何の因果か私の手元に見覚えのない黒いカードがある。狐の模様が金色で彫られていた。自分名義で作られているカードは恐らく本物だった。しかし、作った覚えはない。
何の因果か私の手元に見覚えのない黒いカードがある。狐の模様が金色で彫られていた。自分名義で作られているカードは恐らく本物だった。しかし、作った覚えはない。
こんなカードを作ったか?
ポストに入ってあった自分宛ての手紙の中身にカードがあった。
手紙の内容はこのカードはあなたの物です。いくらでも使えるカードです。制限はありませんし利子などもございません。あなたに負担は一切ありません。
カードで支払いが可能な加盟店ならご自由にお使い出来ます。
ただし、あなた以外の人に使わせないで下さい。
このカードの事をあなた以外に伝えないで下さい。
紛失、破損した場合、注意して下さい。
うーん
使ってみるか……?
S氏は疑いながらもカードを使うことにした。
コンビニでおにぎりを手にした。カードが偽物でもこのぐらいなら恥をかくだけだ。
これぐらいにしてみるか
S氏は恐る恐るおにぎりをレジに置いた。S氏は定員にカードを見せて質問をした。
あの……このカード使えますかねぇ?
えーと
…………
使えますね
おにぎりを持ってコンビニを出た。本当にカードが使えて興奮していた。
これ、本物だ!!!!
うわ! どうしよう!!
S氏はその足で服屋に向かった。そこで好きな服や靴を好きなだけ買った。
次の日、新品の服を着て焼き肉を食べに行った。友達を誘い大いに飲み食いをして全部の代金を支払った。
S氏は車を買った。高級マンションに引越した。S氏に変えない物はなかった。欲しい物はカード使い満足するまで買い続けた。
宝くじでも当たったのか
うーん、そんなもんかな
毎回カードで支払っているけど大丈夫なのかよ
ああ、大丈夫だよ
心配するなよ。俺がおごれるからおごるんだよ!!
さあさあ、食べようぜ!!
親友にも欲しい物を買ってやったりしていい気分だった。
数日が経ち何もかも手にいれてた。カードを手放すことはなく大事にしていた。贅沢な生活からは元に戻れない。
カード無しでは生きていけない生活になっていた。
このカードを知られちゃいけないよな
……なに、教えなきゃいいんだ。俺だけが使えればいいんだから
ある日、S氏は親友や後輩と共に飲み会をしていた。もちろん奢るつもりで馬鹿みたいに飲んでいた。
好きなだけ頼んで良いぞ
俺が全部、出してやるよ!!
周りにおだてられて必要以上にお酒が進んだ。楽しい時間はあっという間に過ぎ会計の時にはすっかり酔が回ってまともに立てないでいた。
大丈夫かS氏?
なーに、大丈夫って!!
悪いがこれで払ってくれ
S氏は声をかけた親友にカードを渡し会計をさせた。
何か大切な事を忘れているような気がしたが気分が良いのでその時は全く気にしなかった。
おい、このカード使えないぞ?
――えっ?
店員が使えないって言ってましたよ
そんなはずは――ハッ!
慌ててS氏はカードを受け取って近くのコンビニに向かった。
感が当たってない事を願い適当に物を取って会計をしようとした。
あの……これ使えますか?
お客様
このカードはあなた以外に使わせないで下さいと書いてあったでしょう
な、なんで……それを……
お前は何者だ!!
フフフ、あなたが知ることではありませんよ
さて、今までの代償を払ってもらおう
今までのって
決まっているでしょう
店員の姿がこの世の者とは思えない鳥の化け物に変わった。その姿をはっきりと見たS氏は膝から崩れて倒れた。
その後、カードと共に店員は姿を消した。コンビニには息をしていないS氏が倒れているだけだった。
※この話はフィクションです。実際の人物・団体・事件とは一切関係はありません。