踊れ、唯唯似つかわしく その1
ミルデン街道。
荷台を運ぶ男たち。疲労感の中にも活気を感じさせつつ、町から町へと荷物を届ける彼らには不思議な力強さを感じさせられる。
――そこに。
な……なんだぁぁ!!?
ら、落石、避難を……!
横転する荷台。転がり落ちる荷物。
ハッハーッ!
荷物運びご苦労さん。あいにくだけど、そいつはあたしが頂いた!
タイミングを図ったように丘から飛び降りてくる少女。もしや落石は彼女が……!?
あー……あーーー! あーーー!
やめてくれーーーー!! ォォォォォォォーーーー!
非道!
しかしこれもこのリーグレンの現実である。街道に潜み旅人から金品を奪う輩には事欠かない……!
ちくしょう、ペッパーさんの荷物を運んでるといつもあいつが邪魔する……!
おのれ覚えておれ……!
つまりはトレジャーハントをしてくれと?
ええ、ええ。そうなんですよ武人サマ。
お宝さがしか。楽しそーだな!
一方のブラックガード事務所! 客を迎え、新たな依頼を受けているようだ。
こほん、改めて。わたくし、ペッパーと申します。
先日、骨董商だった父の遺品を整理しておりましたら、いわく有りげな品とメモを見つけましてね。
なんでしょうか。魔術師の道具にも見えますが……
メモによりますと、大変な秘宝の在り処をしめす道具らしいのです!
オッホ、お宝♪
オッホ、じゃなかったわ……お客さんには悪いけど、あんま期待しすぎ無いほうがいいんじゃない?
この手のガセネタとか偽アイテムなんて、いくらでもあるんだからさ。
ごもっともです。けれど形見の品でもありますし、諦めきれないんです。
どうでしょう、わたくしめの夢に付き合って、秘宝探しをしてもらえませんか。
いいでしょう。適正な報酬さえいただけるのであれば、断る道理もなし。
チーム・ブラックガードが、あなたの依頼を引き受けましょう。
ありがとうございます……!
―ネイザード王墓―
リーグレン設立以前の王朝の遺跡である。かつての威光はすでに届かず、風雨にさらされ崩れるのを待つばかりとなっている。
さて、ペッパー氏の話によれば、この遺跡にサートゥラクラッドと呼ばれる秘宝が封じられているそうだ。
ここって冒険者の初心者用の遺跡よね。今まで何度も発掘されてるじゃない。
今更めぼしい宝なんてないんじゃない? モンスターが住み着いてるけくらいで、新しい発見なんてないと思うけど。
わたしも同感です。ですがペッパー氏から借りた道具は、たしかにここを指し示しているようですね。
ありふれた遺跡の奥から未知の怪物が躍り出る……なんか心躍るじゃねえの!
怪物はいらないわよ。
……ハッ!? なんだお前は、怪物!?
死にたいようね~~~!
違いますククリ、後ろです!
ぎええ! 気色悪い!
背後に迫る異形の存在。素早くターンを決め、距離を取る。
こいつ、いきなり現れなかったか!?
3mはあろうかという巨躯をうねらせ、ゆらゆらと近づいてくる……!
あまり見かけない相手です。十分気をつけて!
ハッ、怖がってて倒せる相手が……いるかよ!
勢いよく駆け出すスネイク。距離を詰め、ナイフを突き刺そうとし――
あぶっ
ッッッヒフッ!!
唸りが発生するほどの首振り……! 重量が乗ったそれは、生半可なガードなどそのまま叩き潰す。すんでのところで回避するスネイク。
こういう時は遠距離――よね!
鋼鉄の如き表皮! 矢は弾かれてしまった!
もーー! 悔しゅうて悔しゅうて……!
ですがおかげで時間が稼げました。ラオ・セイレーン――!
お得意の大規模魔術である! 膨れ上がる魔力、暴れゆくばかりだった力に行き場を与え、まさに飛びださんとするその瞬間、
!! やめろアルマド、避けろ!
怪物の体が光り輝く。浮かび上がる魔法陣。
魔法陣……!?
――――――ッ!?
ぐぐぐあッぐッ
ヒュッ―――ハッ――
強烈な稲妻! リチャード達はなすすべもなく地に伏し転がる……!
まさか術を使うモンスターとは……
怪物は再び鎌首をもたげる。まさに絶体絶命のその時――
あたり一面が仄暗く瞬いたかと思うと、
閃光。
眼前を薙ぎ、怪物の体を貫通し、
しばしの硬直の後に――――ゆっくりと崩れ落ちた。
な に が ?
いい大人4人がかりで倒せないなんて。随分貧弱なチームなんだね。
お前は……
あたしはこの先に用事があるけど、あんたたちも?
フフッ、でもその実力じゃあ帰ったほうがいいんじゃない? くく、じゃあね。
キーー悔しい、何なのよあの小娘……!
俺はわかったぞ。あいつこそが今回の黒幕だな!!
やれやれ……今回も一筋縄では行かなそうです。
――全くだ。
続く