『ラスベガス・ダイブ』

 これはナンチャイが21になりたての頃のお話。


 彼女と旅行に行こうと話になり、あれやこれやと話してるうちに、ラスベガスとロサンゼルスに行くパックツアーに決定。ゲーム性の高いものが好きな二人は、ギャンブルにも興味があり、大儲けしようと目論んで軽率に旅立ちました。

 まず語らなければいけないのは、当時、そして今も人気の『課長 島耕作』シリーズの話である。島耕作がラスベガス(だったと思う)に行くシーンがあって、そこで美人ディーラーとのエピソードがあったり、簡単な賭け方の方法論があり、ナンチャイは旅行が決まってからその箇所を事前に何度か読んでいた。

ちなみにナンチャイの予算は

  旅行代金   15万
  食費お土産代 10万
  ギャンブル代 20万
         計45万。

若蔵のサラリーマンとして
安い金額ではない。

 そして最終目標を一丁前に掲げていた。三日間あるラスベガス滞在日のラストデイに持ってるギャンブル代を全て投入することである。あとは野となれ山となれである。

 




 そしていよいよ参戦。
 ルーレットならルールは勿論マナーも分かるので賭け始めます。一応知らない人の為に軽く説明すると、背景にあるこのイラストのゲームで、0~36まであるどこの番号に白い球が入るかを当てるゲームです。

 赤  か 黒
 奇数 か 偶数
 1~18か 19~36

とかに賭けるならば確率は二分の一(実はもう少し少ない)なので、当たれば倍になるのです。最高の倍数は数字をそのまま当てるもので36倍にもなります。




 前述の島耕作の賭け方・ダイヤモンドベット(今名前決めたw 島耕作でもダイヤモンドという言葉は出てた)がズバズバ刺さり、序盤の出だしとしては最高だった。

【1日目の収支】
この報告はドル表記。
この当時1ドル=120円ほど。
ギャンブル代のみ

+600$

 楽しんだ挙句にこんなに簡単にお金が増えるなんて、最高だ、それに余裕すぎる。ナンチャイはホテルで全く眠る気がせず、夜中にムクッと起きて、移動の疲れも知らずに彼女を置いて一人でカジノに向かった。



 結果、同じダイヤモンドベットをしたが、かすりもせず、ものの10分で300$が溶けてなくなった。

【1日目の収支】
修正
この報告はドル表記。
この当時1ドル=120円ほど。
ギャンブル代のみ

+300$

 大人しく睡眠をとり、翌日。



 彼女が買い物だのなんだのに行きたいと言うので一緒に行く。内心カジノに行きたくてしょうがなかった。そして気持ちを抑えきれず、途中で別行動でカジノ参戦。


 スロットでそこそこの当たりを引き、+500$。昨晩の深夜の悪夢は振り払われたようだ。



 晩飯を食った後、混雑時間になっていた。
 ルーレットはテーブルに人が沢山いる場合。手の届かないところは、ディーラーがコインを置いてくれるシステム。

ナンチャイ

スリープリーズ♪

ナイン?

ナンチャイ

えっ!?
ス、スリー!
スリープリーズ!

ナイン?

ナンチャイ

なぜ9なんだ。
どう聞き間違えるんだ。
そんなに発音
おかしいのだろうか。
まぁいいや。

ナンチャイ

OK♪

 3に何の根拠もないし、人もいっぱいで忙しそうだから9で良いと伝えました。

 白い球は9に入りました。
 ナンチャイ以外誰も賭けてなかったので、ちょっと鼻が高かったです。10$賭けてたので360$にもなり、懐も温かくなりました。

アメリカ兄ちゃん

ギロリ!!

ナンチャイ

ぅへ!?

 少し目立ったナンチャイでしたが、金髪のイカツそうなアメリカ兄ちゃんにガン飛ばされました。

ナンチャイ

そーゆーのは
めんどくさいぞ。
相手にしない、
相手にしない。

ナンチャイ

次のBETは懐も温まったし、
100$賭けよう。

 一応、日本円にするなら1万2千円だし、当たりやすい二倍でも嬉しいことこの上ない。


 すると、さっきのアメリカ兄ちゃんが同額で、ナンチャイの逆張り(ナンチャイが赤なら、その人は黒みたいな)を仕掛けてきた。



 言っておきますが、ルーレットはあくまで、ディーラー(カジノ)対客なので、客同士は敵ではありません。

ナンチャイ

おいおいこっち
見てくんなよ。

 周りの人も気付いていたでしょう。明らかに意識されていて、ちょっと嫌な気分でしたが、無視が一番。


 結果、はずれました。
 100$コインの上にもう一枚100$コインが置かれます。でもその200$の塊をアメリカ兄ちゃんは取ろうとしません。

アメリカ兄ちゃん

ギロリ!

ナンチャイ

おいおい、
もういいだろ。
俺の事意識しすぎだって。
いや冷静に冷静に。

 凄まじい対抗意識に辟易としながら、ナンチャイは違う場所に、小銭を賭けた。



 また、はずれました。まぁそんなもんだ、それに小銭だし。



!?



 あのさっきの200$がまた当たっていた。スゲェ400$だ。しかもまだ取りやがらねぇ。ギャンブラーすぎるし、なんか意識されてうざいけど、次当たったらあれはカッコいいことこの上ない。


 もう相変わらず睨んできてるが、なんとなくこの顛末をみたいので賭けずに見ておこうと思ったナンチャイ。

 その倍々プランは当たった。凄い。なんかカッケー。そう思った瞬間だった。

 やはりその人だかりのテーブルは、倍々の賭け方に注目していたらしく、ドラマチックに増えたその結果に大騒ぎになった。

ナンチャイ

おお、やるやん。

 と素直に思うナンチャイ。









 そんなナンチャイの肩を叩く隣の見知らぬ異国の人。








「ファンタスティック!!」








!?



 どーゆーコミュニケーション。まぁ皆で喜んでるんだろうな。

















 そして隣にいたナンチャイ彼女が










「え!? 嘘。まだ賭けんの!? もう止めた方がいいんちゃう?」

ナンチャイ

ほへ?
あれもしかして
俺っちのコインっすか?

 あまりの盛り上がりに、アメリカ兄ちゃんは退散。あのアメリカ兄ちゃんに睨まれてて、最初に掛けた方を思い違ってたようだ。





 ナンチャイは思う。


 これって、対抗意識燃やされてる日本人が逆張りの挑発を受け、当たったコインをクールでスタイリッシュに賭け続け、MAX BETを越えるまで当てた絵面ですよね。

 アメリカ兄ちゃんが毎回睨んできてたのは、そんな挑発返しともとれる賭け方をしてたからなのだ。




 ナンチャイは不敵な笑みを隣の異国人に返し、800$をせしめ、ディーラーにチップをはずみ、テーブルを格好良く離れたのだった。

最終話1 『ラスベガス・ダイブ』

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