
母さんになんて言おう

ただいまって
言えばいいんだよ

美家 王子(びいえ おうじ)

そういう事じゃなくて。
その姿だったら、
母さんがビックリするだろ?

美家 妃(びいえ きさき)

あらおかえりなさい。
ご飯できてるわよ

美家 王子(びいえ おうじ)

母さん、あの……

くんくん……いい匂い!
僕も食べていい?

美家 妃(びいえ きさき)

たくさん作ってある
からいいわよ

わーい♪

美家 王子(びいえ おうじ)

……あれ?

おいしい!
これ、すっごく美味しいよ!

美家 妃(びいえ きさき)

嬉しいわ。
どんどんおかわりして
ちょうだい

ねえ。
これなんていう
食べ物なの?

美家 妃(びいえ きさき)

えっ、カレーよ?
知らないの?

へえ~。
カレーっていうのか。
こんなの初めて食べたよ!

美家 王子(びいえ おうじ)

犬に刺激物は
与えられないからね……

美家 妃(びいえ きさき)

何言ってるの王子?
さっきから何か
様子がおかしいけど

美家 王子(びいえ おうじ)

いや、その……。
なぜ母さんが違和感なく
対応してるのかと思って

美家 妃(びいえ きさき)

違和感?
変なこと言うのね

美家 妃(びいえ きさき)

あ、そうだ。
お風呂沸かしてあるから
先に入ってちょうだい

お風呂!?
庭で入るの?
ヤダよ~

美家 王子(びいえ おうじ)

いや、家の中だよ。
俺が入るんだ

家の中にもお風呂が
あるんだ?
僕も入ってみたいな

美家 王子(びいえ おうじ)

いいけど……

美家 妃(びいえ きさき)

じゃあ、ふたりで
入ってらっしゃい

わーい!
王子くんとお風呂だ

美家 王子(びいえ おうじ)

う、うん

美家 王子(びいえ おうじ)

(なぜ母さんから
ツッコミが入らないんだ?)

かぽーん

美家 王子(びいえ おうじ)

うーん……

どうしたの?
ジロジロ見て

美家 王子(びいえ おうじ)

細部まで本当に
人間になってるんだな、
と思って……

そうだね!
王子くんとお揃いに
なれて嬉しいな

美家 王子(びいえ おうじ)

どこ見ながら
言ってるんだよ

どこって、ここだよ

美家 王子(びいえ おうじ)

ギャーッ!
どこつかんでるんだ!!

いつも王子くんに
洗ってもらってる
お返しをするね

美家 王子(びいえ おうじ)

お返しって、まさか……

今日は僕が洗うよ!

美家 王子(びいえ おうじ)

やっぱりー!?
前もこんな事が
あった気がする!!

総司(そうじ)

湯加減はどうだ?

美家 王子(びいえ おうじ)

あっ、総司さん!

総司(そうじ)

……何をやっている?

何って、王子くんを
洗ってあげてるんだよ

美家 王子(びいえ おうじ)

ちょっ、やめっ!
舐めるのは洗うって
言わないから!

総司(そうじ)

おい……。
王子を洗うのは
俺の役目だぞ

美家 王子(びいえ おうじ)

総司さんまで
何言ってるんだよ!
自分で洗うからほっといてよ!

じゃあこうしよう!
僕と総司くんで協力して、
王子くんを洗おうよ!

美家 王子(びいえ おうじ)

はい?

総司(そうじ)

なるほど。
その方が効率がいいな。
お前は足の方を洗え

美家 王子(びいえ おうじ)

効率も何も良くない!
やめろー!!

暴れないでよ王子くん

美家 王子(びいえ おうじ)

うわああああ!

美家 王子(びいえ おうじ)

ううっ……。
二人がかりで俺の
純潔が汚された……

けがされた?
綺麗に洗ってあげたのに

ぐったり

美家 王子(びいえ おうじ)

洗うって言うか、
お前は舐めてただけだろ

美家 妃(びいえ きさき)

ねえ、王子。
ちょっと聞いても
いいかしら?

美家 王子(びいえ おうじ)

……何?

美家 妃(びいえ きさき)

ずっと気になってたんだけど、
犬の耳と尻尾を付けてる
その男の子は誰なの?

