ロココ

そ、そんな!!

ロココ

何でなんだ!!

ハル

ま、また現れたっすよ。

ランディ

おい、ざけんなよ。

ユフィ

全員!
階段に急いで!

ハル

う、嘘っすよね……

ランディ

なんだこりゃ。
は……、
反則すぎんぞ。

 先程、必死に倒した宙に浮く魔物がユフィ達の逃走経路に複数体現れた。最初に現れた黄金の武器を持った魔物。瞬く間に連続攻撃で倒したと思っていたが、その魔物の鎧部分から次々と宙に浮く魔物が出現しているのだ。

 圧倒されるしかないユフィ達。そのユフィ達を囲むように、宙に浮く魔物が増え続けていく。お互いの背中を守る隊形しかとれず、他にどうすることも出来ぬまま時間が過ぎる。



 どうすればいいか迷う隙に、更に増え続ける光景が嫌でも目に飛び込んでくる。

 どうすればと考える事すら無駄に思えてくる。絶望という言葉が可愛く感じる状況。そんな中、声を挙げたのはロココだった。

ロココ

まだ一本あります。

 それは残されたエキスの使用を試みるものだった。

ハル

駄目っすよ!
絶対に!
それは友達の為に
置いておくべきっす!

アデル

そうです!
ハルの言う通りです!

ランディ

それによ、
二体や三体ならいけそうだが
これだけの数はどうにも
ならねぇんじゃねぇか。

ユフィ

そうよ、
そのエキスはこの状況の
解決にならないわ。

ロココ

でもこの状況ですよ!
少しでも減らさないと
本当に誰も
帰ることすら出来せん!

ユフィ

でもそれは……

 何が正解か分からない状況故に、ユフィはロココの意見にはっきりと反論出来ない。その合間にも、宙に浮かぶ魔物は増え続けている。

アデル

もしかして……

ユフィ

何?
言って頂戴アデル!

アデル

確証は何もありません。
ありませんが、
あの本体を倒せば……

ランディ

それでいくぞ。
ってかもうそれしかねー。
アイツさえ倒しゃ
都合良く全部消えてくれること
祈っとくんだな。

ジュピター

まぁアイツの周りにこそ
うじゃうじゃいるけどな。

ハル

それはアデルの言ってることが
正しい証拠っすよ。
本体のアイツを守ってるんす。

ユフィ

それに賭けるしかないわ。
なんとか掻い潜って
あの本体を一気に叩くのよ!

 ユフィが言い終えたと同時に、魔物の増殖は止まった。ざっと数えてみたら16、7体いる。

 階段方面と本体周辺の数が多い。本体から増殖するせいで多いかもしれないが、アデルの推測もあながち間違いでないかもしれない。その微かな真実味は光明だが、いかんせん酷い状況に変わりはなかった。

ハル

絶対に皆で
帰るっすよ!!

ジュピター

おおっ!

ランディ

そっこーで
やってやる!

ユフィ

私達が血路を
拓くわ!
二人共
付いて来てっ!

 近接戦闘が出来ないアデルとロココより先に、四人が本体と思われる魔物に突撃をかける。



 アデルは後から追い掛けようとして、後ろを振り向きロココに目配せをする。もう殆ど足はハル達を追い掛けようとしていたアデルだが、ロココの視線が足を止めさせた。

アデル

ロココ……
どうしたんですか。
皆を追い掛けなければ
危険です。

ロココ

アデルさんお願いがあります。

アデル

お願い?

 ロココの手にはエキスの小瓶があった。皆が必死になって入手してくれたエキスだ。

ロココ

これをお願いします。

 もう、先に走ったハル達は、宙に浮く魔物と交戦している。ロココとアデルの周辺にも、魔物が襲い掛かってきそうだ。その一刻を争う状況で、ロココは一切の揺らぎを感じさせないほど落ち着いていた。

 ~編章~     210、絶望の時間

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