ベッドに横たわりながらそれぞれに話をする。不安で誰も眠れる気がしなかった。雷はまだ鳴り続けている。いったいあの死体はどこに消えてしまったんだろうか。
また稲光が走る。その時、一人が声を上げた。
本当に首なんて吊ってたの?
本当だよ、それにあいつは確かにいなくなってたじゃないか
ベッドに横たわりながらそれぞれに話をする。不安で誰も眠れる気がしなかった。雷はまだ鳴り続けている。いったいあの死体はどこに消えてしまったんだろうか。
また稲光が走る。その時、一人が声を上げた。
今、窓に
窓?
言われた二人は指差された窓を見た。また稲光が起きる。その光に照らされて、窓の外には首吊り死体がぶら下がっていた。
三人は声にならない悲鳴を上げて、腰を抜かした。でもすぐにはっとして外に飛び出した。嵐でも関係なかった。三人は外に飛び出すと一目散に山を駆け下りた。そのとき一人が山小屋を振り返ってみた。窓の前にいた首吊り死体はくるりと回って三人を睨みつけていたらしい。
三人は嵐の中、山を下っていたが雨で前が見えない中走って逃げたせいで足を滑らせて崖から落ちてしまった。後日捜索隊が出たけど遺体は三人分しか見つからなかった。近くに古い山小屋が見つかったけど、やっぱり首吊り死体はどこにも見つからなかった。
話終わると私たちは何も言えませんでした。背骨がブルブルと震えるような感覚がして自分の体が恐怖に固まっているのだとわかりました。周りのみんなも同じだったみたいで互いに視線を交わしました。
どうだ。この話なら大盛況間違いなしだろ?
た、確かに。すごく怖かった
映画にしたらインパクトはかなり強そうです。茂木田くんはとても得意げでこのままホラー映画に決まる流れになってしまいそうです。
私は遊里さんと夏木さんの顔を見ました。完全に怖がっています。とてもじゃないけどホラーの脚本を書いてくれるような雰囲気じゃありません。でもそのまま茂木田くんに任せてしまうと、それはそれで後から大変になりそうな気がします。
あの、小岩くんはどう思いましたか?
私は助けを求めるように小岩くんに振り返りました。小岩くんは一人、特に怖がる素振りも見せず話を聞く前と同じようにコインを回していました。
どうって? そうだな、映画を撮ると考えると山小屋に行くのは難しいだろう。少し改変する必要があるんじゃないかな
そういう意味で聞いたんじゃないんですけど
小岩くんは少し的外れな答えを返してくれます。
なんだよ、小岩。俺の話に文句があるのか?
自慢げだった茂木田くんは小岩くんの的外れな答えに噛みつきました。茂木田くんは自分の用意したとっておきの話にケチをつけられたと思っているみたいでした。
いや、とてもおもしろいホラ話だったよ。映画の題材としても申し分ない。ただ学生が映画にするには
わー、わー
二人の話は少しも噛み合っていないのに、なぜか危険な雰囲気が増していきます。他のメンバーもハラハラとしているだけで止められそうな感じじゃありません。
そして、茂木田くんはついに言ってはいけない一言を言ってしまいました。
小岩、お前ビビってるんだろ。さっきからこっちも向かねえし幽霊が怖いってか?
その瞬間、金色のコインが宙を舞いました。目の前で急に飛び出した光に茂木田くんはたじろぎました。
まったく。僕は他人の夢を壊すような無粋な真似は好きじゃないんだが
小岩くんは立ち上がり、ようやくこちらを見ました。怒っている様子はなく、どちらかと言えば呆れているような表情でした。
これは呪いでも幽霊でもない。トリックだ
いつもより静かに言い放った言葉は、嘘ではなさそうでした。
だったら、説明してみろよ
少しひるんだように茂木田くんは小岩くんを睨んでいました。
それでも小岩くんは茂木田くんには少しも興味がなさそうにゆっくりと答え始めました。