ランディ

消えろ!!

アデル

いきます!!

ユフィ

当てるっ!!

ジュピター

ちっ!
またか!

ユフィ

ぅぐっ。
う、嘘……
掻き消したの?

 三方向からの刻弾は、無情にも旋風によって掻き消された。

 ユフィ達は旋風で更に傷が増える。追撃を考えていたジュピターも旋風で体勢を崩され逆にダメージを負った。各自水薬で回復をするも、これ以上ダメージを受けると危険すぎる。

アデル

刻弾も、
あんな簡単に……

ユフィ

ランディ、
七階への階段まで走るわ。
今の私達じゃ、敵わないわ。

ハル

逃げるんすか?
目前って言っても
階段までアイツから
逃げ切れるとは
思えないっすよ。

ユフィ

幸い攻撃的な魔物じゃないわ。
危険に違わないけど
このまま弱点どころか
ダメージを与える方法すら
分からないまま
ずるずる戦うよりはいいわ。
それに皆の水薬も
殆ど尽きているはずよ。

ジュピター

オイラ達がアイツを食い止める!
アデル達は走ってくれ。

アデル

分かりました。
さぁ、ロココ――!?

ロココ

ああ!?

ハル

あれは確か!

 ランディの持つハイドライトソードの剣身が、漆黒に染まっていく。



 コフィンとの私闘時に見せた、剣に『魔気を佩かせる』というランディ固有の特技。剣に灰化するほどの負荷を掛けるが、切れ味を絶大に上げる最終手段だ。

ランディ

切り札まで出させやがって……

 柄を両手で握るランディは深く息を吸い込む。正伝剣術にある、一振りに全てを込める全身全霊の構え。

 しかもコフィンの時に使用した剣と違い、いま手に持つ剣は、リアに買って貰った一級品のハイドライトソード。魔気を佩かせた時の切れ味は、誰もが想像出来ぬものだった。

ハル

ランディー!
ぶった切るっす!

ランディ

くたばれ!!

アデル

…………

ハル

や……
やったっすか?

ランディ

今のはよぉ、
俺の全身全霊の一撃……
間違いなくな。

 ランディの右手にあるハイドライトソードが、光に溶ける様にぼやける。

ロココ

あああ……
ランディの剣が。

ジュピター

そ、それに……

 ハイドライトソードが跡形もなく消えるのを見届けながら、ジュピターの言葉にユフィが続ける。

「あの攻撃でも傷一つつけれないの……」

 武器を失くしたランディは、歯を食い縛りながら宙を睨み上げていた。

 ~編章~     206、最後の切り札

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