美家 王子(びいえ おうじ)

このタイミングで聞くの!?

僕は王子くんに
拾ってもらった犬だよ。
いつもお世話してくれて
ありがとう、お母さん

美家 妃(びいえ きさき)

なんだ、あなた
うちの犬だったのね。
どうりで初めてじゃない
ような気がしたわ

美家 王子(びいえ おうじ)

状況を飲み込むの早っ!

美家 妃(びいえ きさき)

どうすればこの子は、
元の姿に戻るの?

美家 王子(びいえ おうじ)

それがわからないんだよ。
本人も戻る方法を
知らないらしくて……

僕はこのままでもいいけど、
みんなは困るの?

美家 王子(びいえ おうじ)

そりゃあ、まあ。
散歩の時にご近所さんに
なんて説明すれば
いいのかわかんないし

美家 妃(びいえ きさき)

朝起きたら、うちの犬が
ジャニーズ系の美少年に
なってました……って、
説明すればいいじゃない

美家 王子(びいえ おうじ)

そう説明したら、
ご町内の変人枠は
うちで決定だね

美家 騎士(びいえ ないと)

王子はお掃除ロボと言い、
人外の物を集めてくるのが
得意だよな

美家 妃(びいえ きさき)

あら、おかえり騎士

美家 騎士(びいえ ないと)

ただいま

美家 王子(びいえ おうじ)

ちょっと兄ちゃん。
俺のせいみたいな
言い方しないでよ

美家 騎士(びいえ ないと)

キミは人間になった時のこと
覚えてないのか?

えーっとね、
王子くんに遊んでもらえなくて
つまんないな~と思ったんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

テスト勉強のせいで
追い出したんだよね。
ごめん………

ううん、いいよ。
僕が犬だったから
仕方ないよ

美家 騎士(びいえ ないと)

それで、朝起きたら
この姿になってたのか?

うんっ!
だからもう寂しくないっ

美家 王子(びいえ おうじ)

寂しいと人間になるのかな?

美家 妃(びいえ きさき)

だったらもう、
寂しくないわよね?
一緒にお風呂にも
入ったんだし

うんっ!
すごく楽しかった!

美家 騎士(びいえ ないと)

風呂……

美家 王子(びいえ おうじ)

どうしたの兄ちゃん?

美家 騎士(びいえ ないと)

いや。
最近王子と風呂に
入ってないな、と思って

美家 王子(びいえ おうじ)

昔はよく一緒に
入ってたね

美家 騎士(びいえ ないと)

また一緒に入ろうか?

美家 王子(びいえ おうじ)

洗われそうだからいい……

美家 騎士(びいえ ないと)

どういう意味?

美家 妃(びいえ きさき)

まあ何にしても、
寂しさが解消されたなら
明日には犬に戻ってるわよ

そうなのかな?

美家 妃(びいえ きさき)

きっとそうよ。
だから早く寝ちゃいなさい

美家 王子(びいえ おうじ)

そんなに簡単に
戻るかな……

すやすや

くうーん……

美家 王子(びいえ おうじ)

朝起きたら戻ってた!

びくっ

わん?

美家 王子(びいえ おうじ)

あ、ごめん。
起こしちゃった?

すりすり

わふっ

美家 王子(びいえ おうじ)

日曜だし散歩でも
行くか

わんわんっ♪

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

あっ!
王子!!

美家 王子(びいえ おうじ)

やあ、暮男。
どっか出かけるのか?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

ちげーよ!
お前を不審者から守るために、
ここで待ってたんだよ!

美家 王子(びいえ おうじ)

不審者?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

犬の耳と尻尾をつけた
コスプレ男が、
お前を探してたんだ!

わん?

美家 王子(びいえ おうじ)

ああ……。
それならもう、解決したよ

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

解決したって
どういう意味だよ!

美家 王子(びいえ おうじ)

あんな荒唐無稽は話、
説明しても信じてくれない
だろうしなあ……

わん……

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

こうとうむけい?
一体なんだよ!
何があったんだよ!

美家 王子(びいえ おうじ)

要するに説明するのが
面倒くさい。
またな、暮男

わふん♪

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

おいっ、王子!
一体何があったんだー!?

第29話 落語で元犬というお話がありまして

facebook twitter
pagetop