踊れ、唯唯似つかわしく その2

スネイク

結局さっきの女は何だったんだ。

リチャード

まあ考えてもわかるまい。……犬に噛まれたとでも思って忘れるとしよう。

スネイク

くそーー! 今度は俺が噛み付いてやる。

ククリ

まあ狂犬。

アルマド

………………

リチャード

どうしたアルマド?

アルマド

彼女の技のことを考えていました。

アルマド

魔術では……ない。それに、他のどの術理体系とも違っているように思えました。

リチャード

不思議な術使いか……心配すぎても仕方ないが、気に留めておいてくれ。

リチャード

さて、中に入るとしよう。楽しい宝探しだ。

ケケーーーーーー!

スネイク

遅ぇ! 足が飾りか!?

ククリ

ふう、この辺の敵はそんなに強くなくて助かったわね。

リチャード

これが普通の強さのはずだ。さっきの相手はなんだか異常だったな。

スネイク

リチャードよう~自分が負けたからってそういう負け惜しみは良くないぜ~

リチャード

よせ。なんで抱きつくんだ。

リチャード

うおおおおおお!

ククリ

アルマド、秘宝はどっちの方向なの?

アルマド

ええと、この探索機によれば……

アルマド

こちらのようです。

ククリ

こちらって言っても……行き止まりだけど。

スネイク

……なあ、そのアイテム、光ってないか?

アルマド

え?

アルマド

わっ!

リチャード

……驚いたな。

アルマド

ええ、急に光るから、何事かと。

ククリ

そっちじゃないわ。――ほら。

ククリの指差した方角には。なんと、今まで行き止まりになっていた壁がすっかりなくなり、奥へと続く道ができているではないか。

アルマド

アルマド

これがこの探索機の力なのでしょうか。……ペッパー氏の見立ては正しかったということですね。

リチャード

面白い。取り尽くされた遺跡で未踏の領域。何が出てくるかな。

リチャード

怪物か、財宝か――どちらにしても、刺激的には違いない。

4人は遺跡の奥へと足を踏み入れる……!

ククリ

……ワオ。こんなきれいな状態で遺跡が残ってるなんて、すごいわね。

ククリ

壁の石だって、ホラ全然風化してない。

リチャード

うかつに触るなよ。どんな罠があるかわからん。

ククリ

おっといけない、オホホ。

ククリ

それでアルマド先生、この遺跡は何年前の物なのかしら?

アルマド

当然のようにわたしに聞かれても、知りませんよ。

アルマド

まあリーグレン設立以前と言ったら……七、八百年は経つのではないでしょうか。

スネイク

まさに歴史だぜ! おれのじーさんのじーさんが赤ん坊だった時くらいかな!

ククリ

その計算だとあんたの家系、どこかに妖怪が発生してるわね。

適当な軽口を叩きつつ……

ククリ

そういや、依頼人の探してるサートゥラクラッドって、どんなのなんだっけ。

リチャード

何らかの力を秘めた宝石だと聞いている。

リチャード

2つの対となる宝石が封じられており、結合することで大いなる力を発揮する……とな。

ククリ

そんな力で何するつもりなのかしらね。

リチャード

さあな。それには興味がない。

リチャード

依頼人の事情には立ち入らない……それが依頼請負人のルールだ。

ククリ

そのせいで、毎回面倒に巻き込まれてる気もするけどね。……クスクス、眉間にシワ。

無言で渋面を作るリチャード。

――そこに。

アルマド

ふたりとも、静かに。あそこに見えるのは――

壁の奥の一部がこちらにせり出している。中央部分が一段高くなっており、まるで祭壇のような。そこに祀られるように置かれた、赤い石。

あれが、サートゥラクラッドだろうか。

リチャード

! ……お前は……

未踏の秘所にも関わらず、その場所には先人がいた。

レイン

あんたたち……

スネイク

なんでてめえがいるんだ? さてはてめえもお宝目当てだな!?

レイン

ここに秘宝があることはほとんど知られていないはず。あんた達、何者?

