前方にいたハルとフィンクスは、後方に向かった魔物を追い掛けようとしていた。
そして後方で完全に狙い打ちにされたシャインに、距離を取れと言ったのだ。
また、後ろにっ!?
シャイン!
そいつはやばい!
距離を取るんだ!
ああ……
前方にいたハルとフィンクスは、後方に向かった魔物を追い掛けようとしていた。
そして後方で完全に狙い打ちにされたシャインに、距離を取れと言ったのだ。
まさか、
前に出てくるなんてな。
後ろに下がったら
絶対に追い付かれる。
それならいっそ前に出て
皆で固まった方が得策じゃん。
シャインは後退せず、前進することによって魔物の危機から逃れた。しかもすれ違いざまに投げナイフを使い、ダメージを与えている。
そんなに効いてないけど
麻痺ナイフか。
もう元気まんまんで
又、襲ってきそうだな。
でもお陰で態勢は整ったわ。
どうしましょう。
少々のダメージじゃ
ビクともしなさそうです。
刻弾撃ちましょうか。
あのスピードじゃあ
弱らせないと
当たんないじゃん。
そう言ってシャインが、太腿に装着しているホルスターから投げナイフを二本を抜いた。
タラトが突撃して
私達はいつでも手の届く位置で
密集隊形をとり迎撃態勢。
そのシェルナの指示を聞いてか聞かないでか、タラトが魔物に接近する。魔物は麻痺から完全に放たれているようだ。
ウゥゥゥゥゥゥ
オオオオオオーーー!!
タラトが魔物と一進一退の攻防を繰り返す。誰も手出しが出来ない勢いで、爆発的なタラトの攻撃は魔物を壁際までぶっ飛ばした。
やった。
タラトめちゃくちゃ凄いっす。
迷宮の隅で土煙が上がったのを見てハルが歓喜する。
来た!
ハル、足をやるぞ!
わかったっす!
フィンクスが右脚、ハルが左脚に深々と渾身の一撃を繰り出す。そこへ追撃のシャインの投げナイフがそれぞれの脚へ突き刺さる。完全に狙い通りの攻撃に三人の手応えは完璧なものだったが、魔物はロココの前に立つシェルナへ猛然と突き進んでいた。
シェルナ危ない!
……
シェルナは静かだった。
自身の倍以上もある魔物が、傷付きながらも猛烈な勢いで真っ直ぐに向かってくる。脚部にダメージがありながらも勢いそのままに、更に倒れ込む力をその狂暴な拳に乗せているのだ。
一音圏……
羽鏡(ハネカガミ)。
魔物はシェルナが静かに一振りすると、そうなるのが当然というように宙に飛ばされた。後方に縦回転し天井に当たらんばかりの高さまで飛ばされている。
シェルナの相手の力を利用する棒術――十六転圏導というレイマール伝統棒術を、魔物相手の実戦で初めて見たハルは、何か神々しいものを眺めている気分になった。あんな巨人型魔物がまだ宙を舞っている。ハルにとっては追撃を忘れる程の光景だった。
シェルナは左腕を斜め上に跳ね上げた残心(十六転圏導では残身ではなく残心)のままいる。そしてシェルナの視線の先に飛び込んできたのは、宙を舞う魔物の胸部を拳で貫くタラトだった。