アデルには理解不能なままだったが、魔物に囲まれていることもあり、ロココは強引気味にエキスの小瓶を渡してきた。
これをお願いします。
アデルには理解不能なままだったが、魔物に囲まれていることもあり、ロココは強引気味にエキスの小瓶を渡してきた。
これって……
やっぱり今日だったのか……
アデルはロココの不可解な言動に目を見開いてみせたが、握らされたエキスの小瓶を大切にしまうしかなかった。
そして宙に浮く魔物達は二人の周りに徐々ににじり寄ってくる。ハル達が向かった側にも、唸る程の数がいる。
一瞬に無数の刻弾が現れ、魔物達を襲った。
それを可能にするのは――新型の刻弾。大気中の魔気を使用した刻弾。だがこれはルグラに報告後、「絶対に使うな」と釘を刺されていたものだ。
禁止されていた
新型刻弾……
三、四体しか
倒せなかった。
そう、この魔物達は刻弾を旋風のガードで弾いてしまうのだ。それでも突然の新型刻弾に、四体の宙に浮く魔物に刻弾は命中していた。
こ、これが
新型の刻弾……
ロココッ!
新型は絶対に駄目って
あれだけ言っておいたのに!
それにやっぱりコイツ等
刻弾を殆ど弾きやがる。
ロ、ロココ……
本当に大丈夫っすか?
今の内です。
早くあの本体を!
浮いてるのは倒せなくても
いいんです。
防御するってことは
守らなきゃいけないって
ことだから時間稼ぎになります!
さぁ!
早く!!
全員既にあちこちに傷を負い、満身創痍の状態だ。ロココは二度目の新型刻弾を躊躇いなく使った。禁止されているのは分かっている。だが、そこに活路があるから使う。今迄副作用は一切なかった。だがたとえ自分の身に何が起こったっていい…………。そんな思いがロココの瞳に宿っているように見えた。
行くしかねぇ!
絶対に倒すっす!
ロココ、
後はオイラ達に任せろ!
もう使うなよ!
ランディが魔物の攻撃を防ぎ、ジュピターとユフィが多くの魔物を引き付け、ギリギリ辿り着いた本体。ハルは万感を込めた一刀を振り下ろした。
ハルの渾身の一撃。鬼義理は魔物本体の肩から腰にかけて、深々と斬り裂き真っ二つにした。さらに、ジュピターのトドメの連撃で完全なる討伐を確認する。
そしてアデルの推測。それは本体であるあの魔物を倒せば、うようよと湧いて出てきたあの宙に浮く魔物が消えるのではないかというもの。ハル達にとって非常に都合の良い推測。むしろ願望に近いと言っていいだろう。
傷だらけで満身創痍の身体をギリギリで支えながら、振り向いて確認する。
「アルパガス。
又もパトリダの調和ヲ……
容赦はセんト言った筈ダ。」
やっとの思いで魔物の本体を倒したハル達の前に現れたのは、黒ローブに身を包んだ青白い男――リザだった。