リチャード

何者かだと? 俺たちは依頼請負人――

リチャード

秘宝を持ち帰れと依頼されている。邪魔をするなら……わかるな?

レイン

凄んじゃって、バカみたい。さっきはあんなに苦戦してたのにね。

レイン

そっちこそ怪我でもしないうちにさっさと帰ったら……

レイン

ちょっと待って、依頼って言った?

レイン

それって、ペッパーっていう男からじゃ……

アルマド

! 知り合いなのですか?

レイン

やっぱり……

どこか軽薄な態度をとっていた少女の様子が一変する。感情が形をもって吹き出し、他人でもそれとわかるかのような。それは――

レイン

許さない……

――怒り。

レイン

吹きとばせサートゥルス!

スネイク

またあの破壊的なやつか!? 勘弁、ん、こんな狭いところでッ!

スネイク

ワターーーーーーーーーッッッ!

総員、直撃を避けよとゴロゴロと転がる。

レイン

みっともない姿! そこに追い打ちかけるよあたしは! 悪いやつだからねッ

再び手を高く掲げ――その手には赤く光る宝石――

集結していく未知の力場。あの魔道具が引き金か……!?

そこに落下する氷柱……!

レイン

ガッ……!? グッ……ぁ……なんで……!?

不意を突かれ、頭と背中を強かに打ち付け地に伏す少女。

今の魔術を我々は知っているはず。そう、策士アルマドの遅延魔術である……!

アルマド

すごいアイテムをお持ちのようですが、実戦経験はまだまだですね。

レイン

ぐぐ、ぐ……ッ このくらい……なんてこと……!

危ない! うつ伏せの状態でも手を掲げることはできる。今度は妨害が間に合わない……!

リチャード

そこまでだ――

レイン

!!

いつの間にか接近していたリチャードの、強烈な肘打ち。勢いを殺さずもろとも壁に叩きつける!

レイン

~~~~~~~~!!?

ガクリと首をうなだれ、もはや動くこともできず。

アルマド

ようやく一息つけますね。リチャード、無事ですか!

ククリ

とんだ暴れ馬だったわね。

ククリ

可愛い顔してるんだから、もっとおしとやかにしなきゃ。

スネイク

・ ・ ・ン……ン?

ククリ

何か言いたいことがありそうねェ~!?(グリグリグリ)

スネイク

ぐおおおおお何も言ってねーーーーー!

3人も、少女とリチャードのもとに集まってゆく。

リチャード

お前の目的を話してもらおうか?

レイン

…………

リチャード

秘宝を追っているのか? ペッパー氏の商売敵か何かか?

レイン

……る……な

リチャード

レイン

あんなやつの、味方をするな! 

レイン

あいつの味方は! みんなあたしの敵だ!!

リチャード

チッ……! 暴れるな!

激しくもがく! しかし両肩をガッチリと押さえつけられているため、何もできない。

レイン

うあああああああッ!!

リチャード

いい加減に、

爆音、凄まじい衝撃――――!

ククリ

――――

アルマド

―――――

リチャード

こいつ…………どこから……

巨大な怪物は突然現れた。突然、それもそのはず、やつの奇妙なシルエット。筋骨隆々の裸の上半身を晒し、腹が直接地面に突き刺さっているような――

怪物は地面を突き破り、地下から現れたのだった――

振り上げた拳を――

――叩きつける!!

スネイク

~~~~~~~!

ククリ

~~~~!~~~~~!

あまりの衝撃に、できるのは地に伏せ歯を食いしばるのみ。言葉を発しようものなら舌を噛んでしまったことだろう。

アルマド

リ……リチャード!

砂埃が落ち着きようやく目が慣れた頃、そこにあったのは。

怪物が更に広げた巨大な穴のみ。

スネイク

マジかよおい、落ちちまったかよ!?

ククリ

……………

いや、それと。

視界の隅にキラリと輝くもの。目的の宝石が、静かに転がっていたのだった――

続く

33 踊れ、唯唯似つかわしく その2

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