――迷宮六階層、某所。
――迷宮六階層、某所。
お試し編成三日目。
編成メンバーは、
前衛
ハル タラト フィンクス
後衛
シャイン シェルナ ロココ
昨日と同じくリーダーシェルナ。言い換えれば、いつものリュウパーティから、リュウとシャセツに代わりハルとロココが入った形だ。
なんだか凄いワクワクするね♪
何気に俺達同期が揃ったのは
初めてだもんな。
はい。
僕もとっても楽しみです。
ロココン、
張り切り過ぎて
突っ走らないでよ。
ハル達九人(誰か覚えてるでしょうかw)が同日に訓練場に入ったように、フィンクス・シャイン・シェルナ・ロココは同日に訓練場入った同期だ。
シャインとフィンクスが教官にイタズラを敢行し、一緒に居た連帯責任で訓練場を出るのが三日遅れ、ハル達と合流したわけだ。
その後、ロココだけが編成で外れ今に至り、そして初めて同期四人が揃う編成になった。お互いの活躍は酒場で耳にするし、自主的に一緒に訓練したりする時もある。だが、冒険者の現場と言える迷宮内で一緒になる事は、四人に例えようのない高揚感を湧きあがらせていた。
クンクンクン
タラトの鼻が前方の闇から何かを嗅ぎ取る。と同時に、ロココが落ち着いた声で、それでいてハッキリと端的に全員に伝える。
前方から4、5体。
更に後方からは
強い単体の魔気を感じます。
聞いちゃあいたけど
そんなに精度よく
把握出来んの!?
すげーよ、ロココ。
さぁっすがロココン。
頼りになるぅ~。
タラトの鼻の方が
一瞬早く利くみたいだけど
詳細教えてくんないからね。
見えて来たっすよ。
駄弁りながらも、各自が戦闘態勢を取って機先を制しようとリーダーの声を待つ。
前方の闇からは、幾つかの細かい羽音に紛れ、カサカサッ、カサカサッと断続的に接近する音が耳に触った。
ビプル
ゴーデス
ミーグス
各個撃破ぁー!
ユフィの繊細な指示と違い、シェルナの勢い重視の指示は怒号にも近いイメージをハルに与えた。
無論、シェルナにも的確な指示が出来ない訳ではない。だが格上相手ではなく、仲間の実力を信じているからこその指示である。
自然にシェルナがそれを出来てしまうのは、理を知り重んじるレイマールの伝統棒術の教えに通ずるところがあるのだろう。
シェルナの声に同じ人間と思えぬ反応で動いたのは、タラトだった。
同じく前方の魔物に走り込んだハルとフィンクスだが、まだ魔物は射程距離外。
タラトはもうミーグス二体、両手にそれぞれ鷲掴みにして握り潰すように宙に掲げた。固そうな甲羅がひしゃげ、前肢はあらぬ方に曲がり、体液が既に飛び散っている。苦悶で蠢いているのか、まだ反撃の余地があるからなのか、ミーグスは抵抗するかのように動く。タラトは両腕を更に天へと掲げ、一瞬溜めるように止まる。
ハルの斬撃とフィンクスの弧を描く剣、そしてタラトが魔物を叩きつけるタイミングが、奇しくも揃った。
タラトが叩きつけたミーグス二体は完全に形を崩し、ハルの斬撃は一刀でムカデ型の脚部を持つゴーデスを両断した。宙を無軌道に飛ぶビプルは、フィンクスの研ぎ澄まされた両眼には止まって見えたと言う。
あっとも言わない間に、四体の魔物が地に転がる。シェルナの勢いある指示を体現したかのようだ。
後ろにいる三人にピースサインを送るフィンクス。が、その背後から真っ直ぐに向かってくる影が走った。
ほい、一丁上がりぃ~♪
シャインの投げナイフが、フィンクスの直ぐ傍まで接近していたもう一体のビプルを貫いていた。
フィンクスは何でもなかったように笑みを浮かべ、シャインもフィンクスが回収して投げたナイフを軽やかにキャッチして、何事もなかったように体液を拭きとった。
ハルとロココは、正直驚いた。シェルナの当然と言わんばかりのウインクや、フィンクスとシャインの振舞いを見ていると、どうやら全て予定通りといった感じだ。
だが驚いてばかりではいられない。まだ強い魔気を持つ魔物が残っているのだ。
最後の一体は、姿の前に地面を揺るがす程の震動を伝えてきた。それはとてもゆっくりでまだ姿が見えない。だがそれは確実にハル達に近付いていた。
姿を現したのは、ハル達の慎重の倍はあろうかという巨人型の魔物だった。
タラトが真っ先に飛び出し、襲い掛かる。
!!
速い!?
それにあの体格なら
圧倒的なパワーもあるはず!
全員でいくよ!
タラトの攻撃を素早い動きで躱した巨人型の魔物は、タラトを無視して前進してきた。
姿を見せる時はまるでスピードがないと思わせるような動きで、いざ戦闘が始まると俊敏に動く。ハル達は正直、この魔物のこの初動に面喰らった。そしてそれは、自分達にも気付かぬ程だが、浮足立った感覚を与えられていたのだ。
フィンクス二人で
止めるっすよ!
よく見ろよ、ハル。
何っ!?
ウソ!?