――訓練場内修練所。
――訓練場内修練所。
なんか真剣で怖いって
感じがしたっす。
シャセツを追い掛けてきたハルとジュピターは、シャセツを見失っていた。
遠くからだがハルの直感は、シャセツに鬼気迫るものを感じ取ったのだ。
どうせ場長に
喧嘩売りに行ってんだろ。
自分いまだに
その場長っていう爺ちゃん
見た事ないんすよ。
とてもジジイとは思えない
身体してるぞ。
ありゃぁシャセツとタラトが
束になっても勝てないってのも
納得できるわな。
で、暇があったら
手合わせしてんすかね?
いつもボコボコにされてる
みたいだけどな。
タラトは強い人と
戦いたいだけな気が
するんすけど、
シャセツはなんだか
違う気がするんすよ。
ん?
そうか?
二人共一緒だろ?
う~ん。
何か思うところがあるハルは、難しい声を漏らす。
それはさておき、シャセツはみつからなかった。何か物騒な事に巻き込まれていなければ……、いや、シャセツに関して言えば、巻き込まれるというより物騒な事を起こさないか心配だった。
周りでは、訓練生が真面目に基礎体力のトレーニングに励んでいる。ハルっとジュピターはそれを懐かしそうに眺めていたが、その風景の中に覚えのある顔を見付けた。
これくらいでへばって
どうする。
限界と思ってからが
本番なのだ。
さぁ、あと1セット。
訓練場の教官にしては、実に真面目に働く男がいた。立派な髭が似合う教官で、ハル達は、戦闘力を計る適性チェックを受けた記憶が蘇ってきた。
「さっきももう1セットって言ったじゃないですか」と訓練生が反論する。髭の教官は「最後とは言っておらん」と即座に返答し、訓練を続けさせた。
久し振りっす。
自分の事覚えてるっすか?
む!?
……君は頑丈さダブルSの
ハル=ビエント君だったな。
おおおー!
凄い!
自分の事覚えて
いてくれたんすね。
嬉しいっす♪
元気でやっているようだな。
今日は探索はお休みかな?
そうっす。
一つだけ聞いていいっすか?
ふむ。
『日常訓練における鋼鉄の如き固い決意と無限に思える反復から生まれる緊急時の反射速度の因果関係を深く掘り下げる為の精神姿勢』を学びたいのかね。
殊勝な心構えだが、それについては概要を話すだけでも3時間は掛かってしまう。この訓練が終わった後で良いなら……
いやいやいやいや
そんなこと聞いてないって。
ハッ!?
スピーぷ~zzz
教官の一言(←w)を
聞いただけで、
ハルが眠っちまった。
おい起きろってハル。
ハヘホ。
不思議な眠気が
猛烈に襲ってきたっすよ。
なんだね。
これ以上は訓練の邪魔になるぞ。
あいや、ちょっと前に
一緒に適性チェックを受けた
シャセツを見なかったかなと。
シャセツ……
あのシャセツ=シュバード君か。
髭の教官はハルとシャセツが受けた適性チェックを思い出しているのだろうか。少しの間を置き、問いに答えた。
彼がここに来ているのかね?
私は彼を見ていないよ。
そか、それならいいや。
待ちたまえ。
何すか?
自分達は長い話は苦手で……
君は刀を使っていたな。
そうっすけど?
カジノの前に小さな路地がある。
その路地をまっすぐに進んだ先に
とても小さな鍛冶屋があるのだ。
そうなんすね。
そんな所知らなかったっす。
鍛冶屋は全部
回ったと思ったけど、
じゃあそこにも親父さんの
情報聞きに行くか。
ん!?
でもどうして自分が
鍛冶屋回ってるの
知ってるんすか?
私は……いや気にするな。
兎も角、行ってみるといい。
髭の教官は何か言うのを躊躇い言葉を濁した。
ハルはもしや父の情報を知っているのかと聞いたが、それについてはきっぱりと知らないと返答があった。そして髭の教官は仕事があると言い残し、訓練生のところへ行ってしまった。
含みのある教官の間は、二人を不思議に思わせた。だが彼の言葉を引き出す術はなかった。
そしてこの後、シャセツを見付ける事が出来なかった。髭の教官が言っていた鍛冶屋に何が待ち受けているのか。ただ刀を使うハルの為に、隠れた名店を勧めただけなのか。それとも何か違う意図があるのか。
二人はその答えを知る為、鍛冶屋に向かうしかなかった。