帰るメンバーに

入っていないんです

僕は……

ハル

!?

 部分的な絶対予知があるというロココの予知夢では、ハル達はここからの帰還は出来る。ただロココ自身はその中に入っていないというのだ。

ハル

な、何言ってんすか。
自分達はロココだけ置いて
帰るわけないじゃないっすか。

アデル

そうですよ。
全員で帰るんです……
きっと予知夢の
見間違いか何かです。

ユフィ

アデルの言う通り!
ロココ諦めちゃ駄目よ!

ジュピター

オイラがそいつをやる。
その後は、

ランディ

その後は浮いてるやつを
全部ぶちのめす。
それで帰れんじゃねーか。

ハル

そ-っすよ。
それだけっす。
ロココ見間違いっす。
だから悲しむ必要は
ないんすよ。

ロココ

違うんです。
ぼ、僕は……
自分が帰れないのを
悲しんでるんじゃないんです。

 ロココはうつむき加減で誰とも目を合わせようとしていない。

 ここでずっと静観していたリザが、口を挟む。

リザ

お喋りはもウよかロう。
予知夢のヨうなもノが
アろうガナかろウが
アルパガスだけハ逃がサん!

ランディ

コイツァ
一番厄介な奴のっ!

リザ

オ前達は大人しクしていロ。

 この毒霧のようなものは、周囲一帯に放たれ、圧倒的に肉体不全を誘発させるもの。一度体験したハル達でも、対抗する術を持ち合わせていないものだ。

リザ

馬鹿ナっ!?
我がアエラスの変質ヲ
押し止めタというノか!?

ロココ

グ、ゥウ~

 リザの毒霧がハル達を襲う直前、ロココがそれを押し止めたのだ。リザの言うアエラスというのはおそらくは魔気のこと。以前、前後の言葉と状況を鑑みて、分析した記憶がユフィ達にはあったからだ。そして正しいからこそ、魔気の操作を得意とするロココが対抗できたのだろう。

アデル

凄い!
あの毒霧をなんとかするなんて。

ロココ

ごめんなさい。
ユフィさん……
僕聞いてしまってたんです。

ユフィ

なぜ?
何を謝っているの?

 ユフィの疑問は全員の疑問だった。
 今、敵の持つ最悪の攻撃を止めてみせたばかりなのに。

ロココ

ルグラさんとの話です。

ユフィ

!!

 ユフィの顔色が一瞬で青ざめる。何の話か全く分からないハル達。ユフィだけが理解した様子で、完全に言葉を失い震え始めた。

ロココ

オーバーヴォロゥ……

リザ

 表情を読みにくいリザの顔が明らかに歪んだ。その言葉に明らかに反応したものだった。

ロココ

新型刻弾による
大気中の魔気を使い過ぎると
重大な副作用がある。

ハル

ほんと何言ってんすか。  
自分訳分かんなくって……

アルパガス!
血迷うタか!!

 リザがこれまでにない激しい口調でロココに怒号を飛ばす。それと同時に両手に紫色の魔気を纏いロココに飛びかかったのだ。

リザ

ゥヌグゥッ!!

 リザの纏っていた紫色の魔気が霧散する。そして目に見えない力でリザが拘束されている。

リザ

ゥッァグ……
馬鹿ナ……
兆候は、
出てイなかったはズ。

ロココ

もう止められないと
分かっていた。
だから……
隠していたんです。

リザ

サせルか!

ゲボァ!!

 無理矢理動こうとしたリザが、拘束されたまま血を吹く。

ロココ

時間がない。
本当にごめんなさい。

ランディ

なんかやばすぎんぞ。
ロココ、おいロココ!

アデル

いや、
な、な……

ジュピター

大丈夫だ、
大丈夫……

ユフィ

あああ、ああ、
ロココ、ロココォ~

ハル

なんなんすか一体……
これって、
なんなんすか。

ロココ

僕が悲しんでいたのは
皆の悲しみが深い事を
知ってしまって
いるからなんです。
僕はこんなに悲しんで
もらえるほど愛されていた。
それなのに僕は
もう帰らない、帰れない。
ごめんなさい。
皆の悲しむ顔を
見るのは辛い。
それでも皆は帰れる。
それでいいんです。

 ロココの身体の周りに紫掛かったドス黒い靄のようなものが纏わりついていく。それとは反対に、首元の肌が真っ白に染まっていく。ロココは時間がないと言っていたが、それは下から上に確実に広がっている。頭部全てに広がるまでもう僅かな時間と、誰にでも分かった。

ハル

駄目っす!
皆で帰るっでぇ
帰るに決まっでるっすよぉ!

ロココ

ハルさんよく聞いてください。
僕はもう人間と言えない
存在になります。
魔気を取り込みすぎ
人間と魔物の中間のような存在に
なってしまうんです。
きっとこの先、
今の意識は保つことは出来ない。
まだ意識がある内に
魔物とリザを食い止めます。
皆で帰ってください。

ハル

皆って!
ロココも一緒に
決まってるっす!!

ロココ

もう知っているんです。
僕の意識は1%にも満たない
部分しか残らないんです。
この魔物達を殲滅出来る
力を得ますが、
皆を認識する意識は
残らないんです。
だから、だから早く地上へ。
僕はこれ以上皆を
傷付けたくないんです!

ハル

駄目っす駄目っす駄目っす!
絶対にそんなの駄目っす!!

ロココ

ああああああああ、
は、はや、っく……
行って!

ハル

ロココォ~!

ロココ

ぅううう……

ロココ

み、皆さん――

ロココ

ほんとに…………ほんとに、
ありがとうございました。

 ~編章~     213、ごめんなさい

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