踊れ、唯唯似つかわしく その1

ミルデン街道。

荷台を運ぶ男たち。疲労感の中にも活気を感じさせつつ、町から町へと荷物を届ける彼らには不思議な力強さを感じさせられる。

――そこに。

な……なんだぁぁ!!?

ら、落石、避難を……!

横転する荷台。転がり落ちる荷物。

レイン

ハッハーッ!

レイン

荷物運びご苦労さん。あいにくだけど、そいつはあたしが頂いた!

タイミングを図ったように丘から飛び降りてくる少女。もしや落石は彼女が……!?

あー……あーーー! あーーー!

やめてくれーーーー!! ォォォォォォォーーーー!

非道! 

しかしこれもこのリーグレンの現実である。街道に潜み旅人から金品を奪う輩には事欠かない……!

ちくしょう、ペッパーさんの荷物を運んでるといつもあいつが邪魔する……!

おのれ覚えておれ……!

リチャード

つまりはトレジャーハントをしてくれと?

ペッパー

ええ、ええ。そうなんですよ武人サマ。

スネイク

お宝さがしか。楽しそーだな!

一方のブラックガード事務所! 客を迎え、新たな依頼を受けているようだ。

ペッパー

こほん、改めて。わたくし、ペッパーと申します。

ペッパー

先日、骨董商だった父の遺品を整理しておりましたら、いわく有りげな品とメモを見つけましてね。

アルマド

なんでしょうか。魔術師の道具にも見えますが……

ペッパー

メモによりますと、大変な秘宝の在り処をしめす道具らしいのです!

ククリ

オッホ、お宝♪

ククリ

オッホ、じゃなかったわ……お客さんには悪いけど、あんま期待しすぎ無いほうがいいんじゃない?

ククリ

この手のガセネタとか偽アイテムなんて、いくらでもあるんだからさ。

ペッパー

ごもっともです。けれど形見の品でもありますし、諦めきれないんです。

ペッパー

どうでしょう、わたくしめの夢に付き合って、秘宝探しをしてもらえませんか。

リチャード

いいでしょう。適正な報酬さえいただけるのであれば、断る道理もなし。

リチャード

チーム・ブラックガードが、あなたの依頼を引き受けましょう。

ペッパー

ありがとうございます……!

―ネイザード王墓―

リーグレン設立以前の王朝の遺跡である。かつての威光はすでに届かず、風雨にさらされ崩れるのを待つばかりとなっている。

リチャード

さて、ペッパー氏の話によれば、この遺跡にサートゥラクラッドと呼ばれる秘宝が封じられているそうだ。

ククリ

ここって冒険者の初心者用の遺跡よね。今まで何度も発掘されてるじゃない。

ククリ

今更めぼしい宝なんてないんじゃない? モンスターが住み着いてるけくらいで、新しい発見なんてないと思うけど。

アルマド

わたしも同感です。ですがペッパー氏から借りた道具は、たしかにここを指し示しているようですね。

スネイク

ありふれた遺跡の奥から未知の怪物が躍り出る……なんか心躍るじゃねえの!

ククリ

怪物はいらないわよ。

スネイク

……ハッ!? なんだお前は、怪物!?

ククリ

死にたいようね~~~!

アルマド

違いますククリ、後ろです!

ククリ

ぎええ! 気色悪い!

背後に迫る異形の存在。素早くターンを決め、距離を取る。

リチャード

こいつ、いきなり現れなかったか!?

3mはあろうかという巨躯をうねらせ、ゆらゆらと近づいてくる……!

アルマド

あまり見かけない相手です。十分気をつけて!

スネイク

ハッ、怖がってて倒せる相手が……いるかよ!

勢いよく駆け出すスネイク。距離を詰め、ナイフを突き刺そうとし――

スネイク

あぶっ

スネイク

ッッッヒフッ!!

唸りが発生するほどの首振り……! 重量が乗ったそれは、生半可なガードなどそのまま叩き潰す。すんでのところで回避するスネイク。

ククリ

こういう時は遠距離――よね!

鋼鉄の如き表皮! 矢は弾かれてしまった!

ククリ

もーー! 悔しゅうて悔しゅうて……!

アルマド

ですがおかげで時間が稼げました。ラオ・セイレーン――!

お得意の大規模魔術である! 膨れ上がる魔力、暴れゆくばかりだった力に行き場を与え、まさに飛びださんとするその瞬間、

リチャード

!! やめろアルマド、避けろ!

怪物の体が光り輝く。浮かび上がる魔法陣。

魔法陣……!?

アルマド

――――――ッ!?

リチャード

ぐぐぐあッぐッ

ククリ

ヒュッ―――ハッ――

強烈な稲妻! リチャード達はなすすべもなく地に伏し転がる……!

アルマド

まさか術を使うモンスターとは……

怪物は再び鎌首をもたげる。まさに絶体絶命のその時――

あたり一面が仄暗く瞬いたかと思うと、

閃光。

眼前を薙ぎ、怪物の体を貫通し、

しばしの硬直の後に――――ゆっくりと崩れ落ちた。

リチャード

な に が ?

レイン

いい大人4人がかりで倒せないなんて。随分貧弱なチームなんだね。

リチャード

お前は……

レイン

あたしはこの先に用事があるけど、あんたたちも? 

レイン

フフッ、でもその実力じゃあ帰ったほうがいいんじゃない? くく、じゃあね。

ククリ

キーー悔しい、何なのよあの小娘……!

スネイク

俺はわかったぞ。あいつこそが今回の黒幕だな!!

アルマド

やれやれ……今回も一筋縄では行かなそうです。

リチャード

――全くだ。

続く

32 踊れ、唯唯似つかわしく その1

facebook twitter
pagetop