撤退の指示と、目的を前にして戦えないもどかしさ。それを前に撤退の足が遅れた。目的を背に走る時も、どこか中途半端な気持ちだった。納得からは程遠い気持ちは、明らかに他のメンバー達とのスピードに差を生んでいた。
背後の魔物に構えば、他の魔物に追い付かれることも分かっていた。背後からの攻撃は、致命傷になりそうだが、こちらも走っている分、余程の強撃や足元を攻撃されなければ、小型の魔物なので逃げ切れる可能性がある。それも経験や知識で知るハルだったが、気が付けば立ち止まり反撃していた。
頭で考えたことではなかったが、煮え切らない気持ちの不安定さがそうさせたのだ。
それほどハルはロココの目的を重要視していたのだ。
そしてそれ故、大量の魔物を前にして絶体絶命の窮地にいる。今、二体同時に斬った先に三体。その後ろに四体の魔物が居る。あらゆる角度で迫る魔物達。それに対応する術をハルは持ち合わせていなかった。