ヘルフリート

ぐえ!!


 ヘルフリートは突然誰かに蹴られて、床に倒れこんだ。

え?なに?

グレータ

お兄ちゃん、見損なったわよ

 そこには、怖い顔をしたグレータが仁王立ちしていた。

ヘルフリート

グ、グレータ……見事な回し蹴り。……でもここは男の大事なところだから、マジでやめて


 ヘルフリートは床にうずくまり股間をおさえながらプルプル震えている。

グレータ

そんなことより、どう言うことなの?
お兄ちゃんが女好きなのはわかっていたけど。まさかこんな高齢の女性まで標的にしてるなんて…………

グレータ

穴があれば何でもいいってこと?

グレータ

最低……

ヘルフリート

ま、まて誤解だ!

グレータ

お兄ちゃんがこんな節操のないケダモノだとは思わなかった

グレータ

……はぁ……ここは妹として責任をとるしかないわね……

 そう言ってグレータは、近くにあった椅子をおもむろに掴んだ。

ヘルフリート

え?ちょっと、何する気?

グレータ

悲しいけど、これ以上こんな性獣を野放しにしておけない。ひと思いに死んで!

 
 そう言ってグレータは掴んた椅子を振り上げた。

ヘルフリート

ギャー!!ちょ、ちょっとまって、よく見ろ!さすがに俺もお婆さんを襲ったりしない!!


 そう言ってヘルフリートは指さした。

グレータ

往生際がわるい…って?……あ、あれ?


 そう言われて初めてグレータは、押し倒されていたのが可愛い女の子だということに、気が付いた。

…………!!

 
 女の子は怯えた表情で固まっていた。

グレータ

え?どういうこと?こんな子この家にいなかったよね?隠れてたの?……でも、その服お婆さんのと同じだし……お兄ちゃんが、暴走したんだと思ってたけど。まさかこの女の子がさっきの老婆なの?

ヘルフリート

そうなんだ。さっき魔法がどうとか言ってたから、多分この姿が本当の姿なんだよ

グレータ

魔法!?

グレータ

じゃあ魔女ってこと?……魔女って本当にいたのね

ヘルフリート

ね、わかっただろ?さすがに俺もお婆さんをいきなり襲ったりしないって

グレータ

どっちにしても最低だけどね!変態だってことは変わりないわ


 いきなり女の子を襲うのは犯罪です。

ヘルフリート

う、そんな目で見ないで……

グレータ

それにしても、こんなことになってるとは……

グレータ

…………

グレータ

……これはチャンスかもしれないわね……

 少し考えこんだ後、グレータはニヤリと笑いそう言った。

そして、おもむろに落ちていた包丁を拾う。

え?なに?どういう…………

グレータ

魔女さん、お願いがあるんだけど

 
 そう言って、グレータは魔女の方ににじり寄る。

ヒッ!な、何を……

グレータ

私たち困ってるの、元いた町には帰れないし。他の町に行こうにも職もないのよ

グレータ

当然お金もないし……ね?


 グレータは困っているといいながら、完全に包丁で脅す。

……な、何が望みなの?

グレータ

少しのあいだここにいさせて欲しい。このまま家を出されても森で飢え死にか獣に殺されるわ

グレータ

それに、こんなにか弱い女の子が死んでしまったら、あなたも寝覚めが悪いでしょ?

そ、そんな……でも……

グレータ

お願いよ。聞いてくれないなら……お兄ちゃんがまた襲うわよ!

ヘルフリート

え?おれ?

グレータ

そうよ。ほらっ!お兄ちゃんぼーっとしてないで。こんな時にしか役に立たないんだから、しっかりやってよ!

ヘルフリート

こんな時にしかって……仕方ない……

 
 酷い言われようだがそれでもヘルフリートは言われた通りに魔女の方にじりじりと近づく

ヒッ、や、やめて……

 
 魔女はさっきの事がよほど怖かったのか涙目になりながら後ずさる。

!!


 その怯える姿は子ウサギのようだ。

ヘルフリート

か、可愛い……やばい、マジでこれはそそる。役得だわ

ヘルフリート

ヒッヒッ〜襲っちゃうぞ〜がお〜

 
 最初はしぶしぶだったが、その怯える可愛い姿にヘルフリートもノリノリになる。

 グレータももちろん更に追い打ちをかける。

グレータ

お兄ちゃんは近所でも有名な女好きで、喋っただけで妊娠するって恐れられてるヤリチンなんだから。穴さえあれば何でも突っ込む変態のお兄ちゃんにかかれば、あなたなんてすぐに従順なメス豚になっちゃうわよ……試してみる?

ヘルフリート

い、妹よ……お兄ちゃん、近所でそんな噂が流れてるの?っていうか、さっきから気になってたんだけどその言葉どこで覚えてきたの?お兄ちゃん悲しいよ?

グレータ

あ”あ”?

ヘルフリート

ヒッ、ごめんなさい

グレータ

ゴタゴタ言ってないてちゃんと追い詰めて!

ヘルフリート

は、はい!

 
 兄妹はそんなやり取りをしながもじりじりと魔女に迫る。
魔女はとうとう棚がある壁まで追い詰められてしまった。

や、やめて……

グレータ

さあ、今すぐに決めなさい!

!!……っく。負けないわ!


 そう言って魔女はなんとか立ち上がった。

い、言っておくけど。わ、私は魔女なんだから、魔法が使えるのよ!

グレータ

ヘルフリート

あ、あなたたちのこと、カエルにだって変身させてやるんだからね!

グレータ

!?っそ、そんなことできるの?……


 その言葉に、二人は流石に怯む。

こ、この月桂樹の葉とカエルの脳味噌とニガヨモギを乾燥させたものと……えーっと…うん?……あれ?あれはどこだっけ

あ、あった。それから四つ葉のクローバーの朝露……を……1時間煮込んで……

ヘルフリート

……

グレータ

……

これで出来上がり!

ってキャー!何するの!


 明らかに隙だらけだった魔女をグレータとヘルフリートは捕まえてしまう。
持っていた薬品も割れて落ちてしまった。

ヘルフリート

いや、当たり前だし。それに、そんなの作るの待ってやるわけないだろ……っていうか1時間って……

ああ、苦労して集めた素材が……

 あっという間に形勢逆転になってしまった。

グレータ

さあ、どうするの?

うう……

 
 こうなると、魔女にはもうなすすべはなかった。

グレータ

私たちをここに置いてくれたら、悪いようにはしないわ。冬の間だけもいい。その間は乱暴な事もしない。でも……逆らうなら容赦しないわよ

わ、わかったわ。ふ、冬の間だけなら……

グレータ

やった!


 魔女は諦めたようにガックリと膝をつきうなだれた。

 
  —— こうして魔女と猫と兄妹の共同生活が始まったのだった。

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