Chapter1-5:庄司霧子、浅羽大

浅羽大は庄司霧子との電話を切ると、銀色の建物を改めて見上げた。

入り口もなければ窓もない。

あえて言うなら銀色の塊……ってトコか

そんな事を呟きながらも、浅羽は周囲を見ていた。

しかし、誰も銀色に触れようとはしない。
何より、見向きすらせず、ただ歩いている。
興味ないのにもほどがある……やはり、奇妙な事が起きている。

都市伝説とするには、あまりにも現実的すぎて、
仮に妖怪の類と言うにもお粗末だ。

あるとするなら、宇宙人の侵略―――

それもお粗末な発想だ

探偵という仕事をしていて、いつからか、
都市伝説の様なものに、出くわす機会も増えた。

奇妙や不可思議な噂も調べてみれば、
どうという事の無い事で合ったりする。

まぁ。

どうという事でも無い事もあったが……それはそれだ。

はぁ。
性分なのかねぇ。
ダメと言われても、言われなくても。
触っちゃうよねぇ。やっぱり。

浅羽は銀色に近づき、そっと手を当てた。

浅羽さん!!!

おっ。ショージ。
遅かったな触っちゃったよ

いやいやいやいや。
言いましたよね

ははは。
それより、やっぱり見た目通りヒンヤリしてるぞ。
それに―――

え?

それは、庄司が瞬きをした一瞬だった。
いや、瞬きをしたのかと思うほどの一瞬だった。



目の前から浅羽は消えていた。

それと同時に、周囲の人の声が聞こえてきた。

「いま。人が消えなかった?」

「なんだ?あの建物?」

「あんなのあったか?」


銀色は……この瞬間初めて、人々に認識された。

……つづく

Chapter1-5:庄司霧子、浅羽大

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