――冒険者区、中央通りの一角。
――冒険者区、中央通りの一角。
ほぉわぁ~~~ぁzzz
まだ全然眠いっすよ。
昨日あれだけ遅くまで
飲んでたんだからな。
ユフィの前では
シャンとしとけよ。
又、どやされるからな。
わかっれてるっすよほぉ~zzz
朝の中央通りも昼間と違う雰囲気で混雑しており、様々な人達で賑わっていた。
酒場へ向かうハルとジュピターだが、昨晩遅くまで呑んでいた為、睡眠不足のようだ。特にハルの足元はフラフラで、混雑している往来で人にぶつからず歩いているのは奇跡的と言えるものだった。
あ……
フラフラ歩いてんじゃねーよ。
ハッ!?
ご、ごめんなさいっす!
ジュピターが何かしたっすか?
おめーだよ、俺様に
派手にぶつかってきたのぁよぉ。
ごごごめんなさいっす。
ちょ~っと眠くて
足元どころか頭まで
ふらついてしまったで
ごじゃりますっす。
足と頭だけでなく、言葉までフラフラしているハルを見て、モヒカンの冒険者は眉間に皺を寄せる。
こちとら潜ってきたばっかりで
へとへとなのによぉ~。
ハイド。
放っておけ。
行くぞ。
ったよぉ。
鉄仮面の相棒にハイドと呼ばれたモヒカンの冒険者は、特にハル達に絡んでくることなくそのまま行ってしまった。
胸を撫で下ろしたハルとジュピターは、その二人の背中を眺めながら一息つく。
ホ
焦ったっすぅ~。
一瞬で目が覚めたっすよ。
それにしても滅茶苦茶
怖そうな人だったっすね。
特に見てくれはな。
でも無駄に絡んでくる
雑魚とも違う感じだったな。
確かに。
何にしても
又、問題起こしてユフィに
怒られずに済んで
よかったっすよ。
そうだな。
そっちの方が怖いもんな。
確かにw
二人で軽く笑い合っていると、横道からロココの姿が見えた。いつも泊まっている宿のタコ部屋には居なかったので、ハル達より早く出て何処かへ行っていたのだろう。
おはようございます。
おはっすっすっすぅ~♪
ロココ、
今日も一段と元気そうっすね。
いつも元気なハルさんには
負けますよ。
さっきも元気過ぎて
(寝てたけどw)
いかつい冒険者に
喧嘩売ってたけどな。
え!? えぇ~!?
だ、駄目ですよ、喧嘩は。
まぁ自分くらいになると
息を吸うように
喧嘩してるっすからね。
テキトーなこと
言ってると、また絡まれるぞ。
どうせモロゾフあたりが
言ってた言葉真似てるだけだろ。
やっぱ分かったっすか?
さっすがジュピター。
大して内容がない話で盛り上がる二人にロココが微笑む。三人は肩を並べ酒場への道を歩きつつ談笑する。ハルは人混みの中、周りにも聞こえる大きな声でロココに質問した。
で、ロココは何処に
行ってたんすか?
故郷のゼーベルク宛に
手紙を出す為、
訓練場に行ってたんですよ。
そーいや以前も
持っていってたな。
確か、呪い受けちゃった
友達宛だよな。
そうです。
ロココの友達なら
ほんと会ってみたいっすね。
シーベルトに帰る時に、
一度寄ってくのも
良いかもっすね。
それは楽しそうですね。
ハルさんなら絶対に
バロックも喜びます。
友人の事をバロックと呼んだロココは、笑顔の端にどこか物悲しい表情を浮かべたが、直ぐに笑顔の中にそれを隠した。
自分が原因で、その友人に呪いが掛かってしまったと以前に言っていた。ハルの明るい話にも、その後ろめたさが頭に過ったのだろう。どこか無理をして話している節があった。
それよりも結局、
元のパーティになりましたね。
そーそー、
そうっすよ。
ロココとは又、
同じパーティっす。
ロココ、
改めてよろしくだな。
は、はい!
こちらこそお願いします。
気持ち良く返事をしたロココだったが、どこか先程の友人の話をしていた表情と被って見えた。何かハル達の知り得ない何かを内に隠すような……
心配になったハルは問う。
ロココは何も問題ないと、笑顔を返してきた。自分の気のせいかと首を傾げたハルは、もう一度ロココの顔をじっと見てみたが何も答えは出なかった。