目の前のロココが立っていた場所に鮮血よりも真っ赤な柱が立ち上がる。ロココはその柱に飲み込まれ視界から消えた。
目の前のロココが立っていた場所に鮮血よりも真っ赤な柱が立ち上がる。ロココはその柱に飲み込まれ視界から消えた。
ゴホッ、
馬鹿な……
なンというこトだ。
はぁ、は、早く、早く
助けるっす。
小僧、
止めてオけ、
モうオーバーヴォロゥは
止めラれン。
チッ、なんなんだよ、
そのオーバーヴォロゥ
ってのはよ。
突然、宙に浮く魔物の一体に異変が起こった。その身体に内側から穴が開き、やはり内側から切り開かれたような切り口が現れたのだ。
あれほど苦戦した魔物が、宙で体液を飛び散らせぐらつく。次の瞬間には無数の切り口が魔物を襲いあっという間にグチャグチャになってしまった。
ハル達はもちろんリザも何もしていない。そのリザは表情が殆ど分からないが、明らかに焦りと諦めらしき感情を抱いてるように見える。
ロココがやってるのか?
それならチャンスかも
しれ――
きゃっ!
うぐ!!
ロココの圧倒的戦力を目にし、チャンスと思った時、衝撃波が赤い柱の中心部から放たれる。
それをまともに受けて後ろに吹っ飛ばされるアデルとハル。
ルグラが話してくれた昔話。
彼の仲間にも同じ事が
起こったって……
ユフィはアデルを介抱しながら、呟くように言う。おそらくリュウとユフィだけが聞いた情報だ。
半魔半人……
魔人と呼ばれる存在。
魔気を纏いし人の向こう側。
そこに元の人間の意識は
殆どなく、比類なき力を
有する存在になる。
俺達だってもう
認識出来ねぇってことかよ。
どうやったら
戻せるんだよ。
……戻せない。
そんな、
方法なんて……
ないらしいわ。
ルグラから聞いていた話を語るユフィは、意識を失っているアデルに肩を貸した。反対側をジュピターが支える。
ハルは自力で立ち上がったが満身創痍だ。
まだ助け、る
方法が……
ある、はずっす。
ぅぐ!!
次の瞬間、宙を浮く魔物とランディが巻き込まれる。ギリギリのころで後ろに飛びのいたランディだが、その胸部の傷は明らかに浅くなかった。
駄目だ。
これ以上ここに居たら死ぬ。
ロココを、
置いていくって
ことっすか
俺だってなんとかしてぇ!
でもこのままじゃ
全員間違いなく死んじまう!
置いていけないっす!
置いていけるわけないっすよ!
あれだけ強けりゃ
誰にもやられないはずだ!
そうだっ!
方法がないから言ってんだ!
もうマジで時間がない!
ユフィ!!
本当にそれで
いいんすか!?
駄目……
私には分からない!
ジュピター!
早くアデルを階段まで運べ!
マジで巻き添え食うぞ!
分かった。
急げ!!
ロココッ!
目を覚ますっす!
お願いっす!
ロ、
ロココォ~!
迷宮の通路に立つ赤い柱。その中心に居ると思われるロココ。どうする事も出来ない状況に、ハルは自分の無力さに、完全に打ちひしがれていた。
全員傷付き、精魂果てていてもおかしくない。そして今迄の攻撃は、無差別の衝撃波と、その空間にいきなり見えない刃が現れるようなもの。その対象物は存在する者すべてで、ハル達だとか魔物だからとかではない。
『皆を認識する意識は残らない』
そうロココが言っていた通りなのだ。
それでもハルはロココがいる赤い柱に近付く。
方法なんてない。
攻撃を受けるかもしれない。
何も出来ない。
それでもロココを置いて帰るなど、ハルにはどうしても出来ないのだ。
ハルキチッ!
しっかりしろ!
皆を傷つけたくないって
ロココが言ってただろ!
出来ない……
出来ないんすよぉ……
地上に帰ることが
ロココの為なんだ!
分かってやれ!
ううぅううああ
ああおおあっ!
ハルの絶叫とも言える声。それは赤い柱に居るロココには届いていないはずだ。その間も、周囲の宙に浮く魔物は、体内から発生する見えない刃に切り刻まれ一体づつ細切れにされていく。
もう数体しか居ないあの魔物達がいなくなれば、間違いなくロココの攻撃対象はハル達に向いてしまう。
帰るって言ったっす。
不味いメシ……
食べに行こうって
約束したじゃないっすか!
ハルが赤い柱にボロボロの手を伸ばし、訴えかける。
確かに約束した。不味くて有名な食堂があるって。最初は嫌がっていたけど、段々と楽しみになってきたって。そんな小さな約束を思い出し、か細く訴えるしか出来なかった。
ロココォ~!!
ハルキチ……
すまねぇ……
ハルに当身をくらわせたのはランディだった。口に零した謝意は、ランディも充分にハルの気持ちが分かっていたからだ。
それからハルは意識を失い、傷だらけのランディに背負われ迷宮を脱出した。
偶然にも出会う魔物は少なく、ジュピターが一人で戦い殲滅出来る相手ばかりだった。
ガーディアンズゲートに辿り着いたハル達は、全員満身創痍でその場で倒れた。
当然そこにはロココの姿はなかった。
マギアフィラフトの更新はここまでになります。
長期に渡る連載で応援して頂いたお陰でここまでこれました。完結にまで辿り着けなった悔しさはありますが、読者とイラストを提供して頂いた絵師様、あと素敵な場を与えたくれたストリエに感謝するばかりです。
最速で読んで頂けて感謝です♬
不味い飯は楽しそうですが、伏線と知っている作者は辛くて泣きながら書いてましたw
このままストリエが続くことを祈っていますが、取り敢えずここで感謝をお伝えさせてください。
ありがとうございました。
一気に最新話まで読みました……
ずっと楽しく面白く、ハラハラしたり切ない気持ちになったりさせていただきました……
長らくありがとうございました!!! 願わくばまたどこかで冒険の続きを見られることを祈って!
はわぁ〜、有り難いお言葉です。
今後の身の振り方はtwitterで報告します。これからも仲良くしてやってください。
色々沢山ありがとうございました♬