元の世界に戻った僕たちは
王都の王城へ戻り、
地の世界で起きたことを
女王様に報告した。

つまり女王様やクレアさんを通じて
関係者のみんなには伝わると思う。



一方、女王様からも
僕たちに報告があって
各属性の対象者が
かなり判明しているとのことだった。

だから次はどの属性の世界にも
旅立つことが出来るらしい。



もっとも、それを決めてから
その対象者が準備を整えて
僕たちと合流するまで
多少のタイムラグはあるんだろうけど。

ちなみにルシードは
隠れ里へ戻っていった。
僕は里のみんなによろしくと伝え、
彼と別れた。

ルシード、また絶対に会おうね。
そして平穏に里で暮らそう。



エルムは王都に残り、
ライカさんやほかの薬草師のみんなの
お手伝いをするらしい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして僕たちが王城へ戻った翌日、
僕は城内にいるギーマ老師のところへ
やってきていた。

ギーマ老師は
先の戦いによるダメージにより
薬草師としてはすでに引退をしていて、
今は女王様の相談役みたいな
感じになっている。
 
 

ギーマ

少しは成長した
みたいだな。
大まかな話は
ミューリエから
聞いているぞ。

トーヤ

そうでしたか。

ギーマ

で、俺に何の用だ?

トーヤ

ティアナさんから
石化回復薬の製法を
教えてもらいました。

ギーマ

おぉ、あれか。

ギーマ

ということは、
なんで自分にも
教えてくれなかったのか
って抗議か?

トーヤ

いえ、違います。
あの薬の調薬法の
開発についてです。

ギーマ

…………。

 
 
僕の問いかけを聞いて
ギーマ老師の顔色が変わった。

一気に空気が張り詰めて
静電気が走るみたいに
ピリピリとしている。



僕の予想した通り、
ギーマ老師にとっては触れてほしくない
話なんだろうな。

でも僕があの製法を知ったということが
分かっていれば、
こうなることは想像できているはず。



それでも僕との面会を
許してくれたということは
問い詰められてもそれに答えるという
意思表示だと理解して、
遠慮なく話を続ける。
 
 

トーヤ

強大な力すら
はね除けるほどの薬。
普通に研究していても
開発はほぼ不可能です。

トーヤ

ちなみに材料の中に
手に入れにくいものは
ありませんでした。

ギーマ

それで?

トーヤ

ただ、調薬法は
従来の常識とは
かけ離れたもの。
あり得ない調薬法です。

トーヤ

例えば試薬AとBを
空中に振りまいて
その空間の気体を採取し、
蒸溜するなんて
科学的に不合理です。

トーヤ

その行為に
何の意味があるんです?
でもそれをしないと
薬は完成しなかった。
成分的には同じ状態に
なるように
別の手段でやったのに。

 
 
僕はこちらの世界に戻ってから、
王城にある調薬室で色々と試してみた。


無意味と思われる行程の部分について
省いたり、
別の方法に置き換えられる部分は
置き換えて
成分的には同じにしてみたり。

そうした組み合わせを
数百パターン以上も試してみたけど、
ティアナさんに教えてもらった通りの
調薬法でなければ薬は完成しなかった。


それは科学的にはあり得ない。
 
 

ギーマ

試したのか?
さすがだな。
褒めてやるよ。

ギーマ

結論から言えば、
その調薬法には
外の世界の知識と技術が
使われている。

トーヤ

やはり……。

 
 
僕たちのこの世界には存在しない理論。
意味が理解できない行為。
あるいは失われてしまった技術など。

あの薬はそうした何かがなければ
説明が付かないもの。
だから薄々そうじゃないかとは
思っていたんだけどね……。
 
 

ギーマ

結界とか魔術とかで
効力を得るために儀式が
必要なヤツがあるだろ?
その調薬法に
使われているのも
同じようなものだ。

ギーマ

科学的な理論だけでは
説明が付かない。
科学と魔術の融合。
あの薬はそういうものだ。

ギーマ

面白いだろ?
調薬技術と知識だけでは
到達できない境地。
無限の可能性がある。

トーヤ

もしかして、
不老不死の薬も……。

ギーマ

あぁ、ご明察。
俺とレオンが
不老不死の薬を
開発する過程で
生まれた副産物。
それがあの薬だ。

ギーマ

つまり不老不死の薬は
外の世界の理を利用して
完成させたわけだ。

トーヤ

つまり僕の存在も?

 
 
別にそれを知ったからといって
どうなるというものではない。

僕は僕の存在を受け入れているし、
僕の正体を知ってもなお
大切に思ってくれるみんなもいる。


ただ、自分のことを
より深く知りたいという欲求は
どうしても消せない。
ギーマ老師に尋ねた理由は
それだけなんだ。





それだけ……なんだ……きっと……。
 
 

ギーマ

どうだかな。
真実はレオンしか
知らない。

ギーマ

が、不老不死の薬を
理解不能な技術を利用して
作り出し、それに恐怖を
感じたアイツが
同じ轍を踏むとは
思えんがな。

ギーマ

つまり
得体の知れない技術は
使ってねぇだろうよ。

トーヤ

そうですか。

 
 
僕は無意識のうちに
小さく息をついていた。
そして心のざわめきが少し収まったのが
自分でもハッキリ分かる。


ギーマ老師の言葉が全て本当かどうかは
分からないけど、
お父様の性格を考えたら
そうなんじゃないかって僕も思う。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第334幕 石化回復薬の正体